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第二章 新たな出会い
#17 ギルドマスター
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ギルドに着いて早速トラブルになったがなんとか事態は収まり、僕は今、リムさんの案内でギルドマスターの元へ向かっている。
「それにしても、ショーマさんってやっぱり強いんですね」
「うーん、どうなんでしょう? まだまだ分からないことが多すぎるので、自分が強いのかどうかも分からないです」
「十分、強いと思いますよ? だって、ショーマさんがさっき倒した人達は実力でいったら黄ランクくらいはあります。 素行が悪いので青ランクですけど」
「そもそも、冒険者ランクの事もよく分かって無いんです……」
「あ、そうでしたね。 簡単に説明しちゃうと、ショーマさんは昨日ギルドに加入したばかりなので、ランクは白になります。 ランクが上がると、白、緑、青、黄、赤、紫、銅、銀、金、黒という順番で上がって行きます。 まぁ、黒の冒険者はここ数十年現れていませんが」
「そうなんですか?」
「はい。 黒の冒険者は現在、ハイエルフの方が1人と魔導国家の王、最後に魔族の傭兵の方の3人だけです。 この方々は皆長命なので、黒ランクになったのもかなり前と聞いてます」
「へぇー…… というか、冒険者ギルドって色んなところにあるんですね」
「やはりどの国にも冒険者がいれば、小さな困り事から大きい困り事まである程度は解決出来ますから、自然とどの国にもギルドは置かれているんです」
「なるほど。 で、そのギルドの偉い人に会うんですよね…… 大丈夫なんでしょうか?」
前世から、あまり目上の人と話すのって得意じゃなかったんだよね……
やっぱり、緊張するし、息が詰まるから出来れば避けて通りたい。
まぁ、今回はこちらとしてもありがたい事ではあるからしょうがないんだけど。
「ふふ、その点では大丈夫だと思いますよ?」
「え? どういう意味ですか?」
「会えば分かると思います。 さぁ、着きましたよ。 ここがギルドマスターの執務室です」
リムさんがそう言って案内してくれたのは、他の部屋の扉より少し大きめの扉の前だった。
ギルドマスターかぁ、どんな人なんだろうか?
「ギルドマスター、昨日クラウスさんが話していたショーマさんを連れて来ました」
リムさんが扉をノックして中にいる人、ギルドマスターに声をかけた。
「入っていいぞ」
部屋の中からそう返事が返ってきた。
「それじゃあ、入りましょうか」
「あ、はい!」
リムさんに続いて執務室に入る。
そこは色んな資料が部屋の両側にある大きな棚に収まっており、部屋の真ん中にはソファが机をはさんで対面する形で置かれていた。
「あんたがショーマだね」
奥に置かれた執務机の前に、少しクセのある燃えるような赤髪を携えた背が高い女性が立っていた。
僕より少しだけ低いくらいだから、女性にしてはかなり高い方だと思う。
「はい、ショーマと申します。 今日はわざわざ時間をとっていただき、ありがとうございます」
「あー、いいんだいいんだ。 むしろ事務仕事から抜け出せて感謝して……」
「……ギルドマスター?」
「なんでもないぞ! リム!」
おう…… リムさんが怖い。
表情はニッコリしてるのに頭の後ろでブリザードが吹いてるように見える。
「コホン…… とにかく、よく来たね。 私はこの冒険者ギルドのギルドマスターをやってるユレーナだ。 よろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「よし、挨拶も済んだし、早速話を聞こうか。 座ってくれ」
「はい、失礼します」
断りを入れてソファに座った。
すごい座り心地がいいソファだな。
「クラウスから大事な事だとは聞いたが内容は聞いてないから、あいつらに話したらしい事をとりあえず教えてくれるかい?」
「分かりました」
そんなやり取りをしていると、リムさんがカップに入った飲み物を持ってきて、机の上に置いてくれた。
「それでは、私はこれで失礼します」
「ああ、待ちなリム。 ショーマ、リムにも話を聞いてもらってもいいかい? クラウスも職員の信用できる奴に1人くらいは話しておいた方がいいって言ってたからさ」
「その話は昨日クラウスさん達ともしたので大丈夫ですよ。 リムさんにも聞いてもらった方がいいと思います」
「だ、そうだ。 だからリムも座んな」
そう言ってユレーナさんは、となりのスペースをポンポンと叩く。
「わ、わかりました。 失礼します」
そう言ってリムさんはユレーナさんの隣に座った。
「あ、昨日の話をする前に、一つ報告しておきたい事があるんです」
「ん? なんだい?」
「僕、さっきまでウロナの森の方に行ってたんですけど…… ああ、とは言っても道の近くの浅いところです。 そこでちょっと作業をしていたら魔物に遭遇しました」
「ほう…… それは本当かい?」
「はい、僕も道の近くには魔物が寄ってこないと言われていたので驚きました。 それで、なんで現れたのか探ってみたら、黒猫が魔物に襲われている所を目撃したんです」
