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#141 手軽に作れる甘酒

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「酒ってどんな味なんだろうなー」

「あ、確かに気になる」

「大人の方々は美味しそうに飲んでますよね」

「おや、どうしましたか、3人とも」


 東の国、ナグモから帰ってきたシュージは、いつも通りギルドの掃除に勤しんでいたのだが、食堂で何やら話している見習い組の3人を見つけた。


「あ、シュージ。 なぁ、酒って美味いのか?」

「お酒ですか? まぁ、モノや好みによりますけど、美味しいですよ」

「オイラ達、まだ飲めないからよく分かんないだよね」

「あー、なるほど」


 この世界では18歳で成人とされていて、成人まで飲酒はしない方がいいとされている。

 まぁ、地球のように厳格に取り締まっている訳ではないので、ヤンチャな者やドワーフなんかは成人前でも普通に飲んだりしてるらしい。

 が、リック達に関しては、ギルドマスターのジルバートから「体を悪くするからやめておけ」とやんわり禁止されているので、リック達は素直にそれに従っている。

 が、気になるものは気になるらしい。


「でしたら、ちょっとしたお酒のようなものを飲んでみますか?」

「えっ、そんなのあるのか?」

「はい。 極々微量なので、飲み過ぎなければ大丈夫なお酒があるんですよ。 丁度ナグモで材料を手に入れましたから」


 今回のナグモ訪問では、この辺りでは手に入らないような食材を結構入手したので、シュージは早速それを使うことにし、厨房に向かうと、見習い組達も気になるようで一緒に付いてきた。


「今回使うのはこちらです」

「何ですか、この白いもの?」

「こちらは酒粕といって、お酒を作る時に出るものですね」


 ナグモでは清酒系のお酒の製造が盛んということもあり、お酒を取り扱っている店を何店舗か回ってみたら、この酒粕を売っている店があったのだ。


「こちらを千切って、お湯にかけて溶かしていきます」

「簡単だね?」

「それでも結構美味しいんですよ」


 酒粕を必要分千切り、強火にして沸騰させたお湯の中に入れたら、火は弱火にして酒粕が全体に馴染むようにかき混ぜていく。


「というか、あったかいお酒なのか?」

「そうですよ。 ……そういえば、こちらではあんまりお酒を温めているのを見かけませんね」


 前世では熱燗だったり、フグなどのひれ酒など、温めて美味しいお酒も結構あった。

 ちなみに、一応この世界でもフグの捌き方は確立されており、シュージも地球にいた頃はフグの調理免許を持っていたので、食べようと思えばこちらでも食べられる。

 が、フグは危険なものというイメージが強くて、こちらではあまり人気がないそうだ。

 確かに、フグはダメな箇所を食べてしまうと1発で死に至ってしまうぐらい毒性の強い魚なので、シュージもこちらでは調理する気はあまりない。

 いくら美味しいとは言え、危ないという認識のものを勧めるのも申し訳ないので。


「お、白く濁ってきたよ」


 それからある程度酒粕が溶けてきたら強火に戻し、飲みやすい甘さになるように砂糖を入れて全体に馴染ませたら、火から降ろす。

 あとはこれをコップに注いでいけば、酒粕で作る甘酒の完成だ。


「出来ましたよ。 これは甘酒という飲み物です。 ほとんどアルコール成分はありませんが、何となくお酒っぽさは感じれると思います」

「おお…… いただきますっ」


 厳密には酒では無いとはいえ、それっぽいものを飲むのすら見習い組の3人は初めてなので、ちょっとドキドキしながら甘酒を飲んでいった。


「おー…… なんか、鼻からスーッて抜けてく感じがするかも?」

「それがお酒っぽさですね。 ちゃんとしたお酒はそれが更に強くて、味や風味もお酒だなって感じがします」

「オイラ、結構好きかも」
 
「お、カインは将来、お酒呑みになるかもですね」

「私はこの甘酒自体が好みです。 体が何だかポカポカします」

「あれ、何してるんですか、皆さん」


 甘酒の感想を皆んなで言い合っていると、グレースがひょっこり食堂に顔を出した。
 

「おや、グレースさん。 今はリック達がお酒を知ってみたいと言っていたので、お酒っぽさが味わえる飲み物を作ってました」

「そうなんですね? えっと、これですか?」

「グレースさんも良ければどうぞ」

「ありがとうございます」


 折角なのでグレースにも甘酒を飲んでみてもらった。


「あら、美味しいですね。 確かに、ほんのりとお酒っぽさを感じます」

「子供でも飲めますから、僕の故郷ではお祭りとかで出されたりもしてましたね。 もちろん、未成年やお酒に弱い方は飲み過ぎてはいけませんけど」

「なんかちょっと大人になった気分だ!」

「はは、いいですね。 ちなみに、甘酒は凄く体に良くて、栄養はもちろん、疲労回復効果、あと美肌効果とかもあったり……」

「シュージさん、もう一杯いいですか?」

「え? あ、はい。 まだありますのでいいですよ」

「あの、シュージ様、私もいいですか……?」

「そうですね、もう一杯くらいなら大丈夫だと思いますよ」


 どうやら、美肌効果という言葉が響いたようで、グレースとメイは甘酒をお代わりしていた。

 シュージからすると二人とも必要ないぐらい綺麗だとは思うが、やはり女性の美を求める心には際限が無いようで、出来ることは試してみたくなるようだ。

 その後、グレースやメイを始め、話を聞いた女性陣から甘酒を作って欲しいと定期的にせがまれるようになったのはご愛嬌だろう。
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