転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜

かむら

文字の大きさ
上 下
30 / 93
第二章 新たな出会い

#28 猫好きの母娘

しおりを挟む
「そういえば、泊まるのは問題ないが、生憎と1人部屋がほぼ埋まっててな。 2人部屋がいくつか空いてるって状況なんだ。 どうする? 分かれて部屋取るとそれなりに金がかかってしまうが……」
 
「……一緒の部屋でいい」
 
「え!? 良くなくない!?」
 
「……獣人国に行くためにもお金は節約したい」
 
「いや、宿代くらいなら僕が出すけど……」
 
「……それはダメ。 気持ちはありがたいけど、今はノアルもお金持ってるから、自分の分は払う」
 

 んー、言わんとしてる事は分かるな。 

 あんまり、人に自分のためにお金を使わせるっていうのは申し訳ないか。
 

「……武器と服のお金も返す」
 
「いや、それはいいよ。 武器はタダで譲ってもらったものから作ったし、服は、そうだね…… 元気になったお祝いって事でプレゼントするよ」
 
「……でも」
 
「いいって、今日の依頼ではノアルに沢山助けてもらったから、服代じゃ割りに合わないくらいだよ」
 
「……分かった、ありがたくもらう」
 

 なんとか納得してくれたみたいだ。 

 実際、今日の依頼はノアルがいなかったら厳しかったと思う。 

 倒せたかもしれないが確証はないし、あんなに苦労なく終わったのはノアルがいてくれたからだ。
 

「仲良いんだな。 それで、部屋の事なんだが2人部屋が2種類あってな。 ベッドが2つある部屋と大きめのベッドが1つある部屋のどっちがいい?」
 
「……それは、もちろんひと「2つある部屋でお願いします」……むぅ」
 

 ノアルの言葉を遮って、ベッドが2つある部屋にしてもらう。
 

「あいよ、2つある部屋だな。 代金は2人2泊で銀貨6枚だ」
 
「じゃあ、これで」
 

 そう言って僕は、金貨1枚を取り出し、ミルドさんに渡した。

 おつりと鍵を受け取り、部屋の位置を教えてもらう。 

 今度は一階で、場所はまたまた奥の一部屋だ。
 

「この後は飯にするか?」
 
「はい、いただきます。 ノアルは?」
 
「……ん、ノアルも」
 
「分かった、座って待っててくれ。 ゲイルもいると思うぞ」
 

 ゲイルさん、もう帰ってきてるのか。 

 マイヤさんも教会にいたし、早めに解散したのかな?

 食堂に入ると、言われた通りゲイルさんがいて、一足早くご飯を食べていた。
 

「お疲れ様です、ゲイルさん」
「お、ショーマか、お疲れさん。 そいつは今朝の獣人か? 女だったんだな」
 
「そうです。 これも何かの縁だと思って冒険者パーティーも組む事にしたんです」
 
「そうなのか、信用してるんだな」
 

 僕とノアルはゲイルさんと同じテーブルに座って、今日あった事をざっくりと話す。 

 ゴブリンとの戦闘の話ではノアルも混ざって、今日感じた違和感などをゲイルさんに話していた。

 話を聞くと、ゲイルさんは何か思う事があったのか、首を傾げながらうんうんと唸っている。
 

「んー、確かに色々と引っかかるな。 最近、森の方での魔物の動きがおかしいが、なんなんだろうなー、今日のところは調査に行ってもなんもなかったんだが」
 
「結構早めにその調査は終わったんですか?」
 
「早めというか、森の道にある魔物除けの魔道具の点検と、道付近に異変がないか調べるだけだったからすぐ終わったぜ。 俺達はギルド職員を守るための護衛みたいなもんだな。 ま、なんも異常は無かったんだが」
 
「そうなんですか……」
 

 何も異常無かったのか、ますます不可解だな。 
 

「ま、詳しく考えても分からんし、ギルドに任せようぜ。 今日一緒に調査に行ったリムも任せてくださいって言ってたし」
 
「リムさんと一緒に行ったんですね」
 
「あいつは優秀だからな。 戦闘はあんまりだが、持ってるスキルは中々なものだと思うぜ」
 

 リムさんは確かに仕事ができるんだろうなー。

 ユレーナさんにも割と遠慮なく発言してたし、それなりの立場なのかもしれない。

 そのリムさんのスキルについて聞こうとしたが、ララさんとミラルちゃんによって料理が運ばれてきた。
 

「お待たせしました、今日の晩ご飯です」
 
「ありがとうございます、ララさん」
 
「あ、あの、ショーマお兄ちゃん?」
 
「ん? どうしたの? ミラルちゃん?」
 
「隣に座っている獣人さんは?」
 
「あ……」
 

 そういえばミラルちゃんに何も言ってなかったな。

 
「えっと、この子は昨日助けた黒猫で名前はノアル。 朝、黒猫の姿だったのは、ミラルちゃんやミルドさんが獣人はダメって言うかもしれないと思ったから黙ってたんだ、ごめんね?」
 
