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第二章 新たな出会い
#36 不穏な影
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「どう? ノアル?」
「……いい匂い」
オーブンに入れて25分、パンの耳で作ったシュガーラスクが完成した。
うん、しっかり出来てるね。
ちなみに、その25分は何をやっていたかと言うと、僕はサンドイッチの具材作り、ノアルにはサンドイッチに挟む野菜を切ることと、マヨネーズを作ってもらっていた。
マヨネーズを作るためにハンドミキサーがあれば良かったのだが、そんなものは無く、泡立て器しか無かった。
まぁ、泡立て器でも頑張れば作れるし、ノアルなら腕が疲れて動かせないみたいな事にもならないと思ったので、僕が作業をしながら教えて、作ってもらった。
そしたらまぁ、何も問題は無く、1番大変な油を少しずつ入れてかき混ぜる作業も、ハンドミキサーの如きスピードで混ぜてくれた。
そんな作業をしていたノアルの傍らで僕は何をしていたかと言うと、家事スキルの限界に挑戦していた。
何を言っているか分からないかもしれないが、大事なことである。
さっきシチューを作った時に、地球で料理していた時よりも明らかに手際が良いことに気づいたので、いい機会だし検証することにしたのだ。
検証方法としては、オーク、フーミ鳥、爪熊の調理を同時にやってみるというものだ。
少しずつ時間をずらせば不可能ではないと思う。
ただ、少しでももたついたりしたら、焦げてしまったり、出来上がりが悪くなってしまったりするだろう。
ちなみに何を作るかと言うと、オーク肉は生姜焼き、フーミ鳥は照り焼き、爪熊は薄切りにして焼き肉サンドにするつもりだ。
ノアルに作ってもらったマヨネーズは焼き肉サンドに使うつもりである。
生姜焼きは香辛料屋さんに生姜が売っていたので作ることにしたのと、照り焼きに使うみりんは売ってなかったのだが、料理酒に砂糖を加えればみりんもどきにはなるのでそれで作る。
なの、で照り焼きもどきと言った方が正しいかもしれない。
まぁ、細かい事は気にせず作ってみたところ、特に問題無く3品とも作る事が出来た。
家事スキルの補正のおかげなのは間違いなく、説明は難しいのだが、頭で次の行程を思い浮かべるのと同時に体も動くような感じだった。
側で見ていたノアル曰く、「……戦闘時と同じくらいのスピードだった」らしい。
こうして、シュガーラスクを焼いている間にサンドイッチもある程度完成させる事ができた。
あとはたまごサンドと野菜サンドをいくつか作って終わりかな。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん何作ってるんですかー?」
「あら、いい匂いがしますね」
と思ってたら、厨房の入口から声がかけられた。
「あ、ララさん。 夕食の準備でしょうか?」
「ああ、いえ、お気になさらず。 まだ時間に余裕はあるので大丈夫ですよ。 いい匂いがしたもので、少し気になってミラルと一緒に見に来ちゃいました」
「そうでしたか」
「お兄ちゃん、なんだか甘くていい匂いがします!」
「ああ、多分これだね。 今焼き上がったばかりだから」
「ショーマさん、これは……?」
「パンの耳を使ったシュガーラスクです。 サンドイッチを作った時に余ったので作ってみました。 沢山あるので食べてみますか?」
「いいの?」「いいんですか?」
「どうぞどうぞ」
ララさんとミラルちゃんはシュガーラスクを一つ取って口に運んだ。
僕らも味見はまだなので、一緒に1つ食べてみることにした。
「美味しい!」
「これは、食べやすいですね…… 何個でも食べれちゃいそう」
「……甘いし、なんか変わった風味もある」
「うん、上手く出来てるね」
地球で作ったものとなんら変わらないものが出来て良かった。
なんならこっちの食材で作った方が美味しいかもしれない。
「ショーマさん、この変わった風味はなんですか?」
「シナモンですね。 市場の香辛料屋さんに売っていたので使ってみました」
「シナモンですか! こういう風味がするんですね……」
「あんまりこの辺りでは香辛料とか使わないんですか?」
「そうですね。 うちの宿ではあまり使わない事にしてます。 やっぱり、香辛料って好みが分かれるものなので」
「なるほど、確かにそうですね」
その後も、厨房にあった色々な料理を見たララさんに根掘り葉掘り質問され、僕はそれに答える機械になっていた。
やっぱり、ララさんも料理好きらしく、見たことないものを味見しては僕に作り方を聞いて、それを紙にメモしていた。
ちなみにその間、ミラルちゃんはノアルと遊んでいた。
それにしても、マヨネーズを知らなかったのはちょっと意外だったな。
この世界では、あんまり調味料とかは開発されてなかったりするのかな?
