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第二章 新たな出会い

#34 準備(2)

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 食材を買い終えた僕達は同じ市場にある、以前鉱石屋があった場所に来ていた。

 あったらいいなという程度の願いだったが、そこには以前と同じ店主に佇まいの屋台があった。

 
「おはようございます」
 
「おう、いらっしゃい……って、この前の兄ちゃんじゃねぇか!」
 
「ご無沙汰してます。 今は営業中ですか?」
 
「ああ、もちろんだ。 なんか買ってくかい? うちの商品は量も質もしっかりしてるぜ!」
 

 少し世間話もしつつ、鉱石を一通り見ていく。

 ちなみにこの人はジストンさんと言うそうだ。 

 今後もお世話になるかもしれないので、名前を聞いておく事にした。

 取り敢えず、鉄鉱石を金貨2枚分買う事にする。

 量で言うと、僕が使っているロングソードを合成、分離を使って5本作れるくらいだ。 

 そういえば、地球では鉄鉱石ってどのくらいの値段なんだろうか? 

 20000円分と考えると、結構今買った量はお得な気がするのだが、聞いてみるか。
 

「そういえば、鉱石とかってどこから仕入れてるんですか? あ、もちろん言いたくなかったら結構ですよ」
 
「いや、別に言っても問題はないぞ。 鉄鉱石とか銀とか金、珍しいところだとミスリルはそれぞれの鉱山から採掘出来るから、その辺りから仕入れてるぞ。 ただ、鉱山だけじゃなくてダンジョンからも鉱石は入手できて、そこでは鉄鉱石とかも取れるが、魔石関連も採掘出来るから、そういうのが取れるダンジョンは重宝されてるぜ」

「そうなんですね。 このお店だけでもかなりの量と種類ありますけど、枯渇したりしないんですか?」
 
「鉱山は枯渇する事もないことはないが、ダンジョンの鉱石が枯渇したって話は聞いたことないな。 それに、そういうダンジョンには、魔物の鉄やらミスリルとかで出来たゴーレムもいるらしいから、この世界から鉱石が無くなるなんて事はないんじゃないか?」
 

 鉄で出来たゴーレムなんているのか、ひょっとしたらダイヤモンドで出来たゴーレムとかもいるのだろうか? 

 地球で出たら争いが起きそうだな。
 

「なるほど、いい事を聞かせてもらいました。 ところで、この鉱石はなんですか?」
 
「それは浮空石だな。 魔力を込めると宙に浮くんだよ」

 
 ジストンさんはそう言うと、浮空石を手に取り魔力を流して宙に浮かせた。 

 おぉー、本当に浮いてる。
 

「こんな感じで魔力を操作すれば上下左右に割と自在に動かせるぞ。 魔力を込めた量で飛ばせる時間が増えるが、俺みたいな一般人の魔力量だと、全力で魔力を込めても10分くらいが限界だな」
 
「面白いですね。 用途としてはどんなものがあるんですか?」
 
「それがなー、この鉱石が発見されたのはつい最近で、まだこれといった使い道は発見されてないんだよ。 武器にするにしても鉄より脆いし、仮に武器にしたとしても、動かすのにはそれなりの魔力がいるから、魔法使いじゃないととてもじゃないが使えない。 魔法使いも使うなら杖で十分って感じでなぁ」

「あー、そうなんですね?」

「魔道国家の研究者や鉱山国家のドワーフが試行錯誤するために大量に買うが、最近見つけられたダンジョンでそれ以上の量が採れるもんで、需要が追いついてなくて売れ残っているのが現状だな」
 

 武器として使えない、か……

 本当にそうなんだろうか? 

 この鉱石を見て僕の中では色々とアイデアが浮かんできたんだけどな。 

 浮空石だけに。
 

「ジストンさん、その浮空石買いたいんですけど、おいくらですか?」
 
「お、なんだ興味が出たのか? 兄ちゃんは相変わらず用途が無いようなもんばっかり欲しがるなぁ。 値段は鉄鉱石の半分でいいぜ。 ここには、さっき兄ちゃんが買った鉄鉱石の半分くらいあるが、全部買うのか?」
 
