上 下
13 / 207

#13 豚しゃぶサラダ

しおりを挟む
 キッチンに着くと、丁度見習い組の3人も今日は揃ってキッチンへとやって来た。


「さて、今日のメインは豚しゃぶサラダにしましょうか」

「豚しゃぶサラダ? なんだそれ?」

「今日は少し夜も暑いですから、さっぱりと食べれるお肉料理ですよ」


 今の時期、この辺りの気温はだいたい昼間で30℃いかないくらい、夜は20℃くらいに落ち着くのだが、今日は少し夜まで暑さが残っていた。

 なので、折角ポン酢も作った事だし、豚しゃぶサラダにすれば美味しく肉も野菜も取れるだろう。


「では、今日はメイがお肉を調理しましょうか。 鍋に少しお酒と塩を入れたお湯を沸かして、沸騰直前くらいになったら薄切りオーク肉を鍋に入れて茹でてください。 割とすぐに色が白っぽくなるので、そうなったらもう上げちゃって大丈夫です」

「分かりましたっ」

「リックは味噌汁の作り方を教えますね。 カインはこちらのカボチャを大きめにカットして、種とワタも取っちゃってください。 硬い皮の部分は少し削いでくれると助かります」

「おう!」

「はーい」


 シュージの指示に従い、見習い組はテキパキと動き出した。

 今日は豚しゃぶサラダに味噌汁にライス、あとカボチャの煮物を作ろうと思っている。

 どれも割と簡単に作れてしっかり美味しいので、勉強にもなるし、その後の食事でも喜んでもらえるだろう。


「シュージ様、オーク肉が茹で上がりました」

「いいですね。 ではそれを氷水にさらしてください」

「えっ、お水にですか?」

「これはそういう料理なんですよ」

「わ、分かりました」


 こちらでは火を通した肉をわざわざ冷ますという発想が無いのか、メイはちょっといいのかな? と思いつつ、素直にシュージに言われた通り、オーク肉を水で晒し、その間にまだ残っているオーク肉を茹でていく。


「シュージさん、カボチャ切れたよ」

「お、ちゃんと硬い皮も綺麗に取れてます。 カインは手先が器用ですね」

「へへ、オイラは斥候だからな。 割となんでも出来ないといけないんだ」

「では、カボチャを鍋に入れて、水と調味料を入れて煮込んでいきます」


 そう言ってシュージは、カインに調味料はこれぐらいと口頭で説明していく。

 割と目分量だが、もう何年も料理人をやってきたおかげか、この辺の勘はもうあまり外さなくなっている。

 ちなみに、今回入れる調味料は、醤油に砂糖に塩、あと先日作った和風出汁を氷を作る容器で沢山固めてあるので、それをいくつか割ってポイポイっと放り込んでいく。

 そして、今日商業ギルドに行った時に商会にも少し顔を出したのだが、その時に手に入れた本みりんも入れた。

 本来は赤ワインや白ワインを買おうと思って行ったのだが、お酒コーナーになんと本みりんが普通に置かれていたのだ。

 どうやら、こちらでは一風変わった甘めのお酒のような感じで扱われているらしい。

 てっきりこちらには無いのかと思っていたので、嬉しい誤算だった。


「後は様子を見つつ、竹串がすっと入るくらいまで煮込んでいきましょう」

「分かったよ」


 もうこの辺りでほぼほぼ作業は済んだので、後は様子を見つつ、完成したらそれらを一人一人のお皿に盛り付けていく。

 一応、最初の一皿は全員同じ量で、もっと食べたい人用に大皿にお代わり分をどさっと盛り付けておく。

 昨日一昨日とごはんを作ってきているが、やはり皆、体が資本の冒険者が多いということもあって、とても良く食べる。

 なので、お代わりも相当用意したのだが、きっとこれらもほとんど食べ尽くされるだろう。
 

「いや~、腹減ったわ~。 お? なんかええ匂いするな~」

「……美味そうな匂い」

「あら、皆さん早いですね?」


 と、料理も完成したところで、丁度カグラ達もやってきた。

 その他のメンバーは、食事を楽しみにしていたのかもう揃い踏みだ。


「今日のご飯は豚しゃぶサラダです。 基本はポン酢をかけて食べるんですけど、がっつりライスを食べたかったりしたら焼肉のタレでも大丈夫ですよ」


 シュージの説明に皆んな素直に従い、各々好きな調味料をかけていく。


「……冷たい肉。 ……けど美味い」

「本当ですね? 今日は暑くてあんまり食欲無かったんですけど、これならしっかり食べれそうです」

「このカボチャも美味いやん~。 甘くて好みやわ~」


 蒼天の風の食堂は、いくつかある大きな丸テーブルに4~5人くらいが座る形になっていて、今日のシュージのテーブルには、グレース、カグラ、ボリー、そしてイザベラの5人が座っていた。


「シュージの作る料理は味の深みが凄いというか、今まで感じたことのない美味しさを感じるねぇ?」

「調味料を結構な種類使ってるからですかね?」

「そうかもしれないね。 こんだけ美味しいものが食べれると、日々の活力になるよ」

「……元気、なる」

「せやな~。 これから毎日こんな飯が食えるなら、頑張れるわ~」

「シュージさんは他にも色んなものが作れるんですか?」

「そうですね。 ここ数日作ったものは、割と和食…… ああ、僕の故郷でよく作られていた料理のジャンルなんですけど、他にも色々とありますから、明日はちょっと違う料理にも挑戦しようかなと思っています」

「おお~、楽しみやな~」


 ゆるゆると大人達で会話をしつつ、美味しい食事を楽しむシュージだった。
 
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

悪妃の愛娘

りーさん
恋愛
 私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。  その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。  そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!  いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!  こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。  あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?

中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。 殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。 入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。 そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが…… ※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です ※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)

処理中です...