16 / 92
第二章 新たな出会い
#15 黒猫と魔物
しおりを挟む
僕は今、この世界に降り立った時にいた森に来ている。
何故ここかというと、先ほど作った短剣に付与をするためだ。
武器に付与をしようとすると、槌で金属を叩くのでどうしても音が出て、目立ってしまう。
なので、宿の部屋などで行う訳にはいかなかったのだ。
それに、この森の街道付近は魔物除けのアイテムが効いているため、魔物も近寄ってこないらしい。
たまに近寄ってくる魔物もいるそうだが、冒険者などにその都度倒されているとゲイルさんに聞いた。
(さて、やりますか)
ゲイルさんに贈るダガーもそうだが、僕が使うロングソードも強化しておこう。
まずはダガーからだな。
(付与する魔法は何がいいかな)
耐久値上昇を付与する事は確定しているのだが、後の二つをどうしようか悩む。
ダガーなどの短剣の類の攻撃方法は刺突か斬撃かになると思うが、ゲイルさんはどっち主体なんだろうか?
聞いておけばよかったな。
何を付与するか悩み、付与できる魔法の一覧をぼーっと眺めていると、刺突強化の付与を見つけた。
……この際、どちらも付ければいいか?
攻撃力が上がる付与と言っていたし、いいんじゃないだろうか。
下手に試した事のない付与するよりは分かるものを付与した方がいいだろう。
恐らく刺突強化は斬撃強化と似たようなものだろうから。
(よし、この3つでいこう)
ダガーを置き、付与の槌をアイテムボックス取り出して、付与する魔法をイメージしながら魔力を流す。
魔力は使い過ぎると良くないそうだが、朝に合成、分離のスキルを使った時にMPを100程消費しても市場に行ったりしている間に回復していた。
この自動回復力があれば武器作りには困らないだろう。
なので、惜しみなく魔力を流す。
3つの付与だからか、この前よりも魔力を多く必要とするみたいで、MPが200程減ったところで、槌の打撃面に魔法陣が浮かび上がった。
そして、ダガーに向かって槌を振り下ろす。
キィン……! キィン……!
10回程叩いた所で魔法陣の色が変わった。
そのまま最後の一振りを振り下ろす。
キィィィン……!
ダガーに幾何学模様が刻まれ、数秒かけてその模様が沈み込んでいく。
(……うん、いい感じだ)
鑑定してみても、しっかりと耐久値上昇、斬撃強化、刺突強化が付与されているのが確認できた。
これならゲイルさんに渡しても良さそうな気がする。
喜んでくれるかは分からないが、今僕が作れる中では最高のものが出来た。
ダガーを作り終えたので、今度は僕のロングソードを作り直す作業に入る。
朝やったように分離と合成のスキルを使って、作った2本のロングソードを1本の出来のいいロングソードにすることにした。
なので、アイテムボックスから2本のロングソードを取り出し、再びスキルを使っていく。
ダガーの時と同じように、剣から必要な物質だけを分離させインゴットにし、出来上がった二つのインゴットを今度は一つに合成する。
最後に、そのそれなりに大きくなったインゴットを、鉱物操作を使いロングソードの形にしていくと、
【ロングソード+3(斬撃強化+耐久値上昇)】:
力+140
鋼を使って作られたロングソード。
作成者の力量により、効果を3つ付与することが出来る。
品質もかなり良いため、一般的なロングソードより力のパラメーターの上昇率が高い。
作成者はショーマ=ケンモチ。
+2と+3の剣を合成したからどうなるかと思ったが、出来たのは+3のロングソードだった。
うーん、法則がよく分からないな。
運の可能性もあるので気にするだけ無駄かもしれないが。
それよりも、スキルを使う一連の流れもかなりスムーズになってきた。
今後もこれらのスキルは頻繁に使うと思うし、スピードが上がる分には困る事はないだろう。
けれども、なんでスピードが上がったんだろう?
慣れただけかもしれないが、それにしてははっきりと自覚出来ている。
そこでなんとなく、ステータス画面を開いてみた。
鍛冶師の詳細にスピードが上がった原因とかが書いているかもしれないと思ったので。
そう思ってステータスを見てみたところ、
(レベルが上がってる?)