「黒猫? 魔物ではないのか?」
「恐らく魔物では無いと思います。 それで、その黒猫が怪我をしていたので、回復魔法で傷を治した所で魔物が襲ってきました」
「魔物の種類は?」
「名前は分かりませんが、青い狼が4匹でした」
「え! それってブルーウルフじゃないですか! 大丈夫だったんですか?」
リムさんがかなり驚いた表情で聞いてくる。
「あぁ、大丈夫です。 倒しましたから」
「へ? 逃げたんじゃないんですか?」
「いえ、倒しましたよ? 一応死骸も回収してきました」
「そうか。 それらは後でギルドの近くの解体場に持っていけば解体して買い取ってくれるからそこに頼む。 ……それにしても、新人がブルーウルフ4匹を余裕で倒すか。 お前はかなりできるみたいだな」
なんか話を聞いたユレーナさんの顔が輝いたように見えたのは気のせいだろうか?
「まぁ、話は分かった。 この件はギルドで預かって調査してみよう」
「そうですか。 一応報告しておこうと思ったのですが、良かったですかね?」
「ああ、助かった。 この話が終わったら冒険者や商人に注意報を出しておく。 また街道付近に魔物が現れないとも限らないからな」
うん、報告しておいて良かったみたいだ。
「黒猫さんは大丈夫だったんですか?」
「命に別状は無いですよ。 今は僕が泊まっている宿に預けています」
「そうですか、よかったですね」
リムさん猫好きなのかな? あの猫が元気になったら会わせてみたいな。
「それじゃあ、本題に入りますね。 まずは僕の職業からです。 僕の職業は鍛冶師、魔導師、ウェポンマスターの3つで、その内、鍛冶師とウェポンマスターは僕のユニーク職業になります。」
その言葉に、早くもリムさんとユレーナさんは絶句した。
うん、クラウスさん達とほぼ同じ反応だ。
「……ショーマさん、ユニーク職業2つ持ってるんですか?」
「はい、持ってます」
「えぇぇぇぇぇ……」
リムさんがすごい顔で僕のことを見てきた。
「……クラウスが、わざわざ話を持ってくるはずだ」
ユレーナさんが苦笑しながらそう言う。
「えーっと、説明続けていいですか?」
「「どうぞ……」」
2人は既にどこか疲れた表情でそう言ってきた。
……なんか申し訳なくなってくるな。
「まず、鍛冶師からです。 最初に言っておくと、このスキルが一番規格外です」
「そうなのか? 名前を聞いた限りでは戦闘職では無いみたいだが」
「確かにこの職業は戦闘職じゃないです。 ……口で説明するより、実物を見てもらいましょうか」
そう言って僕は、アイテムボックスから僕が作ったロングソードを取り出した。
「これは…… かなり質のいい剣だな」
「これは僕が作った剣です。 普通の鉄鉱石から作りました」
「え! これ鉄なんですか? 私から見ると銀のように見えるんですけど」
「鉄鉱石からこれを作るとなると、すごく手間がかかったんじゃないか?」
「いえ、この剣の作成には恐らく10分もかかってないです」
「は?」
「それが僕の鍛冶師のスキルです」
ユレーナさんが作られた過程を聞きたいと言ってきたのでざっと過程を説明する。
話を聞いた後、ユレーナさんは、
「とんでもないな……」
と言って苦笑していた。
それから僕は、この武器に付与が3つ付いていることや、魔導師、ウェポンマスターについてもリムさんとユレーナさんに話すのであった。
*
それからしばらくして、色々と僕のことを話し終わった時には、リムさんは疲れたような表情になり、ユレーナさんは割り切ったのか、僕の事に関してどうするべきかを考えているようだ。
「それで、僕は今後冒険者として活動していこうと思っているんですけど、大丈夫ですか?」
「ああ、それはむしろこちらから歓迎したい。 お前ならすぐにランクを上げることは可能だと思う。 というか、ブルーウルフを4匹討伐したのなら青ランクに上げても大丈夫だろう」
「え、そんな一足飛びにランク上げていいんですか?」
「実力のあるものをすぐに上に上げるための措置で、ある程度の魔物を討伐できる力がある者は直ぐに青までは上げていい事になってるんだ。 討伐依頼を受けられるのが青ランクからだからな」
「そうなんですか」
「ただ、そこから先は実力だけじゃなく、素行も求められるぞ? まぁ、お前なら大丈夫そうだがな。 ここに来る前にリムを助けてくれたらしいし」
「あれ、知ってたんですか?」
「ああ、お前らが来る前に報告が来てな。 ギルドマスターとして改めて礼を言わせてくれ。 うちの職員を助けてくれてありがとな」
「いや、そもそも僕が巻き込んでしまったんですから、礼なんていいですよ」
「そんな事ないですよショーマさん。 私は私の意思で介入したんですから、襲われたのは私の責任です。 なので、お礼は受け取ってください。 本当に感謝していますから」
「……そうですか、分かりました。 それじゃあ、僕からもお礼を言いたいです。 助けに来てくれてありがとうございます。 正直、すごい困ってたので本当に助かりました」
「い、いえいえそんな…… いいんですよ」
リムさんにお礼も言えた事だし、そろそろお暇しようかな?
