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第三章 獣人国へ
#56 新たな移動手段
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「……なに作ってる?」
先程まで仮眠を取っていたノアルが、毛布にくるまりながら僕の作業を横から覗いてきた。
現在、僕達はソルムの村とハゾットの街の中間辺りまで来ており、この前と同じように野宿をしている最中だ。
「ちょっとね、移動に役立つ乗り物というか道具みたいなものを作れないかと思ってさ」
「……乗り物?」
「想像通りに作れたら上手くいくと思うんだよね」
そもそも、浮空石を初めて見たとき、最初に思いついた事は、乗り物を作るのに使ったらいいんじゃないか、という発想だった。
今後、今みたいに長距離を歩かなきゃいけない状況になった時に、自分達で使える乗り物があったら便利だと思う。
なんなら、ハゾットに行くまでの残った道のりは今、作ってる物で移動したいとも思っている。
「うん、こんな感じかな。 あとは、上手く機能すればいいんだけど」
「……板?」
「そうだね、板だね」
僕が作ったのは、形状としてはスノーボードに似ている細長い板だ。
もちろん、ちゃんと2つ作ってある。
材質は浮空石と魔石と軽めになるように調整した鉄を使っていて、強度も中々のものになっている。
浮空石の魔力操作だけでも馬車よりもスピードが出るし、魔力操作に使う魔力は混ぜ込まれた魔石から消費されるので、魔力が少ないノアルでも乗れるはずだ。
そして、形はスノーボードと言ったが、スノーボードと違うのは、スノーボードより少し厚みがあるのと、真ん中の足を置く部分には、別の板が嵌め込んであり、二重構造になっているという部分だ。
大きい土台の板には、ウィンド、シールド、消費魔力軽減が付与されている。
ウィンドの付与は加速用で、シールドの付与は重力や風圧対策で、消費魔力軽減は単純に燃費を良くするためだ。
次に、嵌め込まれている足を置くための板には、乗った際の姿勢を良くしてくれる姿勢制御という付与と、こちらにも消費魔力軽減を付与し、最後に吸着の付与がされている。
吸着の付与は、足を乗せた時に板から足が外れて落ちないようにするためだ。
恐らくこの付与がないと、この乗り物は成立しないだろう。
その付与は最大出力にして発動させても、そこまでの魔力は必要としないため、コスパがいい。
恐らく、今回使った魔石の許容魔力量だと、充填無しで1日と少しくらいは動くんじゃないだろうか?
あと、足を置く位置を分かりやすくするため、色石で大きい土台の板は青、足を置く板は黄色く色付けもしておいた。
そんな作りをしたこの乗り物が誇る最大の長所は、なんといっても空をかなりのスピードで飛べる事である。
これを使って、ウロナの森を上から通れば、面倒な魔物との戦闘もしなくて済む。
そこまで高度を出さなければ、飛行型の魔物とも遭遇しないだろうし。
「……これ、なんていう乗り物?」
そんなこの乗り物の使い方や用途を僕から聞いたノアルがそう聞いてきた。
名前か……
うーん……
なんて言えばいいだろうか?
何か捻った名前をつけようかとも思ったが、ここはシンプルで呼びやすい名前にしようかな。
「スカイボード、かな」
「……すかいぼーど」
僕の言葉を反復するようにノアルがそう言葉を発した。
言語理解があっても、こういう言葉の意味は流石に伝わらないみたいで、聴き馴染みの無いような言葉として聞こえるみたいだ。
なので、僕の故郷の言葉(実際は少し違うが)で、スカイが空、ボードが板という意味だという事をしっかり説明しておくと、ノアルも納得したのか「……すかいぼーど、すかいぼーど」と、繰り返し呟いていた。
「よし、じゃあ、早速練習を……」
「……それは、ダメ」
と、説明も終わった所で、いざスカイボードの練習をしようと立ち上がろうとしたのだが、ノアルに腕を取られて止められてしまった。
「……ショーマは仮眠取って」
「え、まだ全然大丈夫……」
「………………」
「えーっと……」
「…………………………」
「わ、分かったよ……、ちゃんと休みます」
「……ん、よろしい」
うぅ、ノアルの視線攻撃には耐えられなかった……
「……ショーマが寝ている間、使ってみてもいい?」
「うん、良ければ練習してみて? 魔石に魔力は貯めてあるから、魔力消費に関しては心配しないでいいよ。 そんなに難しくないと思うけど、最初のうちはあんまり無茶な動きはしないようにね」
