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第四章 帝都動乱
#83 人魔獣
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「なんだ、こいつは……?」
ゲラルトが呟いた内容はここにいる全員の気持ちを表していた。
それほどまでに目の前にいる怪物は禍々しく、異様な雰囲気を放っていた。
「恐らくこいつはあのアカードってやつだろう? どういう手段を使えば人がこんな怪物になるんだい?」
「そんなものは聞いたこともない。 もしあったとしても確実に禁術指定される代物だろう」
「《カッカッカ…… これは中々よい出来ではないか。 人魔獣(じんまじゅう)とでも名付けるか。 しかし、自我を保てぬのはちと残念だな》」
「……どういうこと?」
「《カッカッ…… 残念ながらお主らにこれが何なのか語る事はないのぅ。 まずそんな事より己の身を守るべきだと思うがな》」
「ギュルァァァァァァアアアアア!!」
アカード…… もとい人魔獣の咆哮が玉座の間を揺るがし、その雰囲気をより禍々しいものに変化させていく。
「倒すしかないみたいですね」
「そうさね。 ショーマ、アンタまだ戦えるのかい? 魔力は?」
「まだ大丈夫です。 それに、この状況で休んでなんかいられませんよ」
「そうかい」
「皆構えろ!! 来るぞ!」
ゲラルトさんの警告の直後、人魔獣の口が開いたかと思うと、そこに闇色の魔力が収束し始めた。
「『アースウォール』!」
「『アイスウォール』!」
「『シールド』!」
それを見たゲラルト、アリシャ、ショーマの3人は、それぞれ魔法で強固な壁を作り出し、人魔獣の攻撃に備える。
「ガァァァァァァァァァア!!!」
ドゥッいう音と共に人魔獣の口から放たれた闇色の魔力は、3人の作り出した障壁と真正面からぶつかり合った。
ドガガガガガッッッ!!
「っ! 全員、横に飛んでください!!」
ガガガガッッッ…… バキィィィン!
大きな破壊音と共に、ショーマ達が作った三重の壁は数秒の拮抗を見せたものの、あっさりと破られてしまった。
メリエ以外の者たちはしっかりとその数秒の内に射線から外れ、唯一の戦闘員ではないメリエはゲラルトが抱き抱えて運んだ事でなんとか脱出に成功した。
そして、放たれた魔法は、バゴォンと音を立てて城壁を軽々と破壊すると、そのまま空の彼方へと飛んでいき、やがて見えなくなっていった。
「なんて威力なの……」
「……規格外」
規格外の魔法を放った元凶である人魔獣は、その顔に醜悪な笑みのようなものを浮かべ、こちらを見下ろしていた。
「ショーマ、ノアル。 アンタたちは私と一緒にアイツに接近して戦うよ。 アイツにさっきの砲撃を使うタメを作らせないようにね」
「了解です」
「……ん」
「それなら私のゴーレムも使うといい」
そう言ってゲラルトは一言二言の詠唱を挟み、召喚魔法を発動させた。
すると、地面から巨大化したアカードと同じくらいの大きさを誇る岩のゴーレムが現れた。
「これは…… すごいですね」
「ある程度はあの化物とも張り合えるはずだ。 強度もそれなりにあるから、巻き添えなどもそこまで気にしなくていい」
「よし、それじゃあゴーレムと私は正面から、ショーマとノアルはそれぞれ側面からだ。 ゲラルトとエルフの嬢ちゃんは戦えない者達を守りながら私達のフォローだ。 準備はいいかい?」
全員がユレーナの指揮に頷き、戦闘態勢をとる。
「グオオオオオオオオ!!!」
人魔獣も大きな咆哮を上げ、臨戦態勢をとった。
「いけ! ゴーレムよ!」
まずはゴーレムが先陣をきって人魔獣に接近すると、その巨大な腕を振り回して攻撃を仕掛けた。
ガァン! と鈍い音を立てて人魔獣はその攻撃を片腕で受け止める。
「ハァッ!」
動きが止まった所へユレーナが突っ込み、その受け止めている腕を狙って斬りかかっていく。
しかし、人魔獣は受け止めていたゴーレムの腕を角度を変える事によっていなし、その体躯に見合わぬスピードでその場所を飛び退くことでユレーナの攻撃をかわした。
「ノアル!」
「……ん!」
そこへ今度は双剣を持ったノアルと、アイテムボックスから取り出した大剣を持ったショーマが別方向から攻撃をしかけようと接近していく。
「……! グラァァァァーー!!!」
「うわっ!」
「……んぅっ!」
だがその攻撃も、人魔獣の咆哮と共に体から放たれた闇色の魔力による衝撃波によって近づくこともできずに阻まれてしまう。
