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第三章 獣人国へ
#51 宴、からの騎士団
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「さて、盛り上がってきたところで、もう一つお前達に見て欲しいものがある! 存分に楽しんでくれ!」
ドレアスさんがそう言うと、集会所の中から20人程の獣人の人達がこちらまで駆け足でやってきた。
その中の半分が男性で、なにやら太鼓や笛のような楽器を持っている。
もう半分の女性の方は、薄手で所々にヒラヒラとした布が付いている踊り子のような衣装を見に纏っていた。
「……ショーマ!」
「わっ、ノアル!?」
その集団を見回していると、女性陣の中からノアルが飛び出して来て、ギュッと僕の腕にしがみついた。
近くで見ると、衣装もそうだが顔にも少し綺麗に見せるための化粧がしてある事も分かった。
「……どう? 似合う?」
「へ? あ、う、うん。 すごい似合ってるよ。 とても綺麗だと思う」
「……嬉しい。 これから踊るから、ノアルの事しっかり見てて?」
「うん、分かった。 ちゃんと見ておくね」
「……ん!」
ノアルは僕の言葉に短く返事して、女性陣の輪の中に戻っていった。
「おうおう、見せつけてくれるなぁ。 こんな大勢に加えて親の前で」
「はっ! す、すいません」
あまりにもノアルが急に来たので、その事を失念していた。
恥ずかしい……
周りを見回してみると、ニヤニヤした冒険者や恨めがましい目を向けてくる獣人達が見えたのだが、極力反応しないように努めた。
「はっはっは! 仲が良くていい事だ! ……お、準備が出来たみたいだな! それじゃ、頼むぞ! お前たち!!」
「「「オーーーー!」」」
ドレアスさんの掛け声に応えると同時に、男性陣が楽器を奏で始めた。
当然の事ながら聞いたことのない旋律だったが、不思議と体が動いてしまうような明るい曲が夜の村に響き渡る。
演奏が始まると同時に、ノアルを始めとする女性陣がクルクルと踊りながら広場の中央から一定間隔を空けて拡がっていった。
僕の目線は、言われた通りにノアルの姿をずっと追いかけている。
彼女の踊りはとても綺麗だった。
演奏に合わせて時に力強く、時に優雅に踊る姿に合わせて衣装に付いた布が動きに合わせて動くのは見惚れるほど美しい。
そういえば、彼女のステータスを見た時に舞踊のスキルを持っていたなーと、ふと思い出した。
周りの冒険者達も、ある者は男性陣の演奏に酔いしれ、ある者は女性陣の踊りに合わせて体を動かしたりと、思い思いに楽しんでいるようだ。
そして、演奏も徐々に終盤に差しかかると、拡がっていた女性陣がまた広場の中央まで戻って来て、最後には演奏のクライマックスに合わせた一糸乱れぬ動きを見せつけ、長いようで短く感じたパフォーマンスもついに終わった。
その瞬間、広場で見ていた人達からは、惜しみない拍手と歓声が上がった。
「どうだっただろうか! 本来は村の祭り事で披露するものなんだが、お前たちを労う意味も込めて披露させてもらった! さぁ、まだまだ夜は長いぞ! この村で過ごす最後の夜を存分に楽しんでいってくれ!」
ドレアスさんの声が広場に響くと、そこからは獣人もヒト種も関係なく肩を組み、手を取り、杯を交わし合いのどんちゃん騒ぎだった。
そんな中、パフォーマンスを終えた集団からノアルがこちらに駆け寄ってきた。
「……ショーマ、どうだった?」
「凄かったよ。 こんなに近くで踊りや演奏のパフォーマンスを見た事は無かったから、とても感動した」
「……ノアルの事見ててくれた?」
「うん、ずっと見てたよ。 力強くて優雅で美しかった。 また機会があれば見たいな」
「……ん、ショーマが望むならいくらでも見せる」
そう言うと、ノアルは僕の正面から抱きついてきた。
「もう、ノアルったら、衣装がシワになっちゃうし、ショーマさんも困ってるから……」
「あ、アルジェさん、お疲れ様です。 アルジェさんは踊ったりしないんですね」
「ふふ、私のような年増は流石にもう出来ませんよ。 ノアルが着ている衣装は私のお下がりですけどね」