「……分かった」
ノアルにスカイボードを渡し、僕は絨毯の上で横になる。
思っていたよりも体は疲れていたらしく、目を閉じるとすぐに眠気が襲ってきた。
そのまま、ノアルがスカイボードの練習をしている音を背後に、僕は意識を手放していった。
*
「クラウスさん、ミリーさん。 調査終わりました。 報告をしに街に戻りましょう」
「ああ、分かった」
「ええ、そうね。 お疲れ様、リム」
「いえ、これが私の仕事ですから。 お二人も、先日までダンジョンの方に行っていたのにも関わらず、わざわざ護衛依頼を受けてくださり、ありがとうございました」
「気にするな。 昨日の休みで体の疲れは取れている」
「むしろ、手頃な依頼があって良かったわ」
現在、私とクラウスさんとミリーさんは3人で森の調査に来ており、彼らのパーティーメンバーであるゲイルさんとマイヤさんも、別の職員の護衛として森の調査の手伝いをしてもらっている。
だが、最近定期的に行われている森の調査では、あまりこれといった成果は出ていない。
ただ、調査による成果は出ていないが、森で怪しい人影があったという目撃情報が度々ギルドに報告されるようになったので、辞める訳にもいかないのである。
そして、3人で色々と話しながら森を出て、街への道を歩いていると、クラウスさんが急に立ち止まり、森の方を振り返った。
「む……?」
「どうしました? クラウスさん」
「あれはなんだ? 魔物か? かなりのスピードでこちらに飛んできているみたいだが」
「あら、本当ね。 それも2つ影がみえるわ」
「かなり距離があるとは言っても、ここまで来るのは時間の問題だろう。 リム、お前なら見えるか?」
「あ、はい。 やってみますね」
私は監視者という職業を持っていて、その職業スキルの一つに遠見スキルがある。
これは遠くの物でも、まるで近くにあるように見えるというスキルで、何もない平地であるなら今の私だと2~3kmくらい離れていても、それが何なのか分かる。
早速、そのスキルを発動させて、謎の2つの飛行物体を見てみると……
「え、えぇ!?」
「ど、どうしたの? リム、そんなに驚いて」
「何が見えたんだ?」
「あ、あれ、ショーマさんと、ノアルさんですよ……」
「「……は?」」
先程まで仮眠を取っていたノアルが、毛布にくるまりながら僕の作業を横から覗いてきた。
現在、僕達はソルムの村とハゾットの街の中間辺りまで来ており、この前と同じように野宿をしている最中だ。
「ちょっとね、移動に役立つ乗り物というか道具みたいなものを作れないかと思ってさ」
「……乗り物?」
「想像通りに作れたら上手くいくと思うんだよね」
そもそも、浮空石を初めて見たとき、最初に思いついた事は、乗り物を作るのに使ったらいいんじゃないか、という発想だった。
今後、今みたいに長距離を歩かなきゃいけない状況になった時に、自分達で使える乗り物があったら便利だと思う。
なんなら、ハゾットに行くまでの残った道のりは今、作ってる物で移動したいとも思っている。
「うん、こんな感じかな。 あとは、上手く機能すればいいんだけど」
「……板?」
「そうだね、板だね」
僕が作ったのは、形状としてはスノーボードに似ている細長い板だ。
もちろん、ちゃんと2つ作ってある。
材質は浮空石と魔石と軽めになるように調整した鉄を使っていて、強度も中々のものになっている。
浮空石の魔力操作だけでも馬車よりもスピードが出るし、魔力操作に使う魔力は混ぜ込まれた魔石から消費されるので、魔力が少ないノアルでも乗れるはずだ。
そして、形はスノーボードと言ったが、スノーボードと違うのは、スノーボードより少し厚みがあるのと、真ん中の足を置く部分には、別の板が嵌め込んであり、二重構造になっているという部分だ。
大きい土台の板には、ウィンド、シールド、消費魔力軽減が付与されている。
ウィンドの付与は加速用で、シールドの付与は重力や風圧対策で、消費魔力軽減は単純に燃費を良くするためだ。
次に、嵌め込まれている足を置くための板には、乗った際の姿勢を良くしてくれる姿勢制御という付与と、こちらにも消費魔力軽減を付与し、最後に吸着の付与がされている。
吸着の付与は、足を乗せた時に板から足が外れて落ちないようにするためだ。
恐らくこの付与がないと、この乗り物は成立しないだろう。
その付与は最大出力にして発動させても、そこまでの魔力は必要としないため、コスパがいい。
恐らく、今回使った魔石の許容魔力量だと、充填無しで1日と少しくらいは動くんじゃないだろうか?
