転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜

かむら

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第三章 獣人国へ

#60 約束

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「ところで、ミラルちゃんは僕らに会いたいがためにここに来たのかな?」

「はっ! そうです! ほんとは、ご飯が出来たので呼びに来たのです!」


 僕らの部屋に突撃して来たミラルちゃんに、この部屋に来た目的を聞いてみると、忘れていました! といった表情で質問に答えてくれた。


「そっか、ありがとう。 呼びに来てくれて」

「……ん、ミラル偉い」

「ほわゎ…… い、いいんです、これがミラルの仕事なのですから……」


 僕達が2人がかりでミラルちゃんの頭を撫でると、ミラルちゃんは、嬉しさと恥ずかしさが混ざったような表情で、されるがままになった。


「じゃ、じゃあ、他の人達にも知らせて来る! ご飯が終わったら、お出かけの話聞かせてね!」

「うん、分かったよー。 気をつけてね」

「……頑張れ」

「はーい!」


 元気に返事をして、ミラルちゃんは僕達の泊まる部屋から出て行った。

 そういえば、昼ご飯は一応食べたけど、そこまで食べた訳じゃないからお腹空いたな。


「僕らも行こうか」

「……ん、お腹空いた」

 
 ノアルも同じだったようで、ご機嫌そうに尻尾を動かしながら僕の前を歩いて行く。

 食堂に入ると、既に何人かの宿泊客が食事を取っていた。

 僕達が席に着いて少しすると、トーイさん、ソーイさん、それにミラルちゃんがご飯を持って来てくれた。

 早速、運ばれてきた食事を口に運ぶと、思わず笑みが溢れてしまった。 

 相変わらずこの宿の食事は美味しいな。

 そのまま食事を続けていると、途中からゲイルさんが僕らのテーブルに来て、色々と話しながらの食事に変わった。


「はぁー、オークジェネラルと戦って楽勝か! ショーマだけじゃなく、ノアルも十分な実力はあるみたいだな! オークジェネラルを一撃で倒せる火力があるのは羨ましいぜー」

「とは言っても、ゲイルさんも1人で倒せますよね?」

「まぁ、倒せるが、一撃って訳にはいかねぇな。 端から削っていっていく感じになるだろうから時間がかかると思うぜ」


 やっぱり、ゲイルさんもオークジェネラルは普通に倒せるのか。
 
 あのレベルをタイマンで倒せるのは流石銀ランクの冒険者といったところだろう。


「なんの話してるんですか? ミラルも混ぜて欲しいのです!」

「ショーマさん、ノアルさんお久しぶりです。 本当に戻ってきてくれたんですね」

「お、なんだ? みんな集まってるな」


 食事を食べ終え、一息ついた頃にはミラルちゃんとララさんが厨房の方から出てきて、ミルドさんは受付の方から食堂にきて、僕らの会話に参加し始め、一気に大人数の集まりになった。

