転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜

かむら

文字の大きさ
上 下
74 / 93
第三章 獣人国へ

#70 尋問

しおりを挟む
「まず初めに、君は帝国の人間で間違いないかい?」

「はい…… 私は帝国の人間です……」


 ニコラスさんの質問に、猿ぐつわを外された研究者の男が正直に答える。

 闇魔法を使ってみたのは初めてだけど、かなり強力だな…… そりゃあ重宝されるだろう。


「見た感じ、君は研究者のようだけど、なぜあんな場所に?」

「我々が作った魔導具の効果を直接見るために……」

「ふむ。 その言い方だと、魔導具を使って今回のスタンピードを起こしたみたいだけど、どうやったんだい?」

「ダンジョン自体に大量の魔力を流し込み…… それによってダンジョンの魔力を暴走させた……」


 そんな事が出来るのか……? 

 スタンピードは本来、それなりの年月が経ったダンジョンに溜まっていた魔力が溢れて暴走し、魔物がダンジョン外に溢れ出すといった現象だ。

 その現象を人為的に引き起こすためには、それこそ莫大な量の魔力が必要なんじゃないか? 


「そこまでの魔力をどこから? 国の魔法使いを大量に動員でもしたのか?」

「3ヶ月程前に捕らえたエルフ…… それが魔力の源……」

「エルフだって!? ハーフエルフじゃない、純粋なエルフを帝国は捕らえたというのか!?」


 研究者の男の発言に、これまでにないような慌てっぷりを見せるニコラスさん。 

 周りを見渡してみると、私兵の人達もノアルも少なからずビックリしているみたいだ。

 それにしても、エルフか…… 

 ファンタジー世界の定番種族だが、この世界にもいるんだな。


「ねぇ、ノアル? エルフってそんなに珍しいの?」

「……純粋なエルフはかなり少ないはず。 ……ハーフエルフやダークエルフはそれなりにいるけど、純粋なエルフは世界でも100と少し…… 200にも満たない数だって聞いたことある」


 え、そんなに希少なのか!? 

 
「彼らはこの国からかなり離れた小さな国で暮らしていて、独自の技術…… 特に魔法に関する事では右に出る種族はいないとされているんだ。 その内に有する魔力は1人でその辺の魔法使い百人分に匹敵するとも言われているね」

「それはすごいですね……」


 他にもエルフに関してニコラスさんに聞いたところ、かなりの長命種であるが、同族で子を成しにくいことや、他種族と子を成した場合、生まれてくる子供は人間や獣人が相手だとハーフエルフ、魔族が相手だとダークエルフ、もしくは相手方の種族の子供が生まれてくるそうだ。