ショーマ=ケンモチ Lv3 男 17歳
種族:ヒト種
職業:鍛冶師 Lv3 魔導師 Lv3
ウェポンマスター Lv3
スキル:言語知識 Lv10
家事 Lv8
運命神の加護(隠蔽) Lv10
HP:1802
MP:1446
力:361
速:118
技:602
守:178
魔:361
運:1000
スキルポイント:10
なぜかレベルが2つも上がっていた。
原因はスキルを使った事だろうか?
スキルを使うとレベルが上がるものだとしても、こんなに早くレベル上がるものなんだな。
まぁ、まだレベルが低いから、少しスキルを使っただけで経験値がたまったのかもしれないが。
(スキルポイントか…… 何に使うべきかな?)
レベルが上がった事でスキルポイントを得ることが出来たが、何も考えていなかったし、取得できるスキルというのも後回しにしていてまだしっかりとは見ていない。
とりあえず、その確認からするか。
(取得できるスキルの一覧は…… っと、これか。 これまためちゃくちゃ多いな)
ステータスでスキルポイントで取得できるスキルの一覧を開いてみたが、付与の数の比にならないくらい多い。
一応、戦闘系スキルとか、便利系スキルといったように、カテゴリーには分かれているのが救いだな。
(初めてだし、何か取ってみようかな)
物は試しと言うし、何か取ってみることにする。
この調子だと、またすぐレベルは上がるだろうから、貯めていてもしょうがないだろう。
そう思い、なにか便利なスキルはないかと一覧を眺めていく。
戦闘系のスキルは今はいらないし、なにか補助的なスキルを取るつもりだ。
それから10分程探してみて、面白そうなスキルがいくつかあった。
けれど、今回は一つだけ取ってレベルを4まで上げることにする。
あまり低いレベルだと、持っていても意味がなさそうなので。
それから少し考え、1番取りたいと思ったスキルをタップして調べてみる。
【気配探知】:
一定範囲の気配を探知することができる。
探知する対象は指定可能。
レベルが上がると、スキルの有効範囲が向上する。
隠形系統のスキル持ちには効果が薄い。
発動は任意で切り替えることが出来る。
※このスキルを取りますか?→消費スキルポイント1
なぜこのスキルを取ろうと思ったかというと、やはり慎重に行きたいという僕のスタンスからだ。
昨日、ゲイルさんに会った時に、全く人が近づいている事に気付けなかったのを、このスキルを見つけた時に思い出した。
あれがもし、ゲイルさんではなく魔物や悪い人だったらと思うと怖くなったので、対策をすることにしたのだ。
早速スキルポイントを払い、レベル1の気配察知を取得する。
そのまま、2ポイント、3ポイント、4ポイントをそれぞれ払い、気配察知のレベルを4まで上げた。
ショーマ=ケンモチ Lv3 男 17歳
種族:ヒト種
職業:鍛冶師 Lv3 魔導師 Lv3
ウェポンマスター Lv3
スキル:言語知識 Lv10
家事 Lv8
運命神の加護(隠蔽) Lv10
気配察知 Lv4
HP:1815
MP:1452
力:363
速:121
技:605
守:181
魔:363
運:1210
スキルポイント:0
うん、ちゃんとステータスにも表示されてるな。
まだ発動はしていないみたいだけど。
せっかく取ったし、発動もしてみよう。
この辺りには基本、魔物は出ないらしいが。
少し集中し、スキルを発動する。
すると、自分を中心に半径100mくらいの範囲の中の生物の気配を感じることができた。
主に鳥が中心で、それなりのサイズの虫の気配も感じることが出来た。
ただ、数が多すぎて少し気になったので、自分の頭より小さな生物は除くように気配察知に集中すると、小さな生物の気配を感じる事は無くなった。
うん、虫の気配はちょっと数が多くて気持ち悪かったから、対象を指定できるのは助かるな。
(ん? なんだこの気配……?)
と、スキルを試していると突然、気配察知のスキルに複数の気配が現れた。
しかし気になるのは、複数の気配の一番前の反応がやけに小さい事と、その後ろの数個の気配がなにやら危ない気配をしている。
(これは…… 追われてるのか……!?)
かなりのスピードで移動していて、もう直ぐ僕の近くにこの気配の群れが到着しそうだ。
どうする……?