あんまり長く居座っても仕事の邪魔だろうし。
「それじゃあ、今日はこの辺で失礼します」
「ああ、待ちなよショーマ」
「なんでしょうか?」
「この後なんもないなら、私とちょっと一戦しないかい?」
「え? ユレーナさんとですか?」
「そうだよ。 私は元々冒険者をやっていてね? たまには強い奴と戦わなきゃ、勘が鈍っちまうんだよ。 だからどうだい、この後訓練場で……」
「……ギルドマスター?」
「!? な、なんだいリム?」
「まだ、仕事残ってますよね?」
「うっ、た、たまにはいいだろう!? 少しは体動かさないと腕が鈍……」
「元金ランクの冒険者が少し体を動かさないだけで鈍ったりしないでしょう。 というかこの前も、そんな事言ってクラウスさんと模擬戦してたでしょう?」
「うぅ、だが……」
「だが、じゃないです。 仕事してください。 ショーマさんのランク上げる手続きとかは私がやっておくので、ギルドマスターは溜まった書類を片付けてください」
「…………………」
「……片付けておいてくださいね?」
「……はい」
……リムさんが強い。
僕個人としては実力を試す目的で付き合っても良かったけど、リムさんがちょっと怖いから言わないでおこう。
「そ、それじゃあ失礼します、ユレーナさん。 模擬戦はまた、お暇な時にしましょう」
「本当かい!?」
「はい、ユレーナさんにはこれからもお世話になるでしょうし、僕なんかで良ければいくらでもお相手になりますよ」
「そうかい! それじゃあまた今度頼むよ!」
「分かりました」
ユレーナさんは僕の返事を聞いてとても嬉しそうにしていた。
*
「もうっ、ギルドマスターにも困ったものです」
「あはは…… まぁ、少しは楽しみが無ければ人間生きていけないでしょう」
「そうですけど、それで仕事を放り出すのはやめてもらいたいです」
不機嫌そうにリムさんはそう言う。
既に僕とリムさんは執務室を後にして、解体場にブルーウルフ4匹を預けて受付のところまで戻ってきていた。
昨日クラウスさんとミリアンヌさんが心配してたのってこの事だったんだろうなー。
ユレーナさん、かなりの戦闘マニアみたいだ。
「まぁ、それはともかく…… はい、更新できましたよ。 これが青ランク冒険者のギルドカードです」
そう言ってリムさんに渡されたのは白から青色になったのギルドカード。
うん、分かりやすくていいな。
「ありがとうございます」
「これでショーマさんは討伐依頼も受ける事が出来ます。 ただ、受けられる依頼は自分のランクの一個上までのランクの依頼までです。 無理はダメですよ?」
「はい、気をつけます」
「それと、これ以上ランクを上げるためには、依頼を沢山こなしたり、強い魔物を討伐したりする事で上がります。 もう一つ素行も求められるんですけどショーマさんは大丈夫ですね」
信頼されてるなぁ……
うん、裏切るような事がないよう気を付けよう。
「あ、それとこの後また解体場に行ってください。 そろそろ解体も終わってると思うので、そこで素材の報酬とかの相談をお願いします」
「分かりました。 今日は本当にありがとうございました。 今後もよろしくお願いしますね」
「いえいえ、ショーマさんも冒険者活動頑張ってください」
リムさんと最後にそう言い合って別れ、僕は冒険者ギルドを後にした。
「それにしても、ショーマさんってやっぱり強いんですね」
「うーん、どうなんでしょう? まだまだ分からないことが多すぎるので、自分が強いのかどうかも分からないです」
「十分、強いと思いますよ? だって、ショーマさんがさっき倒した人達は実力でいったら黄ランクくらいはあります。 素行が悪いので青ランクですけど」
「そもそも、冒険者ランクの事もよく分かって無いんです……」
「あ、そうでしたね。 簡単に説明しちゃうと、ショーマさんは昨日ギルドに加入したばかりなので、ランクは白になります。 ランクが上がると、白、緑、青、黄、赤、紫、銅、銀、金、黒という順番で上がって行きます。 まぁ、黒の冒険者はここ数十年現れていませんが」
「そうなんですか?」
「はい。 黒の冒険者は現在、ハイエルフの方が1人と魔導国家の王、最後に魔族の傭兵の方の3人だけです。 この方々は皆長命なので、黒ランクになったのもかなり前と聞いてます」
「へぇー…… というか、冒険者ギルドって色んなところにあるんですね」
「やはりどの国にも冒険者がいれば、小さな困り事から大きい困り事まである程度は解決出来ますから、自然とどの国にもギルドは置かれているんです」
