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第一章 異世界への旅立ち

#7 異世界の街ハゾット

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「ゲイルさんは冒険者なんですね」
 
「おう、そうだぜ。 普段は俺含めて4人のパーティーなんだが、今日は自由行動だったもんで小遣い稼ぎに薬草とか採取してたんだよ」
 

 街へ向かう道中、ゲイルさんが冒険者であることや街に入る時の注意点などを聞いた。 

 街へ入るためには身分証が必要で、冒険者だったらギルドで発行されるギルドカードで通れるそうだ。

 そういうものを持っていない場合はどうすればいいと尋ねたところ、簡単な検査をして、銀貨一枚を払えば街に入る許可証を発行してもらえるそうだ。 

 ゲイルさん曰く、ここの領主はいい人だから、入場料はかなり安いそうだ。 

 高いところだと金貨を取られるところもあるそう。

 なるべくそんな街には行きたくない。
 

「お、着いたぜ」
 

 ゲイルさんと色々と話していたら、あっという間に着いてしまった。
 
 近くで見ると、かなり防壁が高い。

 10mはないだろうが、6~7mは余裕でありそうだ。

「かなり高い防壁ですね」
 
「そうだな、土魔法使い達が頑張って建てたらしいぜ?」
 
「そうなんですね」
 

 魔法すごいな。 

 僕もやろうと思えばこれくらいの高さの壁作れるんだろうか。

 そんなことを思っている間に、壁と同じく大きな門の前に着いた。

 
「止まれ!」
 

 おそらく門番であろう人が待ったをかけてくる。
 

「怪しい服装だな。 身分証は持っているか?」
 

 めっちゃ怪しまれた。
 

「いえ、持っていません。 検査をすれば通れると聞いたのですが、ダメなのでしょうか?」
 
「確かにそうだが、誰に聞いたんだ?」
 
「俺だよ」
 

 僕の後ろにいたゲイルさんが身を乗り出してくる。
 

「おや、あなたはゲイル殿か。 この者と知り合いで?」
 
「いや、さっき森で会ってな。 相当な田舎から来たみたいで、この辺の事さっぱり分かんないみたいだから案内してやろうと思ってな。 話してみた感じ、危険はないと思うぜ」
 