基本的なものはあったんだけど。
まぁ恐らく、肉も野菜も地球のものに比べると、元々の旨味がかなり高く、シンプルな味付けで充分美味しくいただけるから、みりんやマヨネーズなどといったものが作られなかったのかな?
なんて思ったりもしたのだが、本当のところはさっぱり分からない。
「なるほど…… ショーマさんの故郷は食文化が発展していたんですね。 それに、それをしっかりと作れるショーマさんの技術も凄いと思います」
「参考になったのなら良かったです。 いやいや、僕なんて大したことないですよ。 ララさんの料理の方が色々と考えられているので、良いと思いますよ」
「そう言ってもらえると素直に嬉しいですね。 また、話を聞かせてもらってもいいですか?」
「はい、獣人国から帰ったら、また泊まりに来るので、その時にでも話しましょう」
ララさんに一通り僕が今作ったものの知識は教えたので、作り終えたものをアイテムボックスにしまっていく。
結局楽しくて、5日は余裕で持ちそうなくらいの量を作ってしまった。
まぁ、あるぶんには困らないから良しとしよう。
「それじゃあ、私達は皆さんの晩ご飯の用意をしますね。 ミラル、手伝ってくれる?」
「あ、はーい! ノアルお姉ちゃんまたね! ショーマお兄ちゃん、料理美味しかった! ありがとー!」
「……ん、またね」
「僕もお手伝いしましょうか?」
「いえいえ、いいんです。 ショーマさん達はゆっくりしていてください」
「そうですか。 それじゃお言葉に甘えて」
実際、ちょっと疲れたし、休ませてもらおう。
明日に疲れを残す訳にはいかないしね。
*
「そういや、ショーマ達は明日から獣人国に行くんだよな?」
「そうですね、明日の朝一に馬車に乗って行くつもりです」
「何度も言うが気を付けろよ? 遠出では何が起こるか分からないからな。 まぁ、お前は元々旅人だったから、慣れっこかもしれんがな」
「え? あ、あぁ、そうですね」
少し休んだ後、食事の時間になり、ゲイルさんと話している中で、そういえばそんな設定だったなと、今になって思い出した。
「特に森には用心しとけよ。 ……あと、これはなるべく秘密にしとけって言われたんだが、お前らには言っておくぞ」
「……なんでしょうか?」
ゲイルさんは周りに聞いている人がいないか、確認をして、小声で僕達に内容を話す。
「……森の異変なんだが、どうにも人為的に起こされているみたいだ」
「それは…… どういうことですか?」
「一週間前くらいに、ダンジョンに行った獣人のパーティーが戻ってきてな。 戻ってくるまでの森の中で、怪しい人間が複数人まとまって、なにやら魔物に指示を出していたのを見たそうだ」
「え、魔物と会話とかって出来るんですか?」
「いや、普通は出来ないはずだ。 中には人語を理解するくらい賢い個体もいるが。 そんで、見過ごす事も出来ずに接触を試みたら連中、それはもう全力で逃げたらしく、捕まえる事は出来なかったそうだ。 が、魔物の方はしっかり倒して、この街まで持って帰ってきてくれたよ」
「そんな事があったんですか……」
「まだ終わりじゃねえぞ? その魔物なんだが、首に魔道具を付けててな。 ミリーが鑑定してみたら、魔物を隷属化させて、無理やり言う事を聞かせる事が出来るっていう代物だったんだ」
「それ、まずくないですか?」
「ああ、まずいな。 これからギルドも色んな手段で出所を探るらしい。 だから、森を抜けるとなるともしかしたらそういうのに遭遇するかもしれないから、気は抜かない方がいいぞ」
「分かりました。 ご忠告ありがとうございます」
ここに来て、獣人国に行くにあたっての懸念点が一つ増えてしまった。
気を引き締めて行かないとな。
「……いい匂い」
オーブンに入れて25分、パンの耳で作ったシュガーラスクが完成した。
うん、しっかり出来てるね。
ちなみに、その25分は何をやっていたかと言うと、僕はサンドイッチの具材作り、ノアルにはサンドイッチに挟む野菜を切ることと、マヨネーズを作ってもらっていた。
マヨネーズを作るためにハンドミキサーがあれば良かったのだが、そんなものは無く、泡立て器しか無かった。