「なるほど。 で、そのギルドの偉い人に会うんですよね…… 大丈夫なんでしょうか?」
前世から、あまり目上の人と話すのって得意じゃなかったんだよね……
やっぱり、緊張するし、息が詰まるから出来れば避けて通りたい。
まぁ、今回はこちらとしてもありがたい事ではあるからしょうがないんだけど。
「ふふ、その点では大丈夫だと思いますよ?」
「え? どういう意味ですか?」
「会えば分かると思います。 さぁ、着きましたよ。 ここがギルドマスターの執務室です」
リムさんがそう言って案内してくれたのは、他の部屋の扉より少し大きめの扉の前だった。
ギルドマスターかぁ、どんな人なんだろうか?
「ギルドマスター、昨日クラウスさんが話していたショーマさんを連れて来ました」
リムさんが扉をノックして中にいる人、ギルドマスターに声をかけた。
「入っていいぞ」
部屋の中からそう返事が返ってきた。
「それじゃあ、入りましょうか」
「あ、はい!」
リムさんに続いて執務室に入る。
そこは色んな資料が部屋の両側にある大きな棚に収まっており、部屋の真ん中にはソファが机をはさんで対面する形で置かれていた。
「あんたがショーマだね」
奥に置かれた執務机の前に、少しクセのある燃えるような赤髪を携えた背が高い女性が立っていた。
僕より少しだけ低いくらいだから、女性にしてはかなり高い方だと思う。
「はい、ショーマと申します。 今日はわざわざ時間をとっていただき、ありがとうございます」
「あー、いいんだいいんだ。 むしろ事務仕事から抜け出せて感謝して……」
「……ギルドマスター?」
「なんでもないぞ! リム!」
おう…… リムさんが怖い。
表情はニッコリしてるのに頭の後ろでブリザードが吹いてるように見える。
「コホン…… とにかく、よく来たね。 私はこの冒険者ギルドのギルドマスターをやってるユレーナだ。 よろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「よし、挨拶も済んだし、早速話を聞こうか。 座ってくれ」
「はい、失礼します」
断りを入れてソファに座った。
すごい座り心地がいいソファだな。
「クラウスから大事な事だとは聞いたが内容は聞いてないから、あいつらに話したらしい事をとりあえず教えてくれるかい?」
「分かりました」
そんなやり取りをしていると、リムさんがカップに入った飲み物を持ってきて、机の上に置いてくれた。
「それでは、私はこれで失礼します」
「ああ、待ちなリム。 ショーマ、リムにも話を聞いてもらってもいいかい? クラウスも職員の信用できる奴に1人くらいは話しておいた方がいいって言ってたからさ」
「その話は昨日クラウスさん達ともしたので大丈夫ですよ。 リムさんにも聞いてもらった方がいいと思います」
「だ、そうだ。 だからリムも座んな」
そう言ってユレーナさんは、となりのスペースをポンポンと叩く。
「わ、わかりました。 失礼します」
そう言ってリムさんはユレーナさんの隣に座った。
「あ、昨日の話をする前に、一つ報告しておきたい事があるんです」
「ん? なんだい?」
「僕、さっきまでウロナの森の方に行ってたんですけど…… ああ、とは言っても道の近くの浅いところです。 そこでちょっと作業をしていたら魔物に遭遇しました」
「ほう…… それは本当かい?」
「はい、僕も道の近くには魔物が寄ってこないと言われていたので驚きました。 それで、なんで現れたのか探ってみたら、黒猫が魔物に襲われている所を目撃したんです」
「黒猫? 魔物ではないのか?」
「恐らく魔物では無いと思います。 それで、その黒猫が怪我をしていたので、回復魔法で傷を治した所で魔物が襲ってきました」
「魔物の種類は?」
「名前は分かりませんが、青い狼が4匹でした」
「え! それってブルーウルフじゃないですか! 大丈夫だったんですか?」
リムさんがかなり驚いた表情で聞いてくる。
「あぁ、大丈夫です。 倒しましたから」
「へ? 逃げたんじゃないんですか?」
「いえ、倒しましたよ? 一応死骸も回収してきました」
「そうか。 それらは後でギルドの近くの解体場に持っていけば解体して買い取ってくれるからそこに頼む。 ……それにしても、新人がブルーウルフ4匹を余裕で倒すか。 お前はかなりできるみたいだな」
なんか話を聞いたユレーナさんの顔が輝いたように見えたのは気のせいだろうか?
