転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜

かむら

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第一章 異世界への旅立ち

#6 街に行く前に(2)

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 剣の試し斬りとウェポンマスターを使ってみたいので、何か試し斬りに出来そうなものがないか、辺りを見回してみる。 

 なんかないかなー? 

 お、これなんかいいかな?

 
【ウロナの木の枝】:
 丸太というには細く短く、木の枝にしては太く長めの枝。 
 ウロナという名前の木から折れたもの。 
 かなり硬く魔力の伝導率も良いため、形状を整えれば武器としても使え、魔法使いの杖や高級家具の素材として重宝されている。


 一応、危険がないか鑑定した限り、切っても問題ないみたいだ。 

 硬めの枝みたいだし、試し斬りには丁度いい。

 早速、試し斬りしようと思ったが少し思いついたことがあるので、木の枝をひとまず近くに置いて、あと2つある鉄鉱石の1つを取り出した。

 それでさっきと同じロングソードを作る。
 
 せっかくなので、付与する前と後の切れ味の違いも比較することにした。
 

「よし、これで完成! って、あれ?」
 

 さっきと同じ手順で作ったのだが、完成品を鑑定してみると違いが出た。


【ロングソード+3】:
 力+100 鉄製のロングソード。 
 作成者の力量により、効果を3つ付与することができ、品質もかなり良いため、一般的なロングソードより力のパラメーターの上昇率が高い。 
 作成者はショーマ=ケンモチ。


 そう、さっきと違って、+3がついたのだ。

 さっきと手順は全く同じだったんだけど、なんで差が生まれたんだろう?

 少し考えてみたが、全く分からないので、取り敢えずこの問題は保留にしておくことにした。

 もう鉄鉱石も残り少ないし、検証はまた今度にしよう。

 少し問題は起きたが、+値以外は全く同じのロングソードが用意出来たので、改めてスキルを使って試し斬りをしてみることにする。

 まずは、最初に作った付与ありのロングソードから試すことにし、枝を少し立ててしっかりと剣を持ち、真っ直ぐ構える…… 

 ちょっと待って。

 なんで、こんな自然に構えられたんだ?

 僕は剣道を道場で教わったことはあるが、真剣なんて持ったこともないし、ましてや剣道の構えとは全く違うのに、なんでこんな当たり前のように剣を扱えているんだろう?

 もしかして、これがウェポンマスターの武器操作スキルだろうか?

 まるで、元から知っていたかのように自然に武器を使うことが出来るスキルといったところか。

 今、剣を持ってみた感じ、振るうことにもなんの問題もない気がする。

 ……このスキルも十分やばいな。 

 おそらく、あらゆる武器を今のレベルで使えるだろう。

 またも実験の途中で止まってしまったが、許してほしい。 

 まだ分からない部分が多すぎるし、慎重にいきたいのは間違いないので、ゆっくり一つ一つ検証していきたいと思う。
 
 気を取り直して、今度こそ試し斬りをすることにした。
 
 しっかりと構え、立てられた枝に向かって一息に剣を振るう。

 一瞬の硬直の後、枝はズズっと切断され、地面に落ちた。

 うん、綺麗に斬れたな。

 続けて、付与なしの剣で試してみる。 

 同じように構えて、同じように剣を振ってみた。

 結果は…… 全く同じだった。
 

(うーん…… 違いが分かんない)
 

 どうやら、木の枝ぐらいでは差が生まれないらしい。 


 その後、手頃なサイズの石もあって試してみたが、こちらも差は生まれず、綺麗に真っ二つに切れてしまい、いよいよ手詰まりになってしまった。 

 さて、どうしようか。

 しばらく悩んでいたが、いい考えが浮かばなかったので、これについてもまた別の機会にしようと思う。

 ただその後、魔法付与の槌などの出したものを片付けていて、鉄鉱石を手に取った時に、ふと気付いた。 
 
 この鉄鉱石なら試し斬りとして丁度いいんじゃないかと。

 鉄で出来た剣なんだから、同じ鉄がそう簡単に斬れるとは思えない。 

 そう思い、片付けていた手を止め、再び効果付与されていない剣を持って構えた。

 そして、鉄鉱石を剣を持っている手の反対の手で軽く放り投げた。

 地面に置いても良かったが、そこまで大きい鉄鉱石じゃないので斬りにくいと思い、空中に放り投げてみた。

 さっき石でも同じようにしたのでいけるだろう。

 鉄鉱石が落ちてきて、丁度、僕の胸の高さまで落ちてきたところを上から下に斬りつける。

 結果は、斬れなかった。
 

「おー! 斬れなかった!」
 

 なぜか斬れなかったことに喜んでしまった。

 鉄鉱石は表面が少し削れていたが、特に問題なくその形を保っていた。


(よし、じゃあ付与ありで試してみよう!)
 