 話す内容としては、やはり僕達の旅の話が中心である。


「……それで、怪我した人達をショーマが全員治しちゃった」

「ショーマお兄ちゃんすごい!」

「……そのあと、魔力切れで倒れた」

「あら、大丈夫だったんですか?」

「……2日ほど、寝たきりになった」

「それは随分、無茶したみたいだな。 俺はまともな戦闘した経験ないが、魔力切れは辛いもんだと聞くぞ?」

「あはは…… 確かに苦しかったですね。 でも、それで皆を救う事が出来たので、後悔は無いです」

「ショーマはもっと自分を大切にしないとダメだな」


 ゲイルさんのその言葉に、ここにいた僕以外の全員がうんうんと頷く。


「ノアルにも言われました。 今思うと確かに無茶をした自覚はあるので、そこは反省しています」

「お兄ちゃん、もう大丈夫なの……?」

「うん、もう大丈夫だよ」

「お兄ちゃんがいなくなったらミラルは悲しいです! だから、無理はしないで!」

「ミラルちゃんにも言われたら、下手に無理する事は出来ないね……」

「ふふ、そうですよ。 もちろん私も同じ気持ちです」

「ああ、俺もだ」

「皆さん…… ありがとうございます。 なるべく、心配させないように頑張りますね」


 ……本当に、この街の人達は暖かい人ばかりだな。 

 僕のためを思って言ってくれているという事がしっかりと伝わってくる。

 その後もかなりの時間話し込んでいたのだが、夜更かしも良くないという事で、今日のところは解散になった。

 そのまま僕とノアルは部屋に戻り、寝るための準備を始めていたのだが、少し問題が起こった。


「……ショーマ、ノアルの荷物出して欲しい」

「うん、分かったよ。 確かに出しておいた方がいいよね」


 ソルムの村を出るに当たって、ノアルは自分の荷物(主に服)をまとめて持ってきていた。 

 流石に手で持って行くとなると邪魔になってしまうので、僕がアイテムボックスで預かっておいたのである。

 アイテムボックスからノアルの荷物であるボストンバックのような形状をした鞄を取り出し、ノアルに手渡す。


「……ありがと」

「お安い御用だよ……って! なにやってんの!?」

「? ……着替える」

「いきなり僕の前で着替えないで!?」

「……ショーマなら、見ててもいい」

「終わったら背中叩いて!!『サイレンス』!」


 僕は生活魔法の一つであるサイレンスを使い、ノアルに背を向ける。

 この魔法は、音を通さない空間を作り出す事で、その空間の中の音は聞こえるが、外の音は完全に遮断するという便利な魔法だ。

 この魔法を使っておけば、衣擦れの音も聞こえないので、変に意識する事も無くて済むだろう。


「……むぅ」


 背を向けてしまったショーマに少し不服そうな声を上げつつ、ノアルは白色のワンピースタイプの寝間着に着替えた。

 見られていないなら、そこまで時間をかける意味は無いので、さっさと着替えてしまう。 

 そして、このままショーマの背中を叩けば良くはあるが、せめてものアタックとして背中にしなだれかかるようにして彼に存在をアピールする。

 それに気づいたショーマは、サイレンスの魔法で作った空間を消し、少し困った表情でこちらを振り返った。


「着替え終わった?」

「……ん」

「なんか、随分と薄手な寝間着だね。 似合ってはいるけど」

「……暑がりだから、しょうがない」

 
 僕もそれ用の寝間着買った方がいいかなー? 

 生活魔法で綺麗にできるから、洗濯には困らないし。
 

「そっか、それじゃあそろそろ寝ようか。 話し込んでたら結構遅くなっちゃったし」

「……一緒のベッド、久しぶり」


 確かに、ソルムの村では僕は1人で寝ていたから、一緒に寝るのは久しぶりだな。

 ノアルがベットに飛び込み、僕は部屋のランプを消した後、その隣にゆっくりと仰向けで寝そべった。

 僕がベットに入ると、ノアルがもぞもぞとこちらに近づいてきて、僕の体にピッタリと寄り添ってきた。


「……ノアルさん? あなた、自分で暑がりって言ってませんでしたか?」

「……それとこれとは別」

「はぁ…… 分かったから、足を絡ませてくるのはやめて……」

「……嫌?」

「嫌ではない、けど、僕の安眠のためにお願いしたい」

「……ん、分かった。 ……寝てる時に無意識で何かしちゃったらごめんね」

「出来ればやめてほしいけど、無意識だったら怒ったりはしないよ」

「……ん」

「それじゃあ、おやすみ」

「……おやすみ」


 僕らはそんなやり取りをして眠りについた。

 翌朝、起きた時にノアルに抱き枕のように横から抱きつかれていたのはご愛嬌である。


 
     *

 

 ハゾットに戻ってきて数日が経ち、その間は依頼をこなしたり、街で買い物をしたり、ユレーナさんに捕まって模擬戦をしたりと平和(?)な日々を過ごした。

 ちなみに、模擬戦は今回も負けました。

 プルニーマを使ったので、前回よりは断然善戦はしたものの、最終的には押し切られてしまった。

 そしてその間、特には帝国関係の異変も聞かず、ギルドとしても調査を続けているそうだ。

 そんなある日、依頼をこなそうとギルドに来た僕達の所に、クラウスさんがやって来た。


「あ、おはようございますクラウスさん」

「……おはよ」

「ああ、おはよう。 いきなりで済まないんだが、少し話す時間はあるか?」

「あ、はい。 まだ依頼を受けた訳ではないので、大丈夫ですよ」

「そうか、では邪魔にならない所に行こう」


 クラウスさんの案内で、僕らはギルドの端の方に移動する。

 そこで話を聞くことになったのだが、一体何なんだろうか?


「まず、聞きたいのだが、明日は何か予定があるか?」

「いえ、特にはありませんね。 依頼をこなすか、街で買い物でもしようかと思っていました。 明日、何かあるんですか?」

「ああ、単刀直入に言わせてもらうのだが、明日、この街の領主に会ってもらいたいのだ」

「領主様、というと……」

「ああ、私の兄だな」


 領主様か……

 度々噂などは聞くが、実際会ったらどんな人なんだろう?


「もちろん、お呼ばれとあれば会わせていただきます」

「そこまでかしこまらなくとも大丈夫だと思うぞ。 兄はその辺りの事は気にしないからな」

「そう言ってもらえると助かります」

「兄はお前にぜひ会いたいと言っていてな。 昨日、王都から帰ってきたのだが、開口一番がその発言だったのは驚いた」

「そこまで僕の事を気にしてくださってるんですか?」

「魔導具で報告した際にも色々と聞かれたからな……」

「そうなんですね……」

 
 クラウスさんは多少、ゲッソリした表情でそんな事を言ってきた。 

 根掘り葉掘り聞かれたんだろうな……
 

「まぁ、それはさておき、明日の昼前頃に領主邸の前まで来てくれ。 門番には来客があると伝えておく」

「会うに当たって、何か気をつける事とかは無いですかね?」

「特には無いな。 服装もそのままで大丈夫だろうし、言葉遣いに関しては、お前は元々丁寧だから気にしなくても大丈夫だ」

「分かりました。 明日の昼前に伺わせてもらいますね」

「ああ、よろしく頼む」


 領主様かー、一体どんな人なんだろう?

 明日が少し楽しみだな。
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