まぁ、泡立て器でも頑張れば作れるし、ノアルなら腕が疲れて動かせないみたいな事にもならないと思ったので、僕が作業をしながら教えて、作ってもらった。
そしたらまぁ、何も問題は無く、1番大変な油を少しずつ入れてかき混ぜる作業も、ハンドミキサーの如きスピードで混ぜてくれた。
そんな作業をしていたノアルの傍らで僕は何をしていたかと言うと、家事スキルの限界に挑戦していた。
何を言っているか分からないかもしれないが、大事なことである。
さっきシチューを作った時に、地球で料理していた時よりも明らかに手際が良いことに気づいたので、いい機会だし検証することにしたのだ。
検証方法としては、オーク、フーミ鳥、爪熊の調理を同時にやってみるというものだ。
少しずつ時間をずらせば不可能ではないと思う。
ただ、少しでももたついたりしたら、焦げてしまったり、出来上がりが悪くなってしまったりするだろう。
ちなみに何を作るかと言うと、オーク肉は生姜焼き、フーミ鳥は照り焼き、爪熊は薄切りにして焼き肉サンドにするつもりだ。
ノアルに作ってもらったマヨネーズは焼き肉サンドに使うつもりである。
生姜焼きは香辛料屋さんに生姜が売っていたので作ることにしたのと、照り焼きに使うみりんは売ってなかったのだが、料理酒に砂糖を加えればみりんもどきにはなるのでそれで作る。
なの、で照り焼きもどきと言った方が正しいかもしれない。
まぁ、細かい事は気にせず作ってみたところ、特に問題無く3品とも作る事が出来た。
家事スキルの補正のおかげなのは間違いなく、説明は難しいのだが、頭で次の行程を思い浮かべるのと同時に体も動くような感じだった。
側で見ていたノアル曰く、「……戦闘時と同じくらいのスピードだった」らしい。
こうして、シュガーラスクを焼いている間にサンドイッチもある程度完成させる事ができた。
あとはたまごサンドと野菜サンドをいくつか作って終わりかな。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん何作ってるんですかー?」
「あら、いい匂いがしますね」
と思ってたら、厨房の入口から声がかけられた。
「あ、ララさん。 夕食の準備でしょうか?」
「ああ、いえ、お気になさらず。 まだ時間に余裕はあるので大丈夫ですよ。 いい匂いがしたもので、少し気になってミラルと一緒に見に来ちゃいました」
「そうでしたか」
「お兄ちゃん、なんだか甘くていい匂いがします!」
「ああ、多分これだね。 今焼き上がったばかりだから」
「ショーマさん、これは……?」
「パンの耳を使ったシュガーラスクです。 サンドイッチを作った時に余ったので作ってみました。 沢山あるので食べてみますか?」
「いいの?」「いいんですか?」
「どうぞどうぞ」
ララさんとミラルちゃんはシュガーラスクを一つ取って口に運んだ。
僕らも味見はまだなので、一緒に1つ食べてみることにした。
「美味しい!」
「これは、食べやすいですね…… 何個でも食べれちゃいそう」
「……甘いし、なんか変わった風味もある」
「うん、上手く出来てるね」
地球で作ったものとなんら変わらないものが出来て良かった。
なんならこっちの食材で作った方が美味しいかもしれない。
「ショーマさん、この変わった風味はなんですか?」
「シナモンですね。 市場の香辛料屋さんに売っていたので使ってみました」
「シナモンですか! こういう風味がするんですね……」
「あんまりこの辺りでは香辛料とか使わないんですか?」
「そうですね。 うちの宿ではあまり使わない事にしてます。 やっぱり、香辛料って好みが分かれるものなので」
「なるほど、確かにそうですね」
その後も、厨房にあった色々な料理を見たララさんに根掘り葉掘り質問され、僕はそれに答える機械になっていた。
やっぱり、ララさんも料理好きらしく、見たことないものを味見しては僕に作り方を聞いて、それを紙にメモしていた。
ちなみにその間、ミラルちゃんはノアルと遊んでいた。
それにしても、マヨネーズを知らなかったのはちょっと意外だったな。
この世界では、あんまり調味料とかは開発されてなかったりするのかな?