「はい、買わせてもらいます。 あ、こっちの鉱石はなんですか?」
 
「それは色石つって、主にアクセサリーとかに使われるもんだな。 これも買うかい?」
 
「んー、それでは、1つずつください」
 
「それなら、浮空石と合わせて銀貨7枚でいいぞ!」
 

 僕はお金を払い、かなりの量の浮空石と色石を手に入れた。 

 ちなみに色石は、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色だ。 

 武器の色付けとか出来ないかなーと思い、買ってみた。 

 分離スキルで色素が強い部分だけ分離させて、武器に合成すればいい感じになりそうな気がする。

 今の綺麗な銀色の武器も悪くは無いが、やっぱりサブカル的なカラフルな武器にはちょっと憧れがあったりするのだ。
 

「まいど! 何に使うかは知らないが、なんか面白そうなもんが出来たら見せてくれよ! そんでもって、またうちの店で色々と買ってくれ!」
 
「分かりました。 また来ますね」
 

 そう最後に言って、僕はジストンさんと別れた。 

 ノアルは僕が鉱石屋を見ている間、反対の通りにある店を見ていると言っていたので、そこにいるだろう……

 お、いたいた。

 ノアルに近づくと、彼女は何やら熱心に商品を見ていた。 

 僕の接近に気付かないくらいに。
 

「何か、気に入ったものあった?」
 
「!? ……びっくりした」
 
「あはは、ごめんごめん。 何かすごい熱心に見てたね? 気に入ったの?」
 
「……綺麗だから見てた。 ……けど、ちょっと高い」
 

 僕も見てみると、確かに綺麗な色や形状をしている指輪やネックレスやブローチなどなどが沢山並べられていた。

 その中でも、ノアルは指輪を見ていたみたいだ。 

 やっぱり女の子だから、綺麗なものとかには惹かれるんだろうなー。

 でも、確かに少し値が張るものばかりだ。 

 とても質が良さそうではあるから、妥当な値段だとは思うが。
 

「……ショーマは終わった?」
 
「うん、待たせてごめんね? ノアルは何か買う?」
 
「……大丈夫。 ……次は道具屋?」
 
「そうだね。 それじゃあ、行こうか」
 
「……ん」
 


     *


 
 僕達は通りを抜け、少し歩いたところにある道具屋に来ていた。 

 かなり大きい店舗で、2階にも商品が売られているみたいだ。
 

「いらっしゃいませ。 冒険者の方ですか?」
 

 店に入るとすぐに若い女性の店員さんが声をかけて来た。
 

「はい、そうです。 明日から遠出しようと思っているので、色々と揃えたいと思って来ました」
 
「そうですか。 こちらに店内の見取り図があるので、お目当ての品を探す参考になさってください。 なにかご不明な点がございましたら、私どもに声を掛けてくだされば、いつでも対応いたします」
 
「ご丁寧にありがとうございます。 色々と見させてもらいますね」
 
「はい。 どうぞごゆっくり」

 
 うん、いい店だな。 

 店員さんの対応然り、店内の雰囲気もいい感じだ。
 

「それじゃあ、色々と見て回ろうか。 ノアルも何か気になる事とか欲しいものとかあったら教えてね?」
 
「……ん、了解」
 

 僕達は店内を歩き回り、必要なものを揃えていく。

 毛布やタオル、鍋やフライパンにスプーンやフォーク、大小様々なお皿などから、寝袋や雨を凌ぐための組み立て式の屋根みたいなものまで売っていたので、それらをまとめて購入する事にした。

 屋根に関しては、僕も作れるかもしれないが、作るのに沢山の材料がいるだろうし、大きい物を作るとなると、それなりの魔力を必要とするだろうからという事で、値段も手軽だったため購入した。

 あと、衣服の修繕用に無地の布を何色かと、地球で見たような裁縫道具を一式買っておいた。 

 裁縫も家事スキルの補正が入るみたいだけど、どうなるんだろう? 

 手際がめちゃくちゃ良くなったりするのかな?

 1階で選んだ物としてはそれくらいで、1度、店員さんにお会計してもらった。 

 値段は占めて金貨4枚程だった。 

 大分お買い得なんじゃないかな?

 地球とはやっぱり相場が変わってくるんだろうか。

 寝袋とか屋根とか、地球で買ったらもう少ししそうなものだけど。

 買った物をアイテムボックスにしまうと、店員さんが少し驚いていたが、使える人も多くはないがいる事にはいるので、すぐに表情は元に戻っていた。
 

「2階は魔道具が売ってるのか。 行ってみる?」
 
「……ん」
 

 階段を上がると、1階よりスペースは大分狭いが、所狭しと商品である魔道具が置かれていた。 

 イメージで言うと雑貨屋さんみたいな感じだ。

 商品の前には値札と、どんな効力があるのかなどがざっくり書いてある。

 色々と見て回っていると、朝、ゲイルさんが言っていた結界石が売られているのを見つけた。

 台座に丸い石を置いて、それを結界を張りたい範囲の四方に置き、魔力を流す事で起動するらしい。 

 広さによって消費魔力が変わってくるみたいだ。 

 鑑定してみると、認識妨害の付与がされていて、結界の範囲内の人間は認識されず、外からは普通の風景に見えるそうだ。

 確かに夜寝る時とかは便利だけど、値段が金貨3枚という事でかなり高めだ。

 ステータス欄を開いて、認識妨害の付与が出来るか確認したところ、僕にも付与できるみたいなので、これは買わずに自分で作る事にしよう。

 
「……ショーマ、これどう?」
 
「ん? なにそれ?」
 

 ノアルが指差しているのは、そこそこ大きめの、壁にかかった絨毯だった。 

 えーっと、なになに? 防汚の付与がされているのか……
 

「うん、いいかもね。 地面に広げても大丈夫みたいだし、値段もそこまでだし、買おうか」
 
「……ん!」
 

 こちらの値段は金貨3枚だった。 

 この大きさで、魔法付与もしてあるなら妥当なところだと思う。 

 もし汚れても、僕の生活魔法で綺麗にできるから、使いまわせるだろう。

 店員さんに会計してもらって、これもまたアイテムボックスにしまっておく。 

 そういえば、ホイホイ色んな物入れてるけど、容量とかは大丈夫だろうか? 

 いっぱいになった気配は今のところないのだけれど……

 まぁ、いっぱいになった時に考えればいいかな。

 道具屋から出たところで時刻は昼を過ぎ、夕方の一歩手前くらいの時間になっていた。
 

「それじゃあ、宿に戻ろうか。 まだなにか買った方がいいものとかあるかな?」
 
「……十分だと思う」
 
「そっか。 それじゃあ戻って、明日からのご飯を作っておこうか」
 
「……ん、楽しみ」
 

 久しぶりの料理だなー。 

 楽しみでもあるけど、ちゃんと作れるかちょっと不安だ。 

 頑張るぞー。
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