 なにやらゲイルさんは有名人みたいだ。
 

「あなたがそう言うなら大丈夫でしょうね。 すまない、一応門番だから、怪しい服装の者とかを簡単に通すわけにはいかないんだ」
 
「いえいえ、立場があるんですから当然ですよ。 それで、検査ってなにすればいいんでしょう?」
 
「ああ、こっちに来てくれ」
 

 そう言われて連れてきて来られたのは、占いとかで使うような水晶の前だ。
 

「これに触れてくれればいい」
 
「分かりました」
 

 早速、手の平を水晶の上に置く。
 

「OKだ。 もう離していいぞ」
 
「早いですね。 何が分かったんですか?」
 
「これに触れて水晶が赤く光ると大きな犯罪歴、つまりは殺人や強盗の経験があると分かるんだ。 そう言う経験がなければ何も反応はしない」
 

 便利な道具だな。 

 さすが異世界。
 

「なるほど、便利ですね。 えっと、あとは銀貨一枚を払えばいいんでしたっけ?」

 そう言って、財布から銀貨一枚を取り出す。

「そうだ、これは規則だから1枚は必ず貰う」
 
「分かりました。 でも、銀貨1枚というのは凄い良心的と聞きましたよ?」
 
「ああ、かなりな。 領主様は最初はただでいいと言っていたらしいが、部下に止められて泣く泣く銀貨一枚にしたらしい」
 
「優しい領主様なんですね」
 
「ああ、我々の待遇も良いし、民も殆ど不自由なく暮らすことが出来ているとてもいい街だ。 ほら、これが許可証だ。 出来ればどこかで身分証を作ることをオススメするぞ」
 
「お気遣いありがとうございます。 そうしようと思います」
 
「ああ、いいんだ。 引き止めて悪かったな。 もう通っていいぞ」
 
「ありがとうございます」
 

 色々と教えてくれた門番に別れを告げ、門を通る。

 
「おう、問題なく通れたみたいだな」
 

 先に通っていたゲイルは門の近くで待っていてくれた。
 

「はい、大丈夫でした。 すいません、お待たせしたみたいで」
 
「いいってことよ。 それで、どこに行きたい? 俺らのパーティーはここを拠点にして長いから大体の所は案内できるぜ」
 

 行きたい所は山ほどあるが、最初はさっきの出来事を通して決めている。
 

「最初は服屋に行っていいですか? やっぱりこの格好だと良くも悪くも目立ってしまうので」
 
「ははっ、そうだな。 それじゃあ知り合いがやってる服屋があるからそこに行くか」
 
「よろしくお願いします」
 

 門をくぐったところから、すれ違う人達にすごい見られている。 

 隣にいるゲイルさんを見て皆んな去って行くが。 

 ゲイルさんはかなり顔が広いみたいだ。

 そんな事を思いながらゲイルさんの案内の下、大通りを歩いていく。

 それから門から少し歩いたところで目的地に着いたようだ。
 

「着いたぜ」
 

 そこは、大通りの中だと小さめの店舗で、店先に看板が出ていた。
 

『服飾店 フーリヤ』
 

 看板を見ていたが、ゲイルさんが入れ入れと促してくるので、早速店に入った。
 

「フー! 服売ってくれー!」
 
「うるさいわよゲイル! そんな大声出さなくても聞こえてるわよ…… って、あら?」
 

 服が沢山並べられている店内の奥から現れたのは、明るい緑色の髪を一つに束ねた、キリッとした目元の女性だった。

 
「えーっと、お客様かしら?」
 
「ああ、そうだ。 こいつに服売ってやってくれ」

 
 緑髪の女性は1度こちらを見て、再びゲイルさんに視線を戻して問いかける。
 

「ゲイルの知り合いなの?」
 
「いや、ついさっきウロナの森で会って、遠いところから来て何も分かんねぇみたいだから、この街を案内してるところだ。 見たこともねぇ服装してるし、誰かが一緒にいないと街に入れないんじゃないかと思ったしな」
 
「ふーん、そうなんだ。 まぁ、お客様なら大歓迎よ! 私は店主のフーリヤって言うの! よろしくね! というか本当に見たこともない服着てるわねぇ……」
 
「初めましてフーリヤさん。 ショーマと言います。 出来れば、街にいても目立たない服を売って貰えると嬉しいんですけど、大丈夫ですか?」
 
「もちろんよ! うちで扱う服はどれも質がいいから安心して!」
 
「ありがとうございます」
 

 気のいい人で良かった。 

 なんとなくゲイルさんに口調とか雰囲気とかが似てる気がする。 

 さっきのやり取りを見るに、付き合い長いのかな?
 

「よし! じゃあ、あんたに似合いそうな服見繕ってくるからちょっと待ってて貰える?」
 
「はい、大丈夫です。 ゲイルさんはどうしますか?」
 
「あー、どうすっかな。 フー、どんくらいかかる?」
 
「そんなにかかんないわよ。 あんたも少しくらい服見てけば? たまには着飾んなさいよ。 今日も休みなのに冒険者の仕事してたみたいだし」
 
「いいんだよ、俺は。 着飾るのは動きにくくなるから好きじゃねぇ」
 
「あっそ」
 

 そう言ってフーリヤさんは僕の服を見繕いに行ってしまった。
 

「仲良いんですね」
 
「ん? まぁ、ガキの頃からの付き合いだからな」
 
「ゲイルさんもこの街出身なんですか?」
 
「ああ、16歳の頃に冒険者始めて、各地を転々としてたんだが、今のパーティーになって、この街の領主が変わったって聞いて戻ってきたんだ。 以来、活動しやすいからここを拠点にしてる。 フーが店やってるってのを聞いた時は驚いたな」
 