「大丈夫かい? 二人とも」
「はい、ケガはないです」
「……ダメージはないけど、近寄れない」
「あの衝撃波が厄介だねぇ…… アタシら3人じゃ手数が足りないかもしれん」
その後も何回かゲラルトやアリシャも後方から加わって、手段を変えながら人魔獣に攻撃を仕掛けたものの、致命傷を与えるには至らず、ショーマたちが少しずつ消耗していくような状況に陥ってしまっていた。
アカードの体にもそこそこの量の傷が刻まれているが、痛みを感じないのか依然醜悪な笑みを見せていた。
そんな状況が続いていた中、ゲラルトのゴーレムが人魔獣を押さえ込んでいる内に、再びショーマたち前衛組の3人が人魔獣から少し距離を取ると、そこへ小さな人影が3人へと近づいていった。
「あ、あのっ!」
「え? あっ、君は…」
そこに立っていたのは、先ほどまでショーマと戦っていた少女だった。
「ぼ、僕にも手伝わせてくださいっ」
「君にも……?」
「ほう? なかなかできそうな奴じゃないかい? ショーマ、こいつは何者だい?」
「えっと、その子はアカードの奴隷だった子です」
「その割には首輪とか着けてないみたいだが?」
「あぁ、首輪は僕が外しました」
「……アンタとことん規格外だねぇ。 ああいった代物は壊したりしようとすると何かしら悪影響を及ぼすはずなんだけど」
「推測ですが、僕のスキルで形を変えて外したものなので、大丈夫だったんじゃないですかね?」
「なるほどねぇ。 それでお前さん、戦えるのかい?」
「……戦えます。 いや、戦わなきゃダメなんです。 僕もあいつに加担した者の1人ですから……」
「それは君の意思では……」
「それでもっ、僕がした事は許されることじゃないっ……」
少女はそう言うと、あどけない顔立ちに似合わない悲壮な決意を感じさせる目でショーマ達を見上げていた。
「いいねぇ、その目。 それは戦う者の目だよ。 よし、それじゃあ、アンタも手伝いな」
「あ、ありがとうございます!」
「ただし、1人で戦おうとするんじゃ無いよ。 アタシらもいる事をよく頭に入れておきな」
「………! はいっ!」
「ところでアンタの武器はなんだい?」
「えっと、本当は違うんですけど…… 今はこの短剣が……」
そう言って少女は腰のホルダーから短剣を取り出す仕草をした。
しかし、そこには肝心の短剣はなく、その手は空を切ってしまった。
「あ、あれっ?」
「……もしかして、探してるのはアレ?」
狼狽える少女を横目に、ノアルが指差した先は、対峙しているゴーレムを少しずつ押し返し始めているアカード……の足下。
そこには先程まで少女が使っていた短剣が転がっていた。
「あっ、そういえばさっき僕と戦った時に……」
「あっ………」
……戦闘中にも関わらず、玉座の間はどこか微妙な雰囲気に包まれてしまった。
ゲラルトが呟いた内容はここにいる全員の気持ちを表していた。
それほどまでに目の前にいる怪物は禍々しく、異様な雰囲気を放っていた。
「恐らくこいつはあのアカードってやつだろう? どういう手段を使えば人がこんな怪物になるんだい?」
「そんなものは聞いたこともない。 もしあったとしても確実に禁術指定される代物だろう」
「《カッカッカ…… これは中々よい出来ではないか。 人魔獣(じんまじゅう)とでも名付けるか。 しかし、自我を保てぬのはちと残念だな》」
「……どういうこと?」
「《カッカッ…… 残念ながらお主らにこれが何なのか語る事はないのぅ。 まずそんな事より己の身を守るべきだと思うがな》」
「ギュルァァァァァァアアアアア!!」
アカード…… もとい人魔獣の咆哮が玉座の間を揺るがし、その雰囲気をより禍々しいものに変化させていく。
「倒すしかないみたいですね」
「そうさね。 ショーマ、アンタまだ戦えるのかい? 魔力は?」
「まだ大丈夫です。 それに、この状況で休んでなんかいられませんよ」
「そうかい」
「皆構えろ!! 来るぞ!」
ゲラルトさんの警告の直後、人魔獣の口が開いたかと思うと、そこに闇色の魔力が収束し始めた。
「『アースウォール』!」
「『アイスウォール』!」
「『シールド』!」
それを見たゲラルト、アリシャ、ショーマの3人は、それぞれ魔法で強固な壁を作り出し、人魔獣の攻撃に備える。
「ガァァァァァァァァァア!!!」
ドゥッいう音と共に人魔獣の口から放たれた闇色の魔力は、3人の作り出した障壁と真正面からぶつかり合った。
ドガガガガガッッッ!!
「っ! 全員、横に飛んでください!!」
ガガガガッッッ…… バキィィィン!
