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最終章・転生勇者編

第178話 ずっと一緒に

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 タローとタマコはアンナ=コバルトの墓へと来ていた。
 その場所は、かつて母アンナと父のフレイが出会った場所である。

「久しぶりじゃな、母さま」

 懐かしむような、しかしどこか寂しそうな表情を浮かべ、墓に献花をした。



 ***



 最後に訪れたのは300年と少し前。
 当時は母の墓しかなかったが、その横には新たな墓石が置かれていた。
 そこには、フレイ=コバルトという名が書かれている。

「父さま、母さまと幸せに……」

 タマコの中のフェニックスは、蘇る際の代償として消滅した。
 もう、父は守ってくれない。
 でもそれでいいのだ。
 今頃、天国向こうで母と再会して幸せに見守っていることだろう。
 そう思いながらタマコが手を合わせていると、横にタローが座った。
 すると、アンナの墓に置いてあったボロボロの手紙を手に取る。

「なんだこれ?」
「あぁ、故郷を出るときにな……ここに戻ってくることは無いと思って、母に手紙を書いたんじゃ」

 もう300年もまえのことだ、と付け加える。
 タローは興味を持ち、手紙を読んだ。
 そこには、『今度会う時は彼氏を連れてきます。父さまなんかより、よっぽどいい男をじゃ!』と書かれていた。

「み、見るな!」

 赤面してタローから取り上げた。

「お前、俺と会ったときも一人だったよな?」
「うぐッ!」
「300年も達成されてなかったのか……哀れだな」
「――ぐはッ!」

 なんか久しぶりに独身であることで傷を負った気がする。
 精神にダメージを負ったタマコに、タローは「ま、安心しろよ」と口を開いた。

「これからは、俺が守ってやるからさ――絶対死なせない、今度こそな」
「――ッ」
「ずっと……これからもずっと、お前のそばにいるよ」

 まるで御伽噺の王子のように、片膝をついて告げた。
 今まででは考えられない言動に、思わず頬が紅潮し、口元が緩む。

(~~~~~~ッ! ……それは反則じゃろ///)

 顔を見られまいと、背を向けた。
 平常心に戻ろうとするも、顔のにやけは止まらない。
 そんな彼女の葛藤などつゆ知らず、タローは立ち上がると手を差し出した。

「ほら、そろそろ帰ろうぜ。腹減った」
「……う、うむ」

 タマコはまだ戻らぬ頬の色のまま振り向く。
 そのまま手を握り立ち上がろうとしたときだ――。

「タロー――」

 差し出された手を引いて、彼女は勢いよく立ち上がった。
 その勢いのまま、彼の首に手を回し――唇を塞いだ。

「…………………………ッ? !? !? へ!?」

 突然のことに、タローはこんらんした。
 短いリップ音であったが、確かに触れた唇を思わず手で抑える。

「…………………………///」

 タマコは少しの間だけ俯いたまま動かなかった。
 すると、彼の手を取り走り出した。

「帰ろうか――我が家に!」

 まだほんのり赤い頬で、彼女は微笑んだ。
 それ以降、やっぱり恥ずかしかったのか、タマコが振り返ることはなかった。
 手を握られたまま、タローはしばし惚ける。

 ――マリアを頼んだよ、タローくん。
 ――我儘な娘だけど、よろしくね?

「――え?」

 突然聞こえた二つの声で、現実へと引き戻された。
 タマコの声ではない。
 耳――いや、頭に直接響いた男女の声。
 初めて聞いた声だったが、気のせいか女性の方は覚えがあった。
 声質は違うが、どこかタマコに似ている気がしたのだ。

(よくわかんないけど……わかった!)

 正体は不明だが、きっと悪いものではないのだろう。
 そう捉え、タローは手を引かれるまま