基本的なものはあったんだけど。
まぁ恐らく、肉も野菜も地球のものに比べると、元々の旨味がかなり高く、シンプルな味付けで充分美味しくいただけるから、みりんやマヨネーズなどといったものが作られなかったのかな?
なんて思ったりもしたのだが、本当のところはさっぱり分からない。
「なるほど…… ショーマさんの故郷は食文化が発展していたんですね。 それに、それをしっかりと作れるショーマさんの技術も凄いと思います」
「参考になったのなら良かったです。 いやいや、僕なんて大したことないですよ。 ララさんの料理の方が色々と考えられているので、良いと思いますよ」
「そう言ってもらえると素直に嬉しいですね。 また、話を聞かせてもらってもいいですか?」
「はい、獣人国から帰ったら、また泊まりに来るので、その時にでも話しましょう」
ララさんに一通り僕が今作ったものの知識は教えたので、作り終えたものをアイテムボックスにしまっていく。
結局楽しくて、5日は余裕で持ちそうなくらいの量を作ってしまった。
まぁ、あるぶんには困らないから良しとしよう。
「それじゃあ、私達は皆さんの晩ご飯の用意をしますね。 ミラル、手伝ってくれる?」
「あ、はーい! ノアルお姉ちゃんまたね! ショーマお兄ちゃん、料理美味しかった! ありがとー!」
「……ん、またね」
「僕もお手伝いしましょうか?」
「いえいえ、いいんです。 ショーマさん達はゆっくりしていてください」
「そうですか。 それじゃお言葉に甘えて」
実際、ちょっと疲れたし、休ませてもらおう。
明日に疲れを残す訳にはいかないしね。
*
「そういや、ショーマ達は明日から獣人国に行くんだよな?」
「そうですね、明日の朝一に馬車に乗って行くつもりです」
「何度も言うが気を付けろよ? 遠出では何が起こるか分からないからな。 まぁ、お前は元々旅人だったから、慣れっこかもしれんがな」
「え? あ、あぁ、そうですね」
少し休んだ後、食事の時間になり、ゲイルさんと話している中で、そういえばそんな設定だったなと、今になって思い出した。
「特に森には用心しとけよ。 ……あと、これはなるべく秘密にしとけって言われたんだが、お前らには言っておくぞ」
「……なんでしょうか?」
ゲイルさんは周りに聞いている人がいないか、確認をして、小声で僕達に内容を話す。
「……森の異変なんだが、どうにも人為的に起こされているみたいだ」
「それは…… どういうことですか?」
「一週間前くらいに、ダンジョンに行った獣人のパーティーが戻ってきてな。 戻ってくるまでの森の中で、怪しい人間が複数人まとまって、なにやら魔物に指示を出していたのを見たそうだ」
「え、魔物と会話とかって出来るんですか?」
「いや、普通は出来ないはずだ。 中には人語を理解するくらい賢い個体もいるが。 そんで、見過ごす事も出来ずに接触を試みたら連中、それはもう全力で逃げたらしく、捕まえる事は出来なかったそうだ。 が、魔物の方はしっかり倒して、この街まで持って帰ってきてくれたよ」
「そんな事があったんですか……」
「まだ終わりじゃねえぞ? その魔物なんだが、首に魔道具を付けててな。 ミリーが鑑定してみたら、魔物を隷属化させて、無理やり言う事を聞かせる事が出来るっていう代物だったんだ」
「それ、まずくないですか?」
「ああ、まずいな。 これからギルドも色んな手段で出所を探るらしい。 だから、森を抜けるとなるともしかしたらそういうのに遭遇するかもしれないから、気は抜かない方がいいぞ」
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