 だが、今回の件で注目する場所は、エルフの魔力についてだろう。

 研究者の男から話を聞くに、隷属の輪やダンジョンを暴走させた魔導具はエルフの魔力を主に使って起動させたらしい。

 恐らく、今こうしている間にも、魔力を利用されているのではないかとも研究者の男は言っていた。

 他にも、隷属の輪をどうやって作り、量産しているのかと言うことも聞き出せた。

 どうやら、めちゃくちゃ大きな鉄の原石に隷属の付与をし、その原石を使って隷属の輪を作ることで、量産を可能にしているみたいだ。

 なるほど、試したことは無かったけど、そういう風に魔導具を作ることも出来るのか…… 

 今度試してみよう。


「ふむ、大体分かったよ。 僕から聞きたい事はもうないけど、ショーマ君達はなにか聞きたい事はあるかい?」

「いえ、僕は特にないです」

「……一つ聞きたい」


 そう言ったノアルが、一歩前に踏み出し研究者の男の前に出る。


「……獣人国アラサドの端にある村を襲った魔物は、帝国の仕業?」

「はい…… 隷属の輪を使用した最終実験を獣人国の村で行いました……」

「……!!」


 研究者の男の言葉を聞いた途端、ノアルの体からブワッと何かが溢れ出てくるように感じた。

 これは…… 殺気だ。

 横に立つノアルの方を見てみると、腰の双剣に手がかかっている。


「ノアル!」


 それを見た僕は、ノアルの双剣に置かれた手に重ねる形で手を置き、ノアルと研究者の男の間に素早く割り込んだ。


「ショー……マ……」

「落ち着いて、ノアル。 手は出しちゃダメだよ」

「でも…… こいつらのせいで、村のみんなは……!」

「確かに、大事なものを奪われたノアルには、この男に手を出す権利はあるのかもしれないけど、怒りに任せてやり返したら、結局なにも変わらない。 残るのは虚しさだけだ」

「……っ」

「それに…… 僕個人的にも、ノアルのそんな姿は見たくないかな」

「……!! ……ごめん……なさい」


 僕がそう言うと、ノアルは殺気を治め、体に入れていた力を抜いた。


「落ち着いた?」

「……ん」

「良かった。 あ、すいません、ニコラスさん。 勝手なことをしてしまって」

「ふぅ…… 正直、戦場に立たない僕からしたら、今の殺気はかなり心臓に悪かったよ」

「……ショーマのせいじゃない。 ……取り乱してほんとにごめんなさい」

 
 本当に申し訳なく思ってるらしく、ニコラスさんや私兵の人たちに頭を下げるノアル。 

 猫耳も尻尾もへにゃりと垂れ下がってしまっている。


「あぁ、いいんだよ。 ノアル君の立場からして怒るのは当然だからね」


 ニコラスさんはそう言って微笑んで許してくれた。 

 本当に優しい領主様である。

 ノアルの質問も済んだので、研究者の男にかけていたヒュプノシスを解くと、男の首がガクンと落ち、そのまま意識を失ってしまった。

 再び私兵の人達に縛られている研究者の男を横目に、僕達は牢から出て、次の牢へと場所を移す。

 まだまだ時間かかりそうだな…… 

 頑張っていかなければ。

 


  *



「ふぅー、結局ほぼ1日使っちゃったね」

「……ね」


 現在、僕とノアルはみけねこで夕食を食べ終え、部屋に戻ってきている。

 結局、今日1日はニコラスさんのお手伝いで終わってしまった。

 研究者の男を尋問した後、残りの2人にも色々と話を聞いたのだが、あの2人は帝国の諜報部隊だったらしく、元々はあの2人のみでダンジョンの魔力を暴走させるはずだったのだが、研究者の男が無理やり同行を申し出たため、その護衛も兼ねていたそうだ。

 研究者の男は帝国ではそれなりの地位の人間だったみたいだな。

 その他にも、前からウロナの森で度々目撃されていた怪しい男達の正体は帝国の諜報部隊だったことや、帝国では近頃、軍備が強化されており、詳しくは伝えられていないが、近々戦争を起こすのではないかとも語ってくれた。


「それにしても…… エルフ……か」

 
 今日だけで色々と大事な話を聞いたが、僕の中で一番気になっているのは帝国に捕らえられたエルフの事だ。

 研究者の男は、エルフの魔力を利用していると言っていたが、恐らくまともな方法じゃないだろう。 

 詳しくは聞きたくも無かったので聞いていないが。

 うーん、とは言っても僕に何か出来るだろうか……?

 ニコラスさんもどうにかしたいと言っていたものの、他国の国家施設に囚われているとなると、接触なんて容易には出来ないだろうし、ニコラスさん曰く、エルフを無理やり捕らえたとバレたらそれこそエルフの国だけじゃなく、色んな国が敵に回るだろうとも言っていた。

 それほどこの世界でのエルフという存在は大きいのだ。


「……………………」

「ん? ノアル、どうしたの? なんか元気ないけど……」


 そんな事を僕が一人で考えている間、ノアルはずっとベットの端に座って黙り込んでしまっていた。 


「……ショーマは、昼間のノアルのこと、どう思った?」

「え? ああ、研究者の男に怒った時のこと?」

「……ん」

「正直、驚いたかな。 あそこまでノアルが人に対してあれほどの殺気をあらわにしたのは初めて見たから」

「……軽蔑、した?」

「してないよ。 どうして?」

「……自分でも、あんなに怒りで我を忘れるとは思ってなかった。 ……今、思い返すと、自分の中にあんな醜い感情が存在していたという事が……怖い」


 ノアルはそう言うと、膝を抱えてその間に顔を埋めた。


「……自分が思ってるより、ノアルは汚かった。 ……こんな私が、ショーマの近くにいていいのかなって……」


 最後の方の言葉は、少し掠れていた。

 僕はそんなノアルの横に腰かけて口を開いた。


「さっきも言ったけど、僕はノアルを軽蔑なんてしてないよ。 不謹慎かもしれないけど、むしろ知らなかったノアルの一面が知れて良かったとさえ思ってる」


 その言葉を聞いたノアルは顔を上げ、僕の顔を少し下から覗き込んできた。

 どこかこちらの機嫌を伺っているようにも見える。

 なので、僕は、そのノアルの目を真っ直ぐ見つめ返す。


「それに、僕がノアルと同じ立場に立たされたら、ノアルと同じようになってただろうしね。 もし、そうなったらノアルは僕の事、軽蔑する?」


 ノアルは首を横にフルフル振って否定してくれた。


「これからも同じような事があるかもしれないけど、その度に僕はノアルの事を止めるよ。 だから、ノアルも、もし僕が我を忘れそうになったら止めてくれると嬉しいな」

「……んっ」

「ありがと。 ほら、だから泣かないで元気出して?」

「……ぐすっ。 ……泣いてない」

「はは、なら良かった。 じゃあそろそろ寝ようか。 明日も頑張ろうね?」

「……ん!」


 うん、元気になったみたいで良かった。

 ノアルのためにも、早いところ帝国に関する問題が解決すればいいんだけど…… 果たしてどうなるだろうか……
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...