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#53 誕生日パーティーの準備
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「シュージさん、ようこそ来てくださいました」
「ミリアさん、ご無沙汰してます」
本日、シュージはセネルブルグ辺境伯家を訪れていた。
というのも、以前に依頼されたシュミットの誕生日パーティーが明後日に迫っているのだ。
今日はその時に出す料理の最終確認や、当日の段取りの打ち合わせを行うためにここへ来たのである。
「本日は私がお付き添いしますね」
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ。 何より祝われるシュミットにも喜んでもらいたいので、シュージさんが作る料理や当日の段取りはあまり伝えないようにしているんですよ」
「はは、なるほど」
「では、まずは我が家のシェフ達の元へ行きましょう」
ミリアの案内に従い、まずはこの家の食堂に案内された。
そこには10人くらいの給仕服を着た人達がいて、その中でも比較的年上と思われる男性が一歩前に出てきた。
「お初にお目にかかります、シュージ様。 私はこの家のシェフ長を務めるムグラと申します」
ムグラがそう言ってスッと頭を下げると、後ろにいたシェフ達も頭を下げてきた。
「ご丁寧にありがとうございます。 改めて、シュージと申します。 よろしくお願いしますね」
それにシュージも挨拶を返し、頭を下げた。
「あ、それと、僕に様などは付けないでいいですよ。 普通の市民ですし、言葉もいつも通りで大丈夫です」
「では、シュージ殿と呼ばせてもらおう」
「はい、それで大丈夫です。 そうしたら、早速料理についての打ち合わせをしましょうか」
今回作るメニューは既に伝えておいたので、ある程度は練習をしてくれているそうだ。
「それにしても、シュージ殿の渡してくれたレシピはどれも素晴らしいな。 正直、外部の者にメニューを任せるというのは心配もあったのだが、全くその必要はなかったよ」
「そう言ってもらえて良かったです」
「個人的にもご教授願いたいくらいだ」
「いえいえ、僕は多少この辺りでは知られてない料理を知ってるだけですから、料理の腕自体は皆さんとそこまで変わらないですよ」
「謙虚だな。 ……よし、それではお前達、一通りメニューにあったものを作っていくぞ。 シュージ殿、何か作っているところや味に問題があったら遠慮なく言ってくれ」
「分かりました、僕もお手伝いしますね」
それからムグラと他のシェフ達と一緒に、当日作る料理を一通り作っていった。
「あ、それはもう少しこんな感じで切ると綺麗に見えますよ」
「あっ、本当だ…… ありがとうございます!」
「うーん、この食器だとちょっと運ぶのが大変そうなので、こちらにしましょうか」
「はい!」
それからシュージは、シェフ達に色々と教えたり相談をしながら、当日の料理を作っていった。
更に、まだ教えていなかったメニューもあったので、それも実践を踏まえて教えてもいく。
そうしていると、最初はシュージの事を侮っていたり心配していた者たちも、その見事な料理人としての技術と知識に感嘆し、素直に教えを乞うようになっていた。
「これで一通り作れましたね」
「うむ、作り方の手順は分かったから、あとは当日、量を作るのに集中すれば良さそうだ」
今回作った分はここにいる者たちで食べ切れる分だが、パーティーには100人ほどが来席するそうなので、この数倍は作らないといけないだろう。
ただ、今回の料理で作るのが大変なものは、一部を除いて無いので、なんとかなるだろうと思っている。
その作るのが大変なものも、主にシュージが作るので問題ない。
という事で作った料理は、その場にいたシェフたちとミリアに食べてもらった。
「まぁ、美味しいですわ! これならシュミットもきっと喜びますし、他のお客様にもきっと満足してもらえます!」
「ふむ、練習段階でも少し食べていたが、シュージ殿に教えてもらって一段と見た目も味も良くなったな」
「皆さんもとても良い腕ですよ。 メニューを教えただけでここまで形にできていたのは、普段から腕を磨いてる証拠です」
シュージがそう褒めると、ムグラを始め、シェフ達はとても嬉しそうな表情を浮かべていた。
だからこそ、シュージは少し勿体無さを感じていた。
彼らの腕はシュージとそこまで大差無いはずなのに、この世界の食文化が発達していないせいで、その腕を持て余しているのだ。
ただ、今回のパーティーをきっかけに、貴族や王族にこの料理達が満足してもらえたら、今までレシピ登録をして少しずつ広めていた食文化も、加速度的に広がっていくのでは無いかと思っている。
それほど、この世界における貴族の影響力というのは凄まじいものなのだ。
「あ、そうだ、シュージ殿。 以前から頼まれていたこれも言われた通りに作ってみたのだが……」
「おお、これは…… うん、いいですね! かなり形になっています!」
「私達も試食したが、これはすごい物だと一口で分かった。 きっと喜ばれるだろう」
「そうですね。 これを使った料理を今回の目玉として提供しようと思っています」