悩んでいると、先頭の気配が一つの気配に追いつかれた。
一瞬、その気配が重なったと同時に、弱っていた気配が僕の方にものすごいスピードで迫ってきた。
さっき作ったロングソードを持ち、警戒するが、小さな気配は動きを止めていた。
(……この気配の弱まり方はまずいかもしれない)
このまま放っておくと、弱った気配の主は手遅れになってしまうかもしれない。
そう思うと、体が勝手にその気配の元へと全速力で動き出す。
茂みをかき分け進むと、少し広めのスペースに出た。
そのスペースを囲むように生えている木の一本の根本に、体中ボロボロでぐったりしている黒猫がいた。
サイズは大人の猫と子供の猫の間くらいで、全身真っ黒の毛で覆われているが、所々赤黒く染まっている。
これは、早く治さないと手遅れになる……!
処置をしようと慌てて近寄ると、黒猫は薄く目を開けてこちらを認識した。
「フーッ フーッ」
どうやら、こちらを警戒しているみたいだ。
ただ、体に力が入らないのか、動けないでいる。
「大丈夫、安心して? 痛い事はしない。 ただ君を助けたいんだ」
そう言って、怖がらせないようゆっくりと頭に触れようとする。
すると、頭を少し上げ、近づいてきた僕の手の指目掛けて噛み付いてきた。
「いてて……」
避ける事も出来たが、敢えてここは大人しく噛まれておく。
弱っていて力が入らないようで、そこまで痛いわけでもなかったので。
噛まれた右手はそのままにして、左手で黒猫の頭に触れ、魔法を唱える。
「『メガヒール』」
恐らく、この怪我だとこの前使ったヒールじゃ足りないと思い、それよりも効果が高いメガヒールを使ってみた。
すると、黒猫の体がヒールよりも強い緑色の光に包まれる。
同時に、所々についていた傷が消えていく。
黒猫は驚いたのか、僕の指から口を離し、治っていく傷を眺めていた。
その後、数秒で傷は全部消えたみたいだ。
回復魔法は体力までは回復させられないので、まだ動けないようだが。
「うん、治ったみたいだね。 よかった」
そう言って黒猫の頭を優しく撫でてみると、少しビクッとされたが今度は噛まれなかった。
「「「グルルルルッ…」」」
と、安心したのも束の間、複数の唸り声が聞こえてきた。
気配察知のスキルを展開していたから、近くで様子を伺っているのは気付いていたが、正体はこいつらか。
木の間から姿を現したのは、4匹の青色の狼。
ただ、地球にいるような狼では断じてなく、一目見るだけでも凶暴さが見てとれる。
こいつらに黒猫は襲われていたのか。
そうか、これが…… 魔物か。
ここは森の道に比較的近いから本来この辺りに魔物はいないはずなんだけど、黒猫という獲物を見つけてここまで辿り着いたということか?
黒猫を撫でていた手を離し、立ち上がる。
同じように黒猫も立ち上がろうとしたが、
「無理はしないで。 大丈夫、君のことは必ず守るからそこでじっとしていて?」
と言ったところ、黒猫は立ち上がるのをやめた。
それと同時に、体力の限界が来たのかそのまま目を閉じて眠ってしまった。
僕はロングソードを持ち、構えをとる。
狼たちは一定の間隔を開けながらゆっくりと近づいてくる。
1匹ならなんとでもなるが、4匹に連携されると少し厳しいかもしれない。
それに、高威力の魔法を使うと僕もそうだし、黒猫も巻き込んでしまうかもしれない。
なので、まずは分断することにする。
「『ロックウォール』」
土魔法の中の、壁を作り出す魔法を唱えた。
高さが僕の身長以上ある四角形の土壁が狼のうち2匹を囲む。
これで、分断は出来た。
残された2匹が魔法に驚いているうちに、僕は地を蹴り、狼たちに急接近する。
そのままの勢いで1匹の狼に向かって剣を振るう。
肉や骨を裂く感触が剣を通して伝わってきた。
ウェポンマスターのスキルのおかげか、ほとんど抵抗無く1匹の狼は首を切り落とされ、絶命した。
「グルァァ!」
もう1匹の狼が動きを止めた僕目掛けて、牙を剥き出しにしながら突進してくる。
……こいつらには、仲間が斬られた事に関する動揺とかは無いのか。
魔物っていうのは皆そういうものなのだろうか?
昨日ゲイルさんとか、ギルドとかに聞いておけば良かったな。
そういえば、初めての戦闘なのにやけに視界はハッキリしてるし、思考は落ち着いている。
これは、戦闘職を持っている影響なのだろうか?