集会所の方から歩いてきたアルジェさんがそう告げる。
自分では年増というけど、アルジェさんは全然歳を感じさせない程には若々しい。
ノアルの横に立って、姉と言われれば納得してしまうくらいには。
「……ショーマ、ちょっと待ってて。 着替えてくる」
「うん、慌てなくていいからね。 この辺りで待ってるよ」
「……ん」
「あら、それなら私も手伝わないと」
ノアルとアルジェさんはそう言うと、集会所の方へ戻っていった。
それから僕は、冒険者に混じって話をしたり、獣人の子供達に「遊んでー!」とせがまれたり、着替えを終えたノアルと時間を過ごしたりと、夜遅くまで賑やかな宴を楽しんでいた。
*
「それじゃあ、俺達は行くよ。 本当に君には感謝してもしきれない。 俺達を救ってくれてありがとう」
「いえ、僕は少し力を貸しただけですよ。 皆さんが無事だったのは皆さんの努力があったからです。 帰る道中、お気をつけて帰ってください」
どんちゃん騒ぎだった夜も明け、残っていた冒険者達がまとまって帰るそうなので、僕と村の人全員で見送りに来ている。
僕と指揮官だった冒険者さん以外にも、ここ数日で仲良くなった者達同士で別れを惜しむ人達の姿も見えた。
「冒険者達よ! 本当に感謝するぞ! またこの村の近くに来た時にはぜひ寄ってくれ! お前たちなら大歓迎だ!」
ドレアスさんも大声で冒険者達に別れを告げる。
「君なら、もっとランクを上げて活躍出来るだろう。 その時にまた会える事を願っているよ」
「はい、いつか一緒に依頼を受けたりしましょう」
「ああ、それじゃあな」
僕は最後に指揮官だった冒険者さんと固く握手を交わして、その背中を見送った。
その姿が見えなくなるまで皆、手を振り、感謝の言葉をかけ続けた。
冒険者の見送りが終わると、皆それぞれの仕事をするために村の中に戻っていった。
「ショーマ、お前さんはまだ残るのか?」
「そうですね、僕も今日戻ろうかと思ったんですが、ノアルにまだ病み上がりだろうと言われて止められました。 だから明日に帰ることにします。 今日の内に騎士団の方達が来れば、村の防衛も問題ないでしょうし」
「そうか。 騎士団がいなくとも、お前さんがいてくれりゃいいんだかなぁ……」
「あはは、僕がいるよりも騎士団の方達の方が頼りになりますよ」
「うーむ…… そうかもしれないがなぁ……」
昨日からドレアスさんの騎士団に対する態度に暗いものが見える。
何か問題でもあるのだろうか?
「……ショーマ、今日はどうする?」
「今日もこの村の復興を手伝うよ。 少し体も動かしたいし」
「……無理はしないでね」
「もちろん、分かってるよ」
「復興って、なにをするんだ?」
「そうですね…… 昨日、村を大体見て周った時に、外壁というか、村の周りを囲っていたであろう柵が壊れていたので、その修理をしようかと。 ちょっと派手になるかもしれないですが、いいですか?」
「まぁ、直してくれるならありがたいが…… 1人でやるのか?」
「はい。 それに、恐らく時間もかからないかと」
「……なにするつもり?」
「まぁ、見てて?」
僕は、地面に両手をつき、鍛冶師のスキルである鉱物支配を発動させる。
イメージするのは、網目の細かいフェンスのようなもので、村を囲うように、地面自体を変化させていく。
「うおぉ!? なんだなんだ!?」
「……これは、ショーマのスキル?」
「ショーマの!? あのスキルは武器を作るためのもんじゃないのか?」
僕も今まではそういった使い方しかしてこなかったが、そもそも鉱物支配のスキルは鉱物を好きな形に操作する事が出来るものだから、土で出来た地面なら自由自在に形を変えられるのだ。
その事には、この村に来る途中の野宿で色々と検証している時に気付いた。
流石に形を変えるスピードはそこまで早くはないので、戦闘などでは使えないだろうが。
それに、これも同じ時に気付いたのだが、鉱物支配のスキルを使う時の消費魔力は、ただの土を操作する時には、非常に小さく済むみたいだ。
ちなみに、効果付与の消費魔力も素材によるみたいで、試しに土に付与してみても、使った魔力は微々たるものだった。
