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第三章 獣人国へ

#57 ハゾットへ帰還

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 スカイボードに乗った僕達は、途中の休憩をいれても6時間もかからずにハゾットの街の近くまで戻ってきた。

 流石に、このまま街に行くと門番の人達を驚かせてしまいそうなので、森の出口辺りに人がいない事を確認して着地する。

 それにしても便利だなー、スカイボード。

 普通に歩いたら、もう1日必要な距離をあっという間に走り抜けてしまった。

 道中、全く魔物との戦闘が無かった事も一つの要因だろう。


「……あっという間だった」

「そうだね。 乗りこなすのも割と簡単だし、いい物作ったよ。 あ、ノアルのスカイボード預かるね」

「……ん、お願い」


 ノアルからスカイボードを預かって、僕のものと合わせてアイテムボックスにしまう。

 街まではすぐそこなので、そのまま休まず街まで歩く事にした。

 そして、森から出て街へと続く街道を歩いていると、見知った顔の人が3人立ってこちらを見ている事に気付いた。


「あれ、リムさん、クラウスさん、ミリアンヌさん! ご無沙汰してます。 何かの依頼の帰りですか?」

「えーっと、こんにちはショーマさん。 依頼というか、私は調査の帰りですね。 お二人は私の護衛依頼を引き受けてくださったんです」

「そうだったんですか、お疲れ様です」

「あ、お疲れ様です…… って、そうじゃなくて! あれはなんですか!? なんかよく分からない板みたいなものに乗ってましたけど!」

「え、見てたんですか?」

「はい、ここから見えたんですよ。 ショーマさんとノアルさんがこちらに飛んでくる姿が」

「ここから見ていて、よく僕達だと分かりましたね? かなり距離がありますけど……」

「私の職業スキルで遠くの物が見えるスキルがあるんです。 そのおかげで確認する事が出来ました」

「スキルですか…… なるほど、納得です」

「それで、あの板はなんなんですか?」

「僕が作りました。 浮空石と魔石と鉄を使って」


 僕はスカイボードの簡単な構造と、付与した魔法をリムさん達に話した。 

 あんまり細かく説明してるとキリがないので、ざっくりとだが。


「ふむ、浮空石を使った乗り物か。 アイデアとしては面白いが、ショーマのスキルあっての物かもしれんな」

「確かにそうかもしれませんね」

「ねぇ、立ち話もなんだし、ギルドに戻らない? 詳しい話はそれからにしましょうよ」

「そうですね、ショーマさん達もギルドに来ますか?」

「そうですね、道中倒した魔物の解体も頼みたいですし、報告したい事もいくつかあるので行くつもりです。 ご一緒させてもらってもいいですか?」

「もちろんです。 それでは行きましょうか」

 

     *
 


 解体場に今回の旅で倒した魔物を預け、その中の魔物に討伐依頼が出ているなら、それを達成扱いに出来るという事なので、今はその確認作業をギルドでしている。 

 その確認も、ギルドカードを見せれば討伐記録が分かるので、すぐ終わるそうだ。 

 ちなみに解体場に魔物を預けに行ったのだが、あまりの量にグラッドさんに驚かれ、「こんなにいっぺんには無理だ!」と言われてしまったため、預けた魔物は僕らが討伐した魔物の半分くらいだ。

 ちなみに、現在進行形でリムさんにも驚かれている。


「ショーマさんとノアルさん2人で、ウルフ系統が23匹、ゴブリンが25匹、爪熊が8匹、ブラッドサーペントが10匹、終いにはオークが14匹にオークジェネラルまで…… こんな短期間に赤ランクと黄ランクのコンビが討伐する魔物の量じゃないですよ、全く!」

「あはは…… 確かに大変ではありましたね」

「……頑張った」

「依頼もかなりの数を達成扱いに出来ますよ。 ランクも恐らく上がると思います」

「それはありがたいです」

「そういえば、ノアルさんを故郷に送り届けるみたいな事を言っていましたけど、故郷はどうなっていたんですか?」

「……ギリギリだったけど、ショーマが救ってくれた。 ……そして、ノアルはこれからもショーマと一緒に冒険者する事にした」

「そ、そうなんですね…… それは、良かったです」


 ん? 

 なんか一瞬、リムさんの顔が曇ったような気がしたけど、気のせいかな?


「えーっと、他にも色々と報告したいんですけど、いいですか?」

「あ、はい! もちろんです!」

「それで、報告なんですけど…… コレが関わる事なんですけど、ここで話しても大丈夫ですか?」


 僕は首を手で輪っかを作って囲むようなジェスチャーをする。 

 首輪の事なんだけど、伝わるかな?


「……! そうですか、ショーマさんも知ってるんですね」

「伝わって良かったです。 はい、ゲイルさんから向こうに行く前日に教えてもらったんです。 注意しておけと」

「その話をするとなると、ギルドマスターに伝えた方がいいですね…… ちょっと待っててもらっていいですか?」


 そう言うと、リムさんはギルドマスターの執務室に向かうため、階段を登って行った。


「報告は終わったのか?」

「クラウスさん! 報告したいんですけど、人が周りにいると話せないような内容なので、リムさんがギルドマスターの所に話をつけに行ってくれています」

「話せないような内容ってなんなの?」

「……コレに関する話」


 今度はノアルが先程の僕と同じようなジェスチャーをする。

 クラウスさんとミリアンヌさんもそれを見て、反応を改め、真剣な表情でこちらを見ている。


「確かに、その話はギルドマスターにするべきだな」

「ゲイルから聞いたらしいわね? あいつがそう言っていたわ」

「そうです。 今回のノアルの村が襲われた件にも関わっているみたいで……」

「そうか…… 頼みがあるのだが、私達も同席していいだろうか? ゲイルとマイヤもそろそろ帰ってくるだろうから、あの2人にも話を聞かせたい」

「そうですね、その方がいいと思います」


 クラウスさん達には知っておいてもらった方がいいだろう。

 今回の首輪の騒動は恐らく、何か大きな争いを生むような気がする。 

 その時に、この人達には即座に対応できるよう、早めに情報は共有しておくべきだ。

 同じ理由で、ユレーナさんにも話が出来るといいんだけど…… 

 どうなるだろうか?
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