「まぁ、話は分かった。 この件はギルドで預かって調査してみよう」
「そうですか。 一応報告しておこうと思ったのですが、良かったですかね?」
「ああ、助かった。 この話が終わったら冒険者や商人に注意報を出しておく。 また街道付近に魔物が現れないとも限らないからな」
うん、報告しておいて良かったみたいだ。
「黒猫さんは大丈夫だったんですか?」
「命に別状は無いですよ。 今は僕が泊まっている宿に預けています」
「そうですか、よかったですね」
リムさん猫好きなのかな? あの猫が元気になったら会わせてみたいな。
「それじゃあ、本題に入りますね。 まずは僕の職業からです。 僕の職業は鍛冶師、魔導師、ウェポンマスターの3つで、その内、鍛冶師とウェポンマスターは僕のユニーク職業になります。」
その言葉に、早くもリムさんとユレーナさんは絶句した。
うん、クラウスさん達とほぼ同じ反応だ。
「……ショーマさん、ユニーク職業2つ持ってるんですか?」
「はい、持ってます」
「えぇぇぇぇぇ……」
リムさんがすごい顔で僕のことを見てきた。
「……クラウスが、わざわざ話を持ってくるはずだ」
ユレーナさんが苦笑しながらそう言う。
「えーっと、説明続けていいですか?」
「「どうぞ……」」
2人は既にどこか疲れた表情でそう言ってきた。
……なんか申し訳なくなってくるな。
「まず、鍛冶師からです。 最初に言っておくと、このスキルが一番規格外です」
「そうなのか? 名前を聞いた限りでは戦闘職では無いみたいだが」
「確かにこの職業は戦闘職じゃないです。 ……口で説明するより、実物を見てもらいましょうか」
そう言って僕は、アイテムボックスから僕が作ったロングソードを取り出した。
「これは…… かなり質のいい剣だな」
「これは僕が作った剣です。 普通の鉄鉱石から作りました」
「え! これ鉄なんですか? 私から見ると銀のように見えるんですけど」
「鉄鉱石からこれを作るとなると、すごく手間がかかったんじゃないか?」
「いえ、この剣の作成には恐らく10分もかかってないです」
「は?」
「それが僕の鍛冶師のスキルです」
ユレーナさんが作られた過程を聞きたいと言ってきたのでざっと過程を説明する。
話を聞いた後、ユレーナさんは、
「とんでもないな……」
と言って苦笑していた。
それから僕は、この武器に付与が3つ付いていることや、魔導師、ウェポンマスターについてもリムさんとユレーナさんに話すのであった。
*
それからしばらくして、色々と僕のことを話し終わった時には、リムさんは疲れたような表情になり、ユレーナさんは割り切ったのか、僕の事に関してどうするべきかを考えているようだ。
「それで、僕は今後冒険者として活動していこうと思っているんですけど、大丈夫ですか?」
「ああ、それはむしろこちらから歓迎したい。 お前ならすぐにランクを上げることは可能だと思う。 というか、ブルーウルフを4匹討伐したのなら青ランクに上げても大丈夫だろう」
「え、そんな一足飛びにランク上げていいんですか?」
「実力のあるものをすぐに上に上げるための措置で、ある程度の魔物を討伐できる力がある者は直ぐに青までは上げていい事になってるんだ。 討伐依頼を受けられるのが青ランクからだからな」
「そうなんですか」
「ただ、そこから先は実力だけじゃなく、素行も求められるぞ? まぁ、お前なら大丈夫そうだがな。 ここに来る前にリムを助けてくれたらしいし」
「あれ、知ってたんですか?」
「ああ、お前らが来る前に報告が来てな。 ギルドマスターとして改めて礼を言わせてくれ。 うちの職員を助けてくれてありがとな」
「いや、そもそも僕が巻き込んでしまったんですから、礼なんていいですよ」
「そんな事ないですよショーマさん。 私は私の意思で介入したんですから、襲われたのは私の責任です。 なので、お礼は受け取ってください。 本当に感謝していますから」
「……そうですか、分かりました。 それじゃあ、僕からもお礼を言いたいです。 助けに来てくれてありがとうございます。 正直、すごい困ってたので本当に助かりました」
「い、いえいえそんな…… いいんですよ」
リムさんにお礼も言えた事だし、そろそろお暇しようかな?