だから、この村を全て囲う柵を作って効果付与したとしても、僕の総魔力の5分の1も使わないだろう。
流石に目に見えない範囲は効果の発動範囲外なので、この作業をあと何回かしなくてはいけないが。
「よし、こんな感じかな」
元の柵は、村の四方に通れる道を作る形で配置されていたので僕が作る柵も同じような作りにして、高さは2mないくらいにしておいた。
「ドレアスさん、この作業をあと何回かしていきたいんですが…… って、どうしたんですか?」
「……いや、なんかこう、驚きを通り越して呆れてしまってな」
「あー、すいません。 口で説明するより見てもらった方が早いと思いまして」
「まぁ、ありがたい事には間違いないが、こんな大規模な地形変化をさせて大丈夫なのか? 主にお前さんの魔力的に」
「……また、無理してる?」
「いえ、その点に関してはご心配なく。 鉄とかの形を変えるのと違って、ただの土の形を変えるくらいなら大した量の魔力は使っていないので」
「そうか、お前さんが良ければ引き続き頼みたいんだが、いいか?」
「任せてください」
*
僕はその後も村の周辺に柵を作り続け、ついでに3つの付与ができたので、耐久値上昇、魔法防御力上昇、物理防御力上昇の付与も付けておいた。
その事をドレアスさんと、途中からこちらに来たアルジェさんに伝えたところ、「「……規格外だな(ですね)」」と言われた。
まぁ、その事については否定はしないが、今回はノアルの故郷のためだったので、僕も出来る限りの事をしようと思っただけだ。
ダダッ ダダッ ダダッ……!
と、柵を完成させたところで、こちらに向かって数匹の馬が駆けてくる音が聞こえてきた。
そちらに目線を向けてみると、3匹の馬とそれに乗った同じ鎧を着込んだ獣人の人達がこちらに来ているのが見えた。
その人達は、僕らの手前で馬を止めると、馬から降り、こちらまで走ってきた。
「我々はアラサド第一騎士団だ! この村の救援に来たのだが…… 先程この村の周辺に突然現れたこの柵はなんだ!?」
あ、すいません。 それ作ったの僕です……
ドレアスさんがそう言うと、集会所の中から20人程の獣人の人達がこちらまで駆け足でやってきた。
その中の半分が男性で、なにやら太鼓や笛のような楽器を持っている。
もう半分の女性の方は、薄手で所々にヒラヒラとした布が付いている踊り子のような衣装を見に纏っていた。
「……ショーマ!」
「わっ、ノアル!?」
その集団を見回していると、女性陣の中からノアルが飛び出して来て、ギュッと僕の腕にしがみついた。
近くで見ると、衣装もそうだが顔にも少し綺麗に見せるための化粧がしてある事も分かった。
「……どう? 似合う?」
「へ? あ、う、うん。 すごい似合ってるよ。 とても綺麗だと思う」
「……嬉しい。 これから踊るから、ノアルの事しっかり見てて?」
「うん、分かった。 ちゃんと見ておくね」
「……ん!」
ノアルは僕の言葉に短く返事して、女性陣の輪の中に戻っていった。
「おうおう、見せつけてくれるなぁ。 こんな大勢に加えて親の前で」
「はっ! す、すいません」
あまりにもノアルが急に来たので、その事を失念していた。
恥ずかしい……
周りを見回してみると、ニヤニヤした冒険者や恨めがましい目を向けてくる獣人達が見えたのだが、極力反応しないように努めた。
「はっはっは! 仲が良くていい事だ! ……お、準備が出来たみたいだな! それじゃ、頼むぞ! お前たち!!」
「「「オーーーー!」」」
ドレアスさんの掛け声に応えると同時に、男性陣が楽器を奏で始めた。
当然の事ながら聞いたことのない旋律だったが、不思議と体が動いてしまうような明るい曲が夜の村に響き渡る。
演奏が始まると同時に、ノアルを始めとする女性陣がクルクルと踊りながら広場の中央から一定間隔を空けて拡がっていった。
僕の目線は、言われた通りにノアルの姿をずっと追いかけている。
彼女の踊りはとても綺麗だった。
演奏に合わせて時に力強く、時に優雅に踊る姿に合わせて衣装に付いた布が動きに合わせて動くのは見惚れるほど美しい。
そういえば、彼女のステータスを見た時に舞踊のスキルを持っていたなーと、ふと思い出した。
