転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜

かむら

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第四章 帝都動乱

#72 帝都へ

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「まだ来てないみたいだね」

「……ん」


 まだ空が少し暗く、少し肌寒いような時間に、僕とノアルは街の出入り口である門の近くまで来ていた。

 ユレーナさんと昨日、スカイボードの練習をした時に決めておいた集合場所はここなのだが、まだ来ていないみたいだ。


「ちょっと肌寒いね。 ノアルは寒くない? 大丈夫?」

「……これくらい全然平気。 ……むしろ丁度いいくらい」


 そういえば、ノアルはどちらかというと暑がりだったな。


「……えい」


 すると、なにを思ったのかノアルが僕の腕を取り、横からギュッと抱きついてきた。


「……ぎゅー」

「え、ど、どうしたの? 急に」

「……寒いって言ってたから暖めてあげようと思って」

「そ、そっかー」


 ノアルは今日も相変わらず、行動が突飛だ。

 一昨日にはかなり沈んだ様子だったんだけど、もう気にしてはいないみたい。

 それどころか、以前よりスキンシップが増えた気さえもする。


「おやおや、朝からお盛んだねー。 見てるこっちが熱くなっちまうよ」

「ユ、ユレーナさん!」

「……ユレーナ、おはよ」

「あぁ、おはようさん。 まぁ、大した難易度の依頼でもないし、イチャイチャするのは構わんが、魔物が出たりしたらちゃんと戦っておくれよ?」

「分かってますから、からかわないでください……」

「まぁまぁ、パーティー仲が良いのはいいことさね。 そんじゃ、そろそろ出発しようか」

「……んっ」

「分かりました。 あ、ユレーナさんの荷物持ちましょうか?」

「ん? あぁ、負担じゃないようなら頼むよ」

「大丈夫ですよ」


 ユレーナさんが持ってきていた、小さめのボストンバックのようなものをアイテムボックスにしまい、僕達は門をくぐって、街の外へと歩き出した。

 一応、門番をしている衛兵の人もいるのだが、既に僕達の顔が知れているのか、「お気をつけて!」という言葉に敬礼付きで送り出された。 

 朝早くからご苦労様です。


「よし、この辺ならいいですかね…… よっと!」


 門を出たので、アイテムボックスからスカイボードを3つ取り出し、乗る準備をする。 

 ……準備といっても決められたところに足を乗せるだけだが。

 ちなみに、ユレーナさんも淀みなく乗る準備を進める事が出来ている。 

 昨日、午前中になんとか仕事を終えたらしいユレーナさんと、午後からスカイボードの練習を始めたのだが、ざっくりと乗り方とバランスの取り方を教えただけであっという間に乗りこなしてしまった。 

 乗りこなすどころか、ウロナの森上空で練習していた時に、木々の隙間から見えたウルフやらオークやらの魔物に向かって剣圧を飛ばす事であっさり倒してもいた。

 まぁ、そんな事があったので、ユレーナさんに関して心配することはないだろう。


「それじゃあ、出発しようか。 恐らく着くのは昼過ぎになるだろうから、4割くらい進んだところで休憩と少し腹ごしらえして再出発…… って感じでいいかい?」

「はい、それで大丈夫です」

「……ん、了解」

「よし、それじゃあ出発!」


 僕達3人は、スカイボードに組み込まれたウィンドの魔法を発動させ、一気に加速しながら空へと飛び立った。


「ふぅっ! やっぱりこの乗り物は爽快だねぇ! こんな速さで空を飛べるなんて夢物語かと思ってたよ!」

「……分かる」


 確かに、スカイボードは僕が作ったもので、性能も熟知しているが、これを使って飛ぶのはかなり楽しい。

 なにせ、どんだけスピード出そうが、シールドの魔法があるから風圧などで苦しむことはないし、それなりの高度で飛ぶ事が出来るので、そこから見下ろす景色はとても素晴らしいものなのだ。

 まぁ、今回はスピード重視なので、あまり景色を楽しむ事は出来ないのだが。

 ひとまずは休憩地点まで急ごう。 

 朝もまだ食べてないから、少しは食べておきたいし。



     *



 ハゾットの街を出発してから3時間ほど経った辺りで、僕達は少し休憩をとることにした。


「いやぁ、本当に早いね。 このペースなら予定してたよりかなり早く帝都まで行けそうだよ」

「それは良かったです。 あ、これユレーナさんの分です」

「お、ありがとう。 それにしても、旅の途中でこんな暖かい食事が取れるのは素晴らしいさね」


 アイテムボックスから簡易的な机と椅子を取り出し、その上に料理を並べていく。

 今日の朝ご飯は野菜たっぷりのスープにロールパンを使ったサンドイッチだ。

 結構前に大量に作っておいたものだが、アイテムボックスに入れておけば冷めたり腐ったりせず、いつでも出来立てが食べられる。

 加えて、暇な時にいろんな種類の料理をかなりの量作ってあるので、今、アイテムボックスに保存してある食糧だけでも一週間は食うに困らないだろう。


「ズズッ…… はぁ…… それにこのスープめちゃくちゃ美味いね。 これもショーマが作ったのかい?」

「そうですね。 まぁ、ノアルにも手伝ってもらってますし、僕達が泊まってる宿の従業員の方と作ったりもしてますけどね」

「……ショーマの料理はどれも美味しい」

「ははっ、ありがとう」

「ショーマがいれば遠出も苦じゃないねぇ。 今後もどこかに行く時は頼みたいくらいだよ」

「僕達に余裕があれば構いませんよ」

「そうかい、助かるよ!」


 僕達は食事含めて30分ほど休憩を取り、念のためスカイボードに魔力を充填してから再出発した。



     *



「そろそろかね」


 現在、時刻はちょうど12時くらい。

 休憩した地点から出発して4時間程経った頃、ユレーナさんがそんなことを呟いた。


「そろそろ到着ですか?」

「ああ、結構帝都には来たことがあるから、見慣れた風景が増えてきたよ。 あ、着陸する場所はどうするか決めてなかったね。 どうする?」

「そうですね…… 帝都の入り口から1Kmくらい離れた場所にしましょうか。 あまり人目に付くと騒がれかねませんし」

「まぁ、ハゾットの連中は知ってるやつもいるけど、こっちじゃまだこの乗り物は珍しいだろうから、それが妥当だね…… っと、ほら見えてきたよ」

「おぉ、あれが……」


 かなり遠目にだが、大きな外壁に囲まれ、目算でハゾットの2倍程ある都が見えてきた。 あれが帝都か!

 ん? 

 だが…… 何か様子がおかしくないか……?


「ユレーナさん…… あれ、なんだと思います?」

「……煙が上がってるね。 しかも、複数」

「……火事?」

「いや、そんな生易しいものじゃなさそうだね。 2人とも予定変更だ。 このまま帝都の入口まで行くよ。 飛んで行ってもいいが、流石に不法入国はまずいかもしれんからね」

「分かりました」

「……んっ」


 僕達は、スカイボードの速度を上げ、帝都へ急ぐ。

 そこから5分とかからずに到着したズーガルフ帝国の帝都は……


「これは……」

「一体何がどうなってるんだい!?」

「……ひどい」


 大量の魔物に蹂躙されていた。

 
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