と、以前にここで見つけた食材の用意もつつが無く行われており、後は当日のパーティーに向けて、最終確認に勤しむシュージだった。
「ミリアさん、ご無沙汰してます」
本日、シュージはセネルブルグ辺境伯家を訪れていた。
というのも、以前に依頼されたシュミットの誕生日パーティーが明後日に迫っているのだ。
今日はその時に出す料理の最終確認や、当日の段取りの打ち合わせを行うためにここへ来たのである。
「本日は私がお付き添いしますね」
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ。 何より祝われるシュミットにも喜んでもらいたいので、シュージさんが作る料理や当日の段取りはあまり伝えないようにしているんですよ」
「はは、なるほど」
「では、まずは我が家のシェフ達の元へ行きましょう」
ミリアの案内に従い、まずはこの家の食堂に案内された。
そこには10人くらいの給仕服を着た人達がいて、その中でも比較的年上と思われる男性が一歩前に出てきた。
「お初にお目にかかります、シュージ様。 私はこの家のシェフ長を務めるムグラと申します」
ムグラがそう言ってスッと頭を下げると、後ろにいたシェフ達も頭を下げてきた。
「ご丁寧にありがとうございます。 改めて、シュージと申します。 よろしくお願いしますね」
それにシュージも挨拶を返し、頭を下げた。
「あ、それと、僕に様などは付けないでいいですよ。 普通の市民ですし、言葉もいつも通りで大丈夫です」
「では、シュージ殿と呼ばせてもらおう」
「はい、それで大丈夫です。 そうしたら、早速料理についての打ち合わせをしましょうか」
今回作るメニューは既に伝えておいたので、ある程度は練習をしてくれているそうだ。
「それにしても、シュージ殿の渡してくれたレシピはどれも素晴らしいな。 正直、外部の者にメニューを任せるというのは心配もあったのだが、全くその必要はなかったよ」
「そう言ってもらえて良かったです」
「個人的にもご教授願いたいくらいだ」
「いえいえ、僕は多少この辺りでは知られてない料理を知ってるだけですから、料理の腕自体は皆さんとそこまで変わらないですよ」
「謙虚だな。 ……よし、それではお前達、一通りメニューにあったものを作っていくぞ。 シュージ殿、何か作っているところや味に問題があったら遠慮なく言ってくれ」
「分かりました、僕もお手伝いしますね」
それからムグラと他のシェフ達と一緒に、当日作る料理を一通り作っていった。
「あ、それはもう少しこんな感じで切ると綺麗に見えますよ」
「あっ、本当だ…… ありがとうございます!」
「うーん、この食器だとちょっと運ぶのが大変そうなので、こちらにしましょうか」
「はい!」
それからシュージは、シェフ達に色々と教えたり相談をしながら、当日の料理を作っていった。
更に、まだ教えていなかったメニューもあったので、それも実践を踏まえて教えてもいく。
そうしていると、最初はシュージの事を侮っていたり心配していた者たちも、その見事な料理人としての技術と知識に感嘆し、素直に教えを乞うようになっていた。
「これで一通り作れましたね」
「うむ、作り方の手順は分かったから、あとは当日、量を作るのに集中すれば良さそうだ」
今回作った分はここにいる者たちで食べ切れる分だが、パーティーには100人ほどが来席するそうなので、この数倍は作らないといけないだろう。
ただ、今回の料理で作るのが大変なものは、一部を除いて無いので、なんとかなるだろうと思っている。
その作るのが大変なものも、主にシュージが作るので問題ない。
という事で作った料理は、その場にいたシェフたちとミリアに食べてもらった。
「まぁ、美味しいですわ! これならシュミットもきっと喜びますし、他のお客様にもきっと満足してもらえます!」
「ふむ、練習段階でも少し食べていたが、シュージ殿に教えてもらって一段と見た目も味も良くなったな」
「皆さんもとても良い腕ですよ。 メニューを教えただけでここまで形にできていたのは、普段から腕を磨いてる証拠です」
シュージがそう褒めると、ムグラを始め、シェフ達はとても嬉しそうな表情を浮かべていた。
だからこそ、シュージは少し勿体無さを感じていた。
彼らの腕はシュージとそこまで大差無いはずなのに、この世界の食文化が発達していないせいで、その腕を持て余しているのだ。
ただ、今回のパーティーをきっかけに、貴族や王族にこの料理達が満足してもらえたら、今までレシピ登録をして少しずつ広めていた食文化も、加速度的に広がっていくのでは無いかと思っている。
それほど、この世界における貴族の影響力というのは凄まじいものなのだ。
「あ、そうだ、シュージ殿。 以前から頼まれていたこれも言われた通りに作ってみたのだが……」
「おお、これは…… うん、いいですね! かなり形になっています!」
「私達も試食したが、これはすごい物だと一口で分かった。 きっと喜ばれるだろう」
「そうですね。 これを使った料理を今回の目玉として提供しようと思っています」
と、以前にここで見つけた食材の用意もつつが無く行われており、後は当日のパーティーに向けて、最終確認に勤しむシュージだった。
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