「獣人がダメって?」
 
「この街にはあんまりそういう人いないけど、世の中には獣人が嫌っていう人もいるらしくてさ、ミラルちゃんは平気?」
 
「平気! お母さんも平気でしょ?」
 
「ええ、全然平気ですから気にしないでください」
 
「そう言ってもらえるとありがたいです」
 
「……ありがと。 あと、昨日も見ていてくれてありがと」
 
「いいんです! ミラルも見てて楽しかったですから!」
 
「そうですよ。 それにしても、猫さんの姿でも可愛かったですが、人の姿も可愛らしいですね」
 
「……ん、そう?」
 

 ノアルはララさんに褒められて嬉しかったのか猫耳はピクピク、尻尾はゆらゆらしていた。
 

「むむむ……」
 
「ん? どうしたのミラルちゃん?」
 

 ミラルちゃんはゆらゆら揺れるノアルの尻尾をじっと見てる。 

 気になるんだね。

 その視線に気付いたのか、ノアルはミラルちゃんの方を見てクスッと笑うと、尻尾を動かしてミラルちゃんの頬を優しく撫でた。
 

「わ、すごい! こんなに自由に動かせるんだね!」
 
「……触る?」
 
「い、いいの!?」
 
「……優しくなら、いい」
 

 その言葉を聞いたミラルちゃんは目を輝かせて、ゆっくりと手を伸ばしてノアルの尻尾を撫でた。
 

「わぁ…… こんな感触なんだぁ……」
 

 しばらくの間、ノアルとミラルちゃんはじゃれ合っていて、ノアルも尻尾を手に巻き付けたりしていた。 

 仲良くなれて良かったね。
 

「ミラル? そろそろ離れなさい? ショーマさんもノアルさんも、ご飯食べる所なんだから」
 
「あ、そうだった…… ごめんなさい」
 
「……気にしてない。 ミラルならまた触らせてあげる」
 
「ほ、ほんと!?」
 
「……ん」
 
「ノアルさん、すいません……」
 
「……ララも触る?」
 
「え?」
 
「……羨ましそうにしてた」
 

 え、そうなのか? 

 ミラルちゃんの方ばかりに目がいってララさんの方見てなかった。
 

「き、気付いてたんですか?」
 
「ララ、バレバレだったぞ」
 
「ゲ、ゲイルくんまで!?」

 
 慌てるララさんを見て、周りは皆楽しそうに笑った。 

 結局、ご飯が終わったらララさんも触らせてもらう事にしたようだ。

 ちょっと時間は経ったが、運ばれてきたご飯をノアルと一緒に食べる。 

 今日も中々にボリュームがあったが、とても美味しくて、しっかりと完食した。

 意外だったのは、ノアルが僕達と全く同じ量の料理を平らげた事だ。 

 猫の姿の時も思ったが、一体その細い体のどこに入っているんだろうというくらい食べていた。
 

「……お腹いっぱい」
 
「すごい食べたね。 満足した?」
 
「……ん、美味しかった」

 
 ノアルもこの宿の食事がお気に召したみたいだ。

 食器をトーイさんやミラルちゃんに下げてもらって一休みする。 

 美味しいのは間違いないんだけど、毎回毎回しっかりと満腹になるからちょっと苦しいんだよね。

 そんな事を思いながら雑談していると、厨房からララさんとミラルちゃんが出てきてこちらに来た。 

 さっき話してた事をやりに来たんだろうな。

 来たのはいいんだけど、ミラルちゃんがなにやらモジモジしている。 

 何か言いたい事があるような感じだな、誰に対してだろう?
 

「え、えっと、ノアルさん?」
 
「……ん? ……どうしたの?」
 
「あの…… お姉ちゃんって呼んでいいですか!?」
 
「……え?」
 
「ショーマお兄ちゃんにはそう呼んでいい?って聞いたから、ノアルさんにも聞いておいた方がいいかなって思ったの」
 
「……なんでお姉ちゃん?」
 
「なんていうかその、なんとなーくショーマお兄ちゃんに雰囲気が似てて、お姉ちゃんって呼びたくなったの! だめですか……?」
 
「……ん、お姉ちゃんでいいから、そんな瞳で見ないで……」
 

 お、珍しくノアルが困ってる。 

 まぁ、確かにミラルちゃんみたいな子供に、キラキラした目でお願いというかおねだりされたら、ちょっと困るよね。
 

「ほんと!?」
 
「……ん、いいよ」
 
「ありがとう! ノアルお姉ちゃん!」
 

 なにはともあれ仲良くなったみたいで良かった。 

 ララさんも微笑ましそうに2人を見ている。
 

「じゃあ、お母さんも一緒に触らせてもらっていい?」
 
「……ん」
 
「え、えーっと、失礼します?」
 

 ノアルは尻尾をゆらゆらさせながらララさんとミラルちゃんに差し出している。 
 

「じゃあ、僕は先に部屋に戻ってようかな? 女の人同士の方が色々話せるだろうし」
 
「……分かった」
 
「部屋の位置は大丈夫?」
 
「……大丈夫」

 
 じゃあ、僕は先に戻って今日の依頼で得たものとかの確認をしようかな。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

毎日スキルが増えるのって最強じゃね?

七鳳
ファンタジー
異世界に転生した主人公。 テンプレのような転生に驚く。 そこで出会った神様にある加護をもらい、自由気ままに生きていくお話。 ※ストーリー等見切り発車な点御容赦ください。 ※感想・誤字訂正などお気軽にコメントください!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...