周りの冒険者達も、ある者は男性陣の演奏に酔いしれ、ある者は女性陣の踊りに合わせて体を動かしたりと、思い思いに楽しんでいるようだ。
そして、演奏も徐々に終盤に差しかかると、拡がっていた女性陣がまた広場の中央まで戻って来て、最後には演奏のクライマックスに合わせた一糸乱れぬ動きを見せつけ、長いようで短く感じたパフォーマンスもついに終わった。
その瞬間、広場で見ていた人達からは、惜しみない拍手と歓声が上がった。
「どうだっただろうか! 本来は村の祭り事で披露するものなんだが、お前たちを労う意味も込めて披露させてもらった! さぁ、まだまだ夜は長いぞ! この村で過ごす最後の夜を存分に楽しんでいってくれ!」
ドレアスさんの声が広場に響くと、そこからは獣人もヒト種も関係なく肩を組み、手を取り、杯を交わし合いのどんちゃん騒ぎだった。
そんな中、パフォーマンスを終えた集団からノアルがこちらに駆け寄ってきた。
「……ショーマ、どうだった?」
「凄かったよ。 こんなに近くで踊りや演奏のパフォーマンスを見た事は無かったから、とても感動した」
「……ノアルの事見ててくれた?」
「うん、ずっと見てたよ。 力強くて優雅で美しかった。 また機会があれば見たいな」
「……ん、ショーマが望むならいくらでも見せる」
そう言うと、ノアルは僕の正面から抱きついてきた。
「もう、ノアルったら、衣装がシワになっちゃうし、ショーマさんも困ってるから……」
「あ、アルジェさん、お疲れ様です。 アルジェさんは踊ったりしないんですね」
「ふふ、私のような年増は流石にもう出来ませんよ。 ノアルが着ている衣装は私のお下がりですけどね」
集会所の方から歩いてきたアルジェさんがそう告げる。
自分では年増というけど、アルジェさんは全然歳を感じさせない程には若々しい。
ノアルの横に立って、姉と言われれば納得してしまうくらいには。
「……ショーマ、ちょっと待ってて。 着替えてくる」
「うん、慌てなくていいからね。 この辺りで待ってるよ」
「……ん」
「あら、それなら私も手伝わないと」
ノアルとアルジェさんはそう言うと、集会所の方へ戻っていった。
それから僕は、冒険者に混じって話をしたり、獣人の子供達に「遊んでー!」とせがまれたり、着替えを終えたノアルと時間を過ごしたりと、夜遅くまで賑やかな宴を楽しんでいた。
*
「それじゃあ、俺達は行くよ。 本当に君には感謝してもしきれない。 俺達を救ってくれてありがとう」
「いえ、僕は少し力を貸しただけですよ。 皆さんが無事だったのは皆さんの努力があったからです。 帰る道中、お気をつけて帰ってください」
どんちゃん騒ぎだった夜も明け、残っていた冒険者達がまとまって帰るそうなので、僕と村の人全員で見送りに来ている。
僕と指揮官だった冒険者さん以外にも、ここ数日で仲良くなった者達同士で別れを惜しむ人達の姿も見えた。
「冒険者達よ! 本当に感謝するぞ! またこの村の近くに来た時にはぜひ寄ってくれ! お前たちなら大歓迎だ!」
ドレアスさんも大声で冒険者達に別れを告げる。
「君なら、もっとランクを上げて活躍出来るだろう。 その時にまた会える事を願っているよ」
「はい、いつか一緒に依頼を受けたりしましょう」
「ああ、それじゃあな」
僕は最後に指揮官だった冒険者さんと固く握手を交わして、その背中を見送った。
その姿が見えなくなるまで皆、手を振り、感謝の言葉をかけ続けた。
冒険者の見送りが終わると、皆それぞれの仕事をするために村の中に戻っていった。
「ショーマ、お前さんはまだ残るのか?」
「そうですね、僕も今日戻ろうかと思ったんですが、ノアルにまだ病み上がりだろうと言われて止められました。 だから明日に帰ることにします。 今日の内に騎士団の方達が来れば、村の防衛も問題ないでしょうし」
「そうか。 騎士団がいなくとも、お前さんがいてくれりゃいいんだかなぁ……」
「あはは、僕がいるよりも騎士団の方達の方が頼りになりますよ」
「うーむ…… そうかもしれないがなぁ……」
昨日からドレアスさんの騎士団に対する態度に暗いものが見える。
何か問題でもあるのだろうか?
