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#124 魔法について詳しく聞く

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「では、魔法の講義を始めますわ」


 蒼天の風には色んな用途の部屋があり、その中の会議室兼勉強部屋になっている部屋で、アンネリーゼによる魔法の講義が行われていた。

 生徒は魔法使いであるメイとシュミットと、まだ実戦には組み込めていないが、火魔法の適性があるというリック、そして掃除終わりで暇だったのと、魔法に興味があるシュージも席に座っていた。


「リックとシュージは魔法についてあまり知らないようですから、簡単に基礎から話しますわ。 まず、魔法というのは、大気中に存在する魔素が私達が呼吸をする事で体内に蓄積され、その魔素を魔力に変換し、詠唱とイメージを正確に行うことで発現するの」

「ふむ、詠唱というのはどんなものなんですか?」

「詠唱は魔法言語と呼ばれる言語で、例えば、『○$♪€』これが『炎よ』という意味になっているの」

「全く違う言語なんですね」

「ただ、炎よぐらいの簡単な単語なら意味は分かってるけど、もっと複雑な単語や文になってくると詳しい意味が解読されていなかったりするわ。 だから、難しい魔法になるにつれて魔法言語の意味自体は分からないし、詠唱や消費魔力がどんどん増えていくの」

「それが難しいんだよなー…… 長ったらしい意味不明な詠唱覚えらんねぇよー」

「そこはもう頑張ってとしか言えないわ」


 シュージ的には魔法使いというと、ぽんぽん魔法を使ってるみたいなイメージだったが、実際には色んな苦労があるみたいだ。


「そして、魔法使いと一括りにしても、魔素を魔力に変換する魔力操作の技術や、そもそもの体に蓄えられる魔力の量によって戦い方は変わるのよ」

「アンネリーゼはどのくらいなんじゃ?」

「私の保有魔力はこの世界の全ての魔法使いの中でもトップレベルと言えるわ」

「流石ですねぇ」

「それを100とするなら、メイが70、シュミットが60、リックが20といったところかしら」

「全然無いな俺……」

「でも、これは努力次第である程度は伸ばせるわ。 際限なくとは言えないけど、リックなら多分、45くらいまでなら伸ばせるかしら?」

「魔法も努力次第で伸びるんですねぇ」

「人によって魔素への適応率というか、魔素を扱う才能は結構差があるから、生まれ持った才能分の適応率を、努力次第で倍くらいにはできるわ。 それ以上は基本無理だけど」

「なるほどなー」

「アンネリーゼ様は魔法を使う際に何か気をつけてることとかってありますか?」

「そうね…… 私の場合は詠唱をしながら、なるべく周りを見るようにはしてるかしら」

「なんのためにじゃ?」

「その状況に応じた魔法を出せるようにね。 あんまりやってる人はいないけど、転換詠唱っていうテクニックがあるのよ」

「なんだそれ?」

「例えば、ファイアボールの魔法を唱えてたけど、ファイアジャベリンの方を撃ちたいってなった時に、ファイアボールの詠唱途中でファイアジャベリンの詠唱に切り替えるの」

「とっても難しそうですね?」

「そうね。 その一瞬一瞬で適切な魔法と詠唱を選択して詠唱するのはとても難しい…… けど、やるだけならメイ達でもできるから、まずは戦況を瞬時に把握する技術を身につけるのがいいわ。 魔法使いは後方で戦況を広く見れるから、これができるとできないとじゃ貢献度は大きく変わるわね」

「分かりましたっ」


 その後もアンネリーゼの講義は続き、異世界生まれのシュージからしたら非常に聞いていて飽きない話だった。


「うーー、新しいの覚えたら前のが抜けるー……」

「リックは沢山の種類を詰め込むより、自分が使うものをいくつか完璧にした方が性分的にもいいかもしれないわね。 基本は前衛なのだし」

「確かに! ギルマスも魔法使うけど、基本は剣に纏わせるぐらいって言ってたしなー」

「それじゃあ、一回休憩しましょ。 座学は疲れるから」

「では、折角ですのでこちらをどうぞ」


 シュージはそう言うと、収納袋からお手製のフィナンシェを取り出した。

 すると、アンネリーゼ、メイ、シュミットが目の色を変えてお皿に群がってきた。


「んんっ! これ、美味しいのじゃ!」

「すごいしっとりしてるわね……!」

「自然な甘さで美味しいです!」


 何気に出すのが初めてだったフィナンシェは焼き加減が絶妙で、しっとりとした食感だが決してくどくなく、口の中でゆっくり溶けていくような甘さをしていた。


「お菓子が出ると、女性陣は目の色変わるよなー」

「皆さん甘いもの好きですからねぇ」


 美味しそうにパクパクフィナンシェを食べる女性陣の横では、リックも一つもぐもぐとフィナンシェを食べていたが、一つで満足したようだ。

 もちろんシュージの作るお菓子はリックも美味しいと思っているが、甘めのものよりしょっぱい系のものの方が好みだ。

 リックに限らず男性陣は大半がそうなので、今度煎餅でも作ろうかなと内心シュージは思っていた。

 ナコルから煎餅作りに必要な粉類は仕入れさせてもらってるので。

 そんなおやつ休憩も挟みつつ、立派な魔法使いになるための勉強はその後も続くので合った。
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