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第4話 アカネの実力(2)
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冒険者に登録すると、その証として"冒険者カード"というものを貰える。
冒険者としての証明書だけでなく、魔法を選んだ者は使用できる魔法を確認したり、スキルを選んだ者がスキルの効果を確認したりと、自分のステイタスを見ることが出来るのだ。
***
{冒険者:アカネ
スキル:*`@&$%#への~~##$. ?+**!""#%&''への&%%&'}
クロトはアカネの冒険者カードを確認していた。
本来であれば個人情報に当たるので他人に見せてはいけないのだが、本人の許可を得たので特別に見せてもらっている。
魔法、もしくはスキルの能力から逆算し、戦闘スタイルを見出そうというのが狙いである。
それでカードを確認し、アカネがスキルを選んだことはわかった。
しかし……。
「なぜ、スキルが文字化けしてるんですか?」
薬品開発をするのに、様々な本を読み漁った関係で語学も堪能なのだが、これはどの言語にも当てはまらない。
完全なる文字化けであった。
「わたしもよく分からなくて……ギルドの職員さんにも訊いたんですけど、前例がないらしくて」
「要するに謎ってことですか」
思わずため息を漏れでる。
アカネはその後に再発行を試みたが、結果は同じ。
何度やってもスキルの説明欄が読めなかったらしい。
(どんな効果か分からず、どういった場面で発動し、役に立つのか立たないのかも分からず……か)
効果がわからないなら試せばいいのだが、起動方法すらわからないのなら撃つ手はない。
というわけで、偶然の発動を待ちつつ、別のことをやることにした。
クロトはキョロキョロと辺りを見回すと、何かを見つけたのか草むらへと歩いていく。
「?」アカネはクロトを目で追った。
…………
…………お、いたいた
グエッ!?
…………ほら暴れんなって
ぐぎゃ、ぎゃ!?…………
…………
…………
…………
…………――グギャァアアアアアアあああああッッ!!!!
(え、何この尋常じゃない断末魔!?)
謎の叫びに驚いていると、クロトが姿を現す。
その手には、情けなく舌を出して抵抗のせぬゴブリンが一体。
「とりあえず魔物に一発当てて、威力を確認しましょう」
何事もなく進めようとする。
しかし、黒マスクの下にある笑みは、なんとも不気味であった。
「あの……いったい、何をしたんですか?」
「少々の毒で動かなくさせただけです。気にしないでください」
「は、はぁ……わかりました。えっとぉ、そのゴブリンをどうするんですか?」
「斬ってください」
「え?」
「まずはアカネさんの攻撃の威力を確かめてみましょう。このゴブリンに一撃当ててください」
さすがに動かない敵には当たるでしょ、とクロトはアカネに促す。
「わかりました――ヤァッ!」
アカネは勢いよく剣を上げると、そのままゴブリンの頭目掛けて振り下ろした。
ぺち~~ん
「…………」
「…………」
アカネは間違いなく剣を振り下ろした。
鉄でできた剣である。
で、『ぺち~~ん』である。
「……よし、諦めよう」
「諦めないでください~ッ!」
生まれて16年。初めてクロトは挫折した。
冒険者としての証明書だけでなく、魔法を選んだ者は使用できる魔法を確認したり、スキルを選んだ者がスキルの効果を確認したりと、自分のステイタスを見ることが出来るのだ。
***
{冒険者:アカネ
スキル:*`@&$%#への~~##$. ?+**!""#%&''への&%%&'}
クロトはアカネの冒険者カードを確認していた。
本来であれば個人情報に当たるので他人に見せてはいけないのだが、本人の許可を得たので特別に見せてもらっている。
魔法、もしくはスキルの能力から逆算し、戦闘スタイルを見出そうというのが狙いである。
それでカードを確認し、アカネがスキルを選んだことはわかった。
しかし……。
「なぜ、スキルが文字化けしてるんですか?」
薬品開発をするのに、様々な本を読み漁った関係で語学も堪能なのだが、これはどの言語にも当てはまらない。
完全なる文字化けであった。
「わたしもよく分からなくて……ギルドの職員さんにも訊いたんですけど、前例がないらしくて」
「要するに謎ってことですか」
思わずため息を漏れでる。
アカネはその後に再発行を試みたが、結果は同じ。
何度やってもスキルの説明欄が読めなかったらしい。
(どんな効果か分からず、どういった場面で発動し、役に立つのか立たないのかも分からず……か)
効果がわからないなら試せばいいのだが、起動方法すらわからないのなら撃つ手はない。
というわけで、偶然の発動を待ちつつ、別のことをやることにした。
クロトはキョロキョロと辺りを見回すと、何かを見つけたのか草むらへと歩いていく。
「?」アカネはクロトを目で追った。
…………
…………お、いたいた
グエッ!?
…………ほら暴れんなって
ぐぎゃ、ぎゃ!?…………
…………
…………
…………
…………――グギャァアアアアアアあああああッッ!!!!
(え、何この尋常じゃない断末魔!?)
謎の叫びに驚いていると、クロトが姿を現す。
その手には、情けなく舌を出して抵抗のせぬゴブリンが一体。
「とりあえず魔物に一発当てて、威力を確認しましょう」
何事もなく進めようとする。
しかし、黒マスクの下にある笑みは、なんとも不気味であった。
「あの……いったい、何をしたんですか?」
「少々の毒で動かなくさせただけです。気にしないでください」
「は、はぁ……わかりました。えっとぉ、そのゴブリンをどうするんですか?」
「斬ってください」
「え?」
「まずはアカネさんの攻撃の威力を確かめてみましょう。このゴブリンに一撃当ててください」
さすがに動かない敵には当たるでしょ、とクロトはアカネに促す。
「わかりました――ヤァッ!」
アカネは勢いよく剣を上げると、そのままゴブリンの頭目掛けて振り下ろした。
ぺち~~ん
「…………」
「…………」
アカネは間違いなく剣を振り下ろした。
鉄でできた剣である。
で、『ぺち~~ん』である。
「……よし、諦めよう」
「諦めないでください~ッ!」
生まれて16年。初めてクロトは挫折した。
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