狼の牙を横にステップしてかわす、と同時に狼の体をロングソードで深く切りつけた。
狼はそのままの勢いで地面に突っ込み、行動を停止した。
狼はあと2匹残っている。 まだまだ気を抜けない。
何故ここかというと、先ほど作った短剣に付与をするためだ。
武器に付与をしようとすると、槌で金属を叩くのでどうしても音が出て、目立ってしまう。
なので、宿の部屋などで行う訳にはいかなかったのだ。
それに、この森の街道付近は魔物除けのアイテムが効いているため、魔物も近寄ってこないらしい。
たまに近寄ってくる魔物もいるそうだが、冒険者などにその都度倒されているとゲイルさんに聞いた。
(さて、やりますか)
ゲイルさんに贈るダガーもそうだが、僕が使うロングソードも強化しておこう。
まずはダガーからだな。
(付与する魔法は何がいいかな)
耐久値上昇を付与する事は確定しているのだが、後の二つをどうしようか悩む。
ダガーなどの短剣の類の攻撃方法は刺突か斬撃かになると思うが、ゲイルさんはどっち主体なんだろうか?
聞いておけばよかったな。
何を付与するか悩み、付与できる魔法の一覧をぼーっと眺めていると、刺突強化の付与を見つけた。
……この際、どちらも付ければいいか?
攻撃力が上がる付与と言っていたし、いいんじゃないだろうか。
下手に試した事のない付与するよりは分かるものを付与した方がいいだろう。
恐らく刺突強化は斬撃強化と似たようなものだろうから。
(よし、この3つでいこう)
ダガーを置き、付与の槌をアイテムボックス取り出して、付与する魔法をイメージしながら魔力を流す。
魔力は使い過ぎると良くないそうだが、朝に合成、分離のスキルを使った時にMPを100程消費しても市場に行ったりしている間に回復していた。
この自動回復力があれば武器作りには困らないだろう。
なので、惜しみなく魔力を流す。
3つの付与だからか、この前よりも魔力を多く必要とするみたいで、MPが200程減ったところで、槌の打撃面に魔法陣が浮かび上がった。
そして、ダガーに向かって槌を振り下ろす。
キィン……! キィン……!
10回程叩いた所で魔法陣の色が変わった。
そのまま最後の一振りを振り下ろす。
キィィィン……!
ダガーに幾何学模様が刻まれ、数秒かけてその模様が沈み込んでいく。
(……うん、いい感じだ)
鑑定してみても、しっかりと耐久値上昇、斬撃強化、刺突強化が付与されているのが確認できた。
これならゲイルさんに渡しても良さそうな気がする。
喜んでくれるかは分からないが、今僕が作れる中では最高のものが出来た。
ダガーを作り終えたので、今度は僕のロングソードを作り直す作業に入る。
朝やったように分離と合成のスキルを使って、作った2本のロングソードを1本の出来のいいロングソードにすることにした。
なので、アイテムボックスから2本のロングソードを取り出し、再びスキルを使っていく。
ダガーの時と同じように、剣から必要な物質だけを分離させインゴットにし、出来上がった二つのインゴットを今度は一つに合成する。
最後に、そのそれなりに大きくなったインゴットを、鉱物操作を使いロングソードの形にしていくと、
【ロングソード+3(斬撃強化+耐久値上昇)】:
力+140
鋼を使って作られたロングソード。
作成者の力量により、効果を3つ付与することが出来る。
品質もかなり良いため、一般的なロングソードより力のパラメーターの上昇率が高い。
作成者はショーマ=ケンモチ。
+2と+3の剣を合成したからどうなるかと思ったが、出来たのは+3のロングソードだった。
うーん、法則がよく分からないな。
運の可能性もあるので気にするだけ無駄かもしれないが。
それよりも、スキルを使う一連の流れもかなりスムーズになってきた。
今後もこれらのスキルは頻繁に使うと思うし、スピードが上がる分には困る事はないだろう。
けれども、なんでスピードが上がったんだろう?
慣れただけかもしれないが、それにしてははっきりと自覚出来ている。
そこでなんとなく、ステータス画面を開いてみた。
鍛冶師の詳細にスピードが上がった原因とかが書いているかもしれないと思ったので。
そう思ってステータスを見てみたところ、
(レベルが上がってる?)
ショーマ=ケンモチ Lv3 男 17歳
種族:ヒト種
職業:鍛冶師 Lv3 魔導師 Lv3
ウェポンマスター Lv3
スキル:言語知識 Lv10
家事 Lv8
運命神の加護(隠蔽) Lv10
HP:1802
MP:1446
力:361
速:118
技:602
守:178
魔:361
運:1000
スキルポイント:10
なぜかレベルが2つも上がっていた。
原因はスキルを使った事だろうか?