大きな破壊音と共に、ショーマ達が作った三重の壁は数秒の拮抗を見せたものの、あっさりと破られてしまった。
メリエ以外の者たちはしっかりとその数秒の内に射線から外れ、唯一の戦闘員ではないメリエはゲラルトが抱き抱えて運んだ事でなんとか脱出に成功した。
そして、放たれた魔法は、バゴォンと音を立てて城壁を軽々と破壊すると、そのまま空の彼方へと飛んでいき、やがて見えなくなっていった。
「なんて威力なの……」
「……規格外」
規格外の魔法を放った元凶である人魔獣は、その顔に醜悪な笑みのようなものを浮かべ、こちらを見下ろしていた。
「ショーマ、ノアル。 アンタたちは私と一緒にアイツに接近して戦うよ。 アイツにさっきの砲撃を使うタメを作らせないようにね」
「了解です」
「……ん」
「それなら私のゴーレムも使うといい」
そう言ってゲラルトは一言二言の詠唱を挟み、召喚魔法を発動させた。
すると、地面から巨大化したアカードと同じくらいの大きさを誇る岩のゴーレムが現れた。
「これは…… すごいですね」
「ある程度はあの化物とも張り合えるはずだ。 強度もそれなりにあるから、巻き添えなどもそこまで気にしなくていい」
「よし、それじゃあゴーレムと私は正面から、ショーマとノアルはそれぞれ側面からだ。 ゲラルトとエルフの嬢ちゃんは戦えない者達を守りながら私達のフォローだ。 準備はいいかい?」
全員がユレーナの指揮に頷き、戦闘態勢をとる。
「グオオオオオオオオ!!!」
人魔獣も大きな咆哮を上げ、臨戦態勢をとった。
「いけ! ゴーレムよ!」
まずはゴーレムが先陣をきって人魔獣に接近すると、その巨大な腕を振り回して攻撃を仕掛けた。
ガァン! と鈍い音を立てて人魔獣はその攻撃を片腕で受け止める。
「ハァッ!」
動きが止まった所へユレーナが突っ込み、その受け止めている腕を狙って斬りかかっていく。
しかし、人魔獣は受け止めていたゴーレムの腕を角度を変える事によっていなし、その体躯に見合わぬスピードでその場所を飛び退くことでユレーナの攻撃をかわした。
「ノアル!」
「……ん!」
そこへ今度は双剣を持ったノアルと、アイテムボックスから取り出した大剣を持ったショーマが別方向から攻撃をしかけようと接近していく。
「……! グラァァァァーー!!!」
「うわっ!」
「……んぅっ!」
だがその攻撃も、人魔獣の咆哮と共に体から放たれた闇色の魔力による衝撃波によって近づくこともできずに阻まれてしまう。
「大丈夫かい? 二人とも」
「はい、ケガはないです」
「……ダメージはないけど、近寄れない」
「あの衝撃波が厄介だねぇ…… アタシら3人じゃ手数が足りないかもしれん」
その後も何回かゲラルトやアリシャも後方から加わって、手段を変えながら人魔獣に攻撃を仕掛けたものの、致命傷を与えるには至らず、ショーマたちが少しずつ消耗していくような状況に陥ってしまっていた。
アカードの体にもそこそこの量の傷が刻まれているが、痛みを感じないのか依然醜悪な笑みを見せていた。
そんな状況が続いていた中、ゲラルトのゴーレムが人魔獣を押さえ込んでいる内に、再びショーマたち前衛組の3人が人魔獣から少し距離を取ると、そこへ小さな人影が3人へと近づいていった。
「あ、あのっ!」
「え? あっ、君は…」
そこに立っていたのは、先ほどまでショーマと戦っていた少女だった。
「ぼ、僕にも手伝わせてくださいっ」
「君にも……?」
「ほう? なかなかできそうな奴じゃないかい? ショーマ、こいつは何者だい?」
「えっと、その子はアカードの奴隷だった子です」
「その割には首輪とか着けてないみたいだが?」
「あぁ、首輪は僕が外しました」
「……アンタとことん規格外だねぇ。 ああいった代物は壊したりしようとすると何かしら悪影響を及ぼすはずなんだけど」
「推測ですが、僕のスキルで形を変えて外したものなので、大丈夫だったんじゃないですかね?」
「なるほどねぇ。 それでお前さん、戦えるのかい?」
「……戦えます。 いや、戦わなきゃダメなんです。 僕もあいつに加担した者の1人ですから……」
「それは君の意思では……」
「それでもっ、僕がした事は許されることじゃないっ……」
少女はそう言うと、あどけない顔立ちに似合わない悲壮な決意を感じさせる目でショーマ達を見上げていた。
「いいねぇ、その目。 それは戦う者の目だよ。 よし、それじゃあ、アンタも手伝いな」
「あ、ありがとうございます!」
「ただし、1人で戦おうとするんじゃ無いよ。 アタシらもいる事をよく頭に入れておきな」
「………! はいっ!」
「ところでアンタの武器はなんだい?」
「えっと、本当は違うんですけど…… 今はこの短剣が……」
そう言って少女は腰のホルダーから短剣を取り出す仕草をした。
しかし、そこには肝心の短剣はなく、その手は空を切ってしまった。
「あ、あれっ?」
「……もしかして、探してるのはアレ?」
狼狽える少女を横目に、ノアルが指差した先は、対峙しているゴーレムを少しずつ押し返し始めているアカード……の足下。
そこには先程まで少女が使っていた短剣が転がっていた。
「あっ、そういえばさっき僕と戦った時に……」
「あっ………」
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