あと、足を置く位置を分かりやすくするため、色石で大きい土台の板は青、足を置く板は黄色く色付けもしておいた。
そんな作りをしたこの乗り物が誇る最大の長所は、なんといっても空をかなりのスピードで飛べる事である。
これを使って、ウロナの森を上から通れば、面倒な魔物との戦闘もしなくて済む。
そこまで高度を出さなければ、飛行型の魔物とも遭遇しないだろうし。
「……これ、なんていう乗り物?」
そんなこの乗り物の使い方や用途を僕から聞いたノアルがそう聞いてきた。
名前か……
うーん……
なんて言えばいいだろうか?
何か捻った名前をつけようかとも思ったが、ここはシンプルで呼びやすい名前にしようかな。
「スカイボード、かな」
「……すかいぼーど」
僕の言葉を反復するようにノアルがそう言葉を発した。
言語理解があっても、こういう言葉の意味は流石に伝わらないみたいで、聴き馴染みの無いような言葉として聞こえるみたいだ。
なので、僕の故郷の言葉(実際は少し違うが)で、スカイが空、ボードが板という意味だという事をしっかり説明しておくと、ノアルも納得したのか「……すかいぼーど、すかいぼーど」と、繰り返し呟いていた。
「よし、じゃあ、早速練習を……」
「……それは、ダメ」
と、説明も終わった所で、いざスカイボードの練習をしようと立ち上がろうとしたのだが、ノアルに腕を取られて止められてしまった。
「……ショーマは仮眠取って」
「え、まだ全然大丈夫……」
「………………」
「えーっと……」
「…………………………」
「わ、分かったよ……、ちゃんと休みます」
「……ん、よろしい」
うぅ、ノアルの視線攻撃には耐えられなかった……
「……ショーマが寝ている間、使ってみてもいい?」
「うん、良ければ練習してみて? 魔石に魔力は貯めてあるから、魔力消費に関しては心配しないでいいよ。 そんなに難しくないと思うけど、最初のうちはあんまり無茶な動きはしないようにね」
「……分かった」
ノアルにスカイボードを渡し、僕は絨毯の上で横になる。
思っていたよりも体は疲れていたらしく、目を閉じるとすぐに眠気が襲ってきた。
そのまま、ノアルがスカイボードの練習をしている音を背後に、僕は意識を手放していった。
*
「クラウスさん、ミリーさん。 調査終わりました。 報告をしに街に戻りましょう」
「ああ、分かった」
「ええ、そうね。 お疲れ様、リム」
「いえ、これが私の仕事ですから。 お二人も、先日までダンジョンの方に行っていたのにも関わらず、わざわざ護衛依頼を受けてくださり、ありがとうございました」
「気にするな。 昨日の休みで体の疲れは取れている」
「むしろ、手頃な依頼があって良かったわ」
現在、私とクラウスさんとミリーさんは3人で森の調査に来ており、彼らのパーティーメンバーであるゲイルさんとマイヤさんも、別の職員の護衛として森の調査の手伝いをしてもらっている。
だが、最近定期的に行われている森の調査では、あまりこれといった成果は出ていない。
ただ、調査による成果は出ていないが、森で怪しい人影があったという目撃情報が度々ギルドに報告されるようになったので、辞める訳にもいかないのである。
そして、3人で色々と話しながら森を出て、街への道を歩いていると、クラウスさんが急に立ち止まり、森の方を振り返った。
「む……?」
「どうしました? クラウスさん」
「あれはなんだ? 魔物か? かなりのスピードでこちらに飛んできているみたいだが」
「あら、本当ね。 それも2つ影がみえるわ」
「かなり距離があるとは言っても、ここまで来るのは時間の問題だろう。 リム、お前なら見えるか?」
「あ、はい。 やってみますね」
私は監視者という職業を持っていて、その職業スキルの一つに遠見スキルがある。
これは遠くの物でも、まるで近くにあるように見えるというスキルで、何もない平地であるなら今の私だと2~3kmくらい離れていても、それが何なのか分かる。
早速、そのスキルを発動させて、謎の2つの飛行物体を見てみると……
「え、えぇ!?」
「ど、どうしたの? リム、そんなに驚いて」
「何が見えたんだ?」
「あ、あれ、ショーマさんと、ノアルさんですよ……」
「「……は?」」
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