 ゲイルさんはこの街出身だったのか。 

 話を聞いたところ、良い街になったのは結構最近らしいな。
 

「お待たせ! あんた結構細めだけど、身長がそれなりにあるから、ちょっと試着してみてくれない? なんか違和感があったら教えて?」
 
「分かりました」
 

 服を受け取り、試着室のような場所に入る。 

 仕切りはカーテンではなく木の板だったけど、地球のとそんなに差はないな。

 フーリヤさんが選んだのは、動きやすそうな黒のズボンに白のシャツ、それに茶色のベストのようなものを合わせたもので、ズボンは少し薄めの素材で、ちょっとゴツめの色々つけられそうなベルトで留める形だ。

 パパッと着替えを済ませてしまう。 

 うん、サイズはピッタリだし、着心地もすごい良くて結構素早く動くことが出来そうだ。

 着替え終わったので、試着室を出た。
 

「お、どうだい? 着てみた感じは?」
 
「凄く着やすいです。 いい服だと思います」
 
「それは良かった。 気に入ったんならそれにするかい?」
 
「はい、この服を貰います。 いくらですか?」
 
「あー、それでね、お代なんだけど……」
 

 フーリヤさんが何やら言いにくそうにしている。

 もしかして、この服めちゃくちゃ高かったりするんだろうか……?
 

「お前の服が欲しいんだとよ」
 
「ちょっ! ゲイル! ストレート過ぎるだろ!?」
 
「いや、誤魔化す意味ないだろ。 お前がさっきからショーマの服に興味津々なのは分かってた。」
 
「なにバラしてくれてんだよ! このデリカシーのない脳筋男!」
 
「なんだと!?」
 
「ちょっ……! 待ってください! 喧嘩しないで!」
 

 何故か喧嘩を始めた2人を宥める。 

 少しの間、2人で睨み合っていたが、ショーマの手前もあってかここで喧嘩するのは自重したようだ。
 

「それで、僕の服が欲しいんですか?」
 
「あー……、そうなんだよ。 やっぱり服屋やってる身からすると、珍しい服見ると気になるっていうか、作ってみたいというか……」
 

 最後の方の言葉はごもごもと言いにくそうにするフーリヤさん。
 

「というか、この店の服って全部フーリヤさんが作ってるんですか?」
 
「流石に全部ではないよ。 古着とかは違うし、知り合いにも服作ってるやつがいて、そいつのも並べてるから、私が作ってるのは6、7割ってところかな?」
 

 十分すごいと思う。
 

「それで、さっきの話なんだけど…… その服のお代はいらないから、代わりにあんたが元々着ていた服を譲ってくれないかい?」
 
「いいですよ。 こんな素敵な服を売ってくれたフーリヤさんには感謝してますから。 こんなもので良ければどうぞ」
 
「あんた…… ありがとう! 全く、この性格の良さをゲイルにも見習って欲しいもんだよ」
 
「聞こえてるぞ、フー」
 

 不機嫌そうにゲイルさんがそう言うが、
 

「じゃあ、取引成立ね! 今後も、服が必要になったら、ぜひ来ておくれよ! あんたには精一杯サービスするからさ!」
 
「ありがとうございます。 そうさせてもらいますね」

 
 まるっと無視して僕に対して嬉しいことを言ってくれた。

 
「ゲイルさん、お待たせしました」
 
「おう、いいってことよ」
 

 ゲイルはそう言うとニカっと笑い先に店を出ていく。

 
「今日はありがとね! また来ておくれよ!」
 
「はい、また来ます」
 

 フーリヤと言葉を交わして僕もその後に続く。

 ゲイルによる街案内はまだ始まったばかりだ。
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