あんまり長く居座っても仕事の邪魔だろうし。
「それじゃあ、今日はこの辺で失礼します」
「ああ、待ちなよショーマ」
「なんでしょうか?」
「この後なんもないなら、私とちょっと一戦しないかい?」
「え? ユレーナさんとですか?」
「そうだよ。 私は元々冒険者をやっていてね? たまには強い奴と戦わなきゃ、勘が鈍っちまうんだよ。 だからどうだい、この後訓練場で……」
「……ギルドマスター?」
「!? な、なんだいリム?」
「まだ、仕事残ってますよね?」
「うっ、た、たまにはいいだろう!? 少しは体動かさないと腕が鈍……」
「元金ランクの冒険者が少し体を動かさないだけで鈍ったりしないでしょう。 というかこの前も、そんな事言ってクラウスさんと模擬戦してたでしょう?」
「うぅ、だが……」
「だが、じゃないです。 仕事してください。 ショーマさんのランク上げる手続きとかは私がやっておくので、ギルドマスターは溜まった書類を片付けてください」
「…………………」
「……片付けておいてくださいね?」
「……はい」
……リムさんが強い。
僕個人としては実力を試す目的で付き合っても良かったけど、リムさんがちょっと怖いから言わないでおこう。
「そ、それじゃあ失礼します、ユレーナさん。 模擬戦はまた、お暇な時にしましょう」
「本当かい!?」
「はい、ユレーナさんにはこれからもお世話になるでしょうし、僕なんかで良ければいくらでもお相手になりますよ」
「そうかい! それじゃあまた今度頼むよ!」
「分かりました」
ユレーナさんは僕の返事を聞いてとても嬉しそうにしていた。
*
「もうっ、ギルドマスターにも困ったものです」
「あはは…… まぁ、少しは楽しみが無ければ人間生きていけないでしょう」
「そうですけど、それで仕事を放り出すのはやめてもらいたいです」
不機嫌そうにリムさんはそう言う。
既に僕とリムさんは執務室を後にして、解体場にブルーウルフ4匹を預けて受付のところまで戻ってきていた。
昨日クラウスさんとミリアンヌさんが心配してたのってこの事だったんだろうなー。
ユレーナさん、かなりの戦闘マニアみたいだ。
「まぁ、それはともかく…… はい、更新できましたよ。 これが青ランク冒険者のギルドカードです」
そう言ってリムさんに渡されたのは白から青色になったのギルドカード。
うん、分かりやすくていいな。
「ありがとうございます」
「これでショーマさんは討伐依頼も受ける事が出来ます。 ただ、受けられる依頼は自分のランクの一個上までのランクの依頼までです。 無理はダメですよ?」
「はい、気をつけます」
「それと、これ以上ランクを上げるためには、依頼を沢山こなしたり、強い魔物を討伐したりする事で上がります。 もう一つ素行も求められるんですけどショーマさんは大丈夫ですね」
信頼されてるなぁ……
うん、裏切るような事がないよう気を付けよう。
「あ、それとこの後また解体場に行ってください。 そろそろ解体も終わってると思うので、そこで素材の報酬とかの相談をお願いします」
「分かりました。 今日は本当にありがとうございました。 今後もよろしくお願いしますね」
「いえいえ、ショーマさんも冒険者活動頑張ってください」
リムさんと最後にそう言い合って別れ、僕は冒険者ギルドを後にした。
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序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
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