スキルを使うとレベルが上がるものだとしても、こんなに早くレベル上がるものなんだな。
まぁ、まだレベルが低いから、少しスキルを使っただけで経験値がたまったのかもしれないが。
(スキルポイントか…… 何に使うべきかな?)
レベルが上がった事でスキルポイントを得ることが出来たが、何も考えていなかったし、取得できるスキルというのも後回しにしていてまだしっかりとは見ていない。
とりあえず、その確認からするか。
(取得できるスキルの一覧は…… っと、これか。 これまためちゃくちゃ多いな)
ステータスでスキルポイントで取得できるスキルの一覧を開いてみたが、付与の数の比にならないくらい多い。
一応、戦闘系スキルとか、便利系スキルといったように、カテゴリーには分かれているのが救いだな。
(初めてだし、何か取ってみようかな)
物は試しと言うし、何か取ってみることにする。
この調子だと、またすぐレベルは上がるだろうから、貯めていてもしょうがないだろう。
そう思い、なにか便利なスキルはないかと一覧を眺めていく。
戦闘系のスキルは今はいらないし、なにか補助的なスキルを取るつもりだ。
それから10分程探してみて、面白そうなスキルがいくつかあった。
けれど、今回は一つだけ取ってレベルを4まで上げることにする。
あまり低いレベルだと、持っていても意味がなさそうなので。
それから少し考え、1番取りたいと思ったスキルをタップして調べてみる。
【気配探知】:
一定範囲の気配を探知することができる。
探知する対象は指定可能。
レベルが上がると、スキルの有効範囲が向上する。
隠形系統のスキル持ちには効果が薄い。
発動は任意で切り替えることが出来る。
※このスキルを取りますか?→消費スキルポイント1
なぜこのスキルを取ろうと思ったかというと、やはり慎重に行きたいという僕のスタンスからだ。
昨日、ゲイルさんに会った時に、全く人が近づいている事に気付けなかったのを、このスキルを見つけた時に思い出した。
あれがもし、ゲイルさんではなく魔物や悪い人だったらと思うと怖くなったので、対策をすることにしたのだ。
早速スキルポイントを払い、レベル1の気配察知を取得する。
そのまま、2ポイント、3ポイント、4ポイントをそれぞれ払い、気配察知のレベルを4まで上げた。
ショーマ=ケンモチ Lv3 男 17歳
種族:ヒト種
職業:鍛冶師 Lv3 魔導師 Lv3
ウェポンマスター Lv3
スキル:言語知識 Lv10
家事 Lv8
運命神の加護(隠蔽) Lv10
気配察知 Lv4
HP:1815
MP:1452
力:363
速:121
技:605
守:181
魔:363
運:1210
スキルポイント:0
うん、ちゃんとステータスにも表示されてるな。
まだ発動はしていないみたいだけど。
せっかく取ったし、発動もしてみよう。
この辺りには基本、魔物は出ないらしいが。
少し集中し、スキルを発動する。
すると、自分を中心に半径100mくらいの範囲の中の生物の気配を感じることができた。
主に鳥が中心で、それなりのサイズの虫の気配も感じることが出来た。
ただ、数が多すぎて少し気になったので、自分の頭より小さな生物は除くように気配察知に集中すると、小さな生物の気配を感じる事は無くなった。
うん、虫の気配はちょっと数が多くて気持ち悪かったから、対象を指定できるのは助かるな。
(ん? なんだこの気配……?)
と、スキルを試していると突然、気配察知のスキルに複数の気配が現れた。
しかし気になるのは、複数の気配の一番前の反応がやけに小さい事と、その後ろの数個の気配がなにやら危ない気配をしている。
(これは…… 追われてるのか……!?)
かなりのスピードで移動していて、もう直ぐ僕の近くにこの気配の群れが到着しそうだ。
どうする……?
悩んでいると、先頭の気配が一つの気配に追いつかれた。
一瞬、その気配が重なったと同時に、弱っていた気配が僕の方にものすごいスピードで迫ってきた。
さっき作ったロングソードを持ち、警戒するが、小さな気配は動きを止めていた。
(……この気配の弱まり方はまずいかもしれない)
このまま放っておくと、弱った気配の主は手遅れになってしまうかもしれない。
そう思うと、体が勝手にその気配の元へと全速力で動き出す。
茂みをかき分け進むと、少し広めのスペースに出た。
そのスペースを囲むように生えている木の一本の根本に、体中ボロボロでぐったりしている黒猫がいた。
サイズは大人の猫と子供の猫の間くらいで、全身真っ黒の毛で覆われているが、所々赤黒く染まっている。
これは、早く治さないと手遅れになる……!