「……ショーマ、今日はどうする?」
「今日もこの村の復興を手伝うよ。 少し体も動かしたいし」
「……無理はしないでね」
「もちろん、分かってるよ」
「復興って、なにをするんだ?」
「そうですね…… 昨日、村を大体見て周った時に、外壁というか、村の周りを囲っていたであろう柵が壊れていたので、その修理をしようかと。 ちょっと派手になるかもしれないですが、いいですか?」
「まぁ、直してくれるならありがたいが…… 1人でやるのか?」
「はい。 それに、恐らく時間もかからないかと」
「……なにするつもり?」
「まぁ、見てて?」
僕は、地面に両手をつき、鍛冶師のスキルである鉱物支配を発動させる。
イメージするのは、網目の細かいフェンスのようなもので、村を囲うように、地面自体を変化させていく。
「うおぉ!? なんだなんだ!?」
「……これは、ショーマのスキル?」
「ショーマの!? あのスキルは武器を作るためのもんじゃないのか?」
僕も今まではそういった使い方しかしてこなかったが、そもそも鉱物支配のスキルは鉱物を好きな形に操作する事が出来るものだから、土で出来た地面なら自由自在に形を変えられるのだ。
その事には、この村に来る途中の野宿で色々と検証している時に気付いた。
流石に形を変えるスピードはそこまで早くはないので、戦闘などでは使えないだろうが。
それに、これも同じ時に気付いたのだが、鉱物支配のスキルを使う時の消費魔力は、ただの土を操作する時には、非常に小さく済むみたいだ。
ちなみに、効果付与の消費魔力も素材によるみたいで、試しに土に付与してみても、使った魔力は微々たるものだった。
だから、この村を全て囲う柵を作って効果付与したとしても、僕の総魔力の5分の1も使わないだろう。
流石に目に見えない範囲は効果の発動範囲外なので、この作業をあと何回かしなくてはいけないが。
「よし、こんな感じかな」
元の柵は、村の四方に通れる道を作る形で配置されていたので僕が作る柵も同じような作りにして、高さは2mないくらいにしておいた。
「ドレアスさん、この作業をあと何回かしていきたいんですが…… って、どうしたんですか?」
「……いや、なんかこう、驚きを通り越して呆れてしまってな」
「あー、すいません。 口で説明するより見てもらった方が早いと思いまして」
「まぁ、ありがたい事には間違いないが、こんな大規模な地形変化をさせて大丈夫なのか? 主にお前さんの魔力的に」
「……また、無理してる?」
「いえ、その点に関してはご心配なく。 鉄とかの形を変えるのと違って、ただの土の形を変えるくらいなら大した量の魔力は使っていないので」
「そうか、お前さんが良ければ引き続き頼みたいんだが、いいか?」
「任せてください」
*
僕はその後も村の周辺に柵を作り続け、ついでに3つの付与ができたので、耐久値上昇、魔法防御力上昇、物理防御力上昇の付与も付けておいた。
その事をドレアスさんと、途中からこちらに来たアルジェさんに伝えたところ、「「……規格外だな(ですね)」」と言われた。
まぁ、その事については否定はしないが、今回はノアルの故郷のためだったので、僕も出来る限りの事をしようと思っただけだ。
ダダッ ダダッ ダダッ……!
と、柵を完成させたところで、こちらに向かって数匹の馬が駆けてくる音が聞こえてきた。
そちらに目線を向けてみると、3匹の馬とそれに乗った同じ鎧を着込んだ獣人の人達がこちらに来ているのが見えた。
その人達は、僕らの手前で馬を止めると、馬から降り、こちらまで走ってきた。
「我々はアラサド第一騎士団だ! この村の救援に来たのだが…… 先程この村の周辺に突然現れたこの柵はなんだ!?」
あ、すいません。 それ作ったの僕です……
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