 地面に転がった鉄鉱石を拾い上げ、さっきと同じように軽く放り投げる。 

 今度は付与ありの剣を構え、落ちてきたところを上から下に斬りつける。

 ふると、先程とは違って確かな手応えを感じた。

 地面に落ちた鉄鉱石を見てみると、鉄鉱石は石を斬った時と差がないくらいにスッパリ斬れた。 

 見事に真っ二つである。

 時間はかかったが、実験結果が出た。 

 斬撃強化の付与をすると、剣と同じ素材でも斬ることが出来るようになるみたいだ。 

 どれくらいまでが斬れるようになっているのかは分からないが、とにかくかなりの差が生まれることが分かっただけでも、実験は成功と言えるだろう。

 これで一応、全ての職業を試すことが出来た。 

 既に1時間くらい経ったと思うが、有意義だったので疲れとかも感じず、あっという間だった。

 今度こそ、色々試したものの片付けをする。

 2つに割れた鉄鉱石や、木の枝も何かに使えるかもしれないので、一応アイテムボックスにしまっておく。

 剣はどうしようかと思ったが、しまっておく事にした。

 何が常識か分からない以上、常に武器を持っているのはどうかと思うので。

 ただ手ぶらもそれはそれでどうかと思うので、財布である布袋の紐を腰のベルトに括り付けて提げておく。 

 ちなみに財布の中には、金貨が1枚と銀貨が5枚に銅貨が10枚入っていた。 

 持っているお金を鑑定したところ、日本円換算で現在の所持金は約16000円くらいだと分かった。

 1枚で金貨は約10000円、銀貨は約1000円、銅貨は約100円の価値があって、銅貨の下には小銅貨、銅粒ときて、金貨の上は、上から白金貨、王金貨、大金貨となるそうで、白金貨は1枚で1000万円分の価値があるみたいだ。 

 とんでもない。

 そしてようやく片付けも終わり、いざ森を抜けようと歩き出すことにしま。

 そこまで入り組んだ森ではなさそうなので、さっき色々試した場所からも、出口のようなものが木々の隙間から小さく見えていたので、そちらに向けて真っ直ぐ歩く。 

 ただ、なにか生き物が襲いかかってくることも考え、警戒は怠らない。 

 よく読んでいたラノベとかの主人公は、色んなところにどんどん進んでいったけど、いざ転生して同じような立場になってみると、心臓の鼓動がいつもよりかなり早い。 

 さっきまでは、のんきに剣を作っていたりしたけれど、1度、敵が来るかもしれないという考えが出てくると、ものすごく不安な気分になってきた。 

 剣や魔法があるからといって、通用するか試したこともないものに自信なんて持てない。 

 出来れば魔物などが現れないことを願いながら、歩みは止めずに森の出口へと向かう。

 そんな願いが届いたのか、道中特に何も起きずに森の出口に辿り着いた。 

 出口に着いてみて気付いたことだが、森の真ん中を突っ切る形で道が整備されていて、車が二台通れるくらいの道幅があった。 

 その道も荒れたりしていないので、この森は割と安全なのかもしれない。 

 そう思うと一気に安心感が押し寄せてきた。 緊張していてガチガチに力の入っていた肩の力も抜けた。

 森を抜けると、整備された道の向こう、目測で1km先くらいに壁で囲まれた街が見える。 

 初めての異世界の街はあんな感じなのかー。

 少し立ち止まって、初めての異世界の街を眺めていると……
 

「兄ちゃん、そんなとこで突っ立ってなにしてんだ?」
 
「!?」

 
 突然後ろから声をかけられた。

 森を抜け、警戒を解いていたので気付かなかった……!

 慌てて振り返り、声の主から少し距離を取った。

 そこに立っていたのは、腰に短剣を差し、大きめの袋を持った、茶髪で体格の良い男だった。 

「あー、待て待て! 別に襲おうって訳じゃねぇよ! 見たところ兄ちゃん遠いところから来た旅人ってところか?」
 

 そう言われ、自分の服装を確認する。 それは僕が死んだ時に着ていた服と同じ。 

 つまり、異世界の服だった。

 失念していたが、地球の服なんて物珍しさの塊だろう。

 化学繊維なんてこの世界には無さそうだし。
 

「あー、そんなところです。 すいません、この辺りに来たことはなかったので、街の風景を少し眺めていました」
 

 まだ、この人がどんな人かは分からないので少し警戒したまま声をかける。
 

「そうだったのか。 急に声かけたりしてすまなかったな。 兄ちゃんがほぼ手ぶらで軽装だったもんで心配になって声をかけたんだ」
 

 うん、ただのいい人だった。
 

「そうでしたか、ありがとうございます。 えーっと……?」
 
「俺の名前はゲイルだ! 兄ちゃんはなんて名前なんだ?」
 
「ショーマと言います。 心配してくれてありがとうございます。 ゲイルさん」
 
「いいってことよ。 ショーマはこれから街に行くところか?」
 
「はい。 そのつもりです」
 
「そうか! じゃあ一緒に行くか? 俺も採取依頼が終わって帰るところなんだ」
 
「いいんですか?」
 
「おう! あの街、初めてなんだろ? 色々と案内してやるよ!」
 
「ほんとですか? ありがとうございます!」
 

 異世界での初めての出会いはとても良いものになった。

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