処置をしようと慌てて近寄ると、黒猫は薄く目を開けてこちらを認識した。
「フーッ フーッ」
どうやら、こちらを警戒しているみたいだ。
ただ、体に力が入らないのか、動けないでいる。
「大丈夫、安心して? 痛い事はしない。 ただ君を助けたいんだ」
そう言って、怖がらせないようゆっくりと頭に触れようとする。
すると、頭を少し上げ、近づいてきた僕の手の指目掛けて噛み付いてきた。
「いてて……」
避ける事も出来たが、敢えてここは大人しく噛まれておく。
弱っていて力が入らないようで、そこまで痛いわけでもなかったので。
噛まれた右手はそのままにして、左手で黒猫の頭に触れ、魔法を唱える。
「『メガヒール』」
恐らく、この怪我だとこの前使ったヒールじゃ足りないと思い、それよりも効果が高いメガヒールを使ってみた。
すると、黒猫の体がヒールよりも強い緑色の光に包まれる。
同時に、所々についていた傷が消えていく。
黒猫は驚いたのか、僕の指から口を離し、治っていく傷を眺めていた。
その後、数秒で傷は全部消えたみたいだ。
回復魔法は体力までは回復させられないので、まだ動けないようだが。
「うん、治ったみたいだね。 よかった」
そう言って黒猫の頭を優しく撫でてみると、少しビクッとされたが今度は噛まれなかった。
「「「グルルルルッ…」」」
と、安心したのも束の間、複数の唸り声が聞こえてきた。
気配察知のスキルを展開していたから、近くで様子を伺っているのは気付いていたが、正体はこいつらか。
木の間から姿を現したのは、4匹の青色の狼。
ただ、地球にいるような狼では断じてなく、一目見るだけでも凶暴さが見てとれる。
こいつらに黒猫は襲われていたのか。
そうか、これが…… 魔物か。
ここは森の道に比較的近いから本来この辺りに魔物はいないはずなんだけど、黒猫という獲物を見つけてここまで辿り着いたということか?
黒猫を撫でていた手を離し、立ち上がる。
同じように黒猫も立ち上がろうとしたが、
「無理はしないで。 大丈夫、君のことは必ず守るからそこでじっとしていて?」
と言ったところ、黒猫は立ち上がるのをやめた。
それと同時に、体力の限界が来たのかそのまま目を閉じて眠ってしまった。
僕はロングソードを持ち、構えをとる。
狼たちは一定の間隔を開けながらゆっくりと近づいてくる。
1匹ならなんとでもなるが、4匹に連携されると少し厳しいかもしれない。
それに、高威力の魔法を使うと僕もそうだし、黒猫も巻き込んでしまうかもしれない。
なので、まずは分断することにする。
「『ロックウォール』」
土魔法の中の、壁を作り出す魔法を唱えた。
高さが僕の身長以上ある四角形の土壁が狼のうち2匹を囲む。
これで、分断は出来た。
残された2匹が魔法に驚いているうちに、僕は地を蹴り、狼たちに急接近する。
そのままの勢いで1匹の狼に向かって剣を振るう。
肉や骨を裂く感触が剣を通して伝わってきた。
ウェポンマスターのスキルのおかげか、ほとんど抵抗無く1匹の狼は首を切り落とされ、絶命した。
「グルァァ!」
もう1匹の狼が動きを止めた僕目掛けて、牙を剥き出しにしながら突進してくる。
……こいつらには、仲間が斬られた事に関する動揺とかは無いのか。
魔物っていうのは皆そういうものなのだろうか?
昨日ゲイルさんとか、ギルドとかに聞いておけば良かったな。
そういえば、初めての戦闘なのにやけに視界はハッキリしてるし、思考は落ち着いている。
これは、戦闘職を持っている影響なのだろうか?
狼の牙を横にステップしてかわす、と同時に狼の体をロングソードで深く切りつけた。
狼はそのままの勢いで地面に突っ込み、行動を停止した。
狼はあと2匹残っている。 まだまだ気を抜けない。
1,050
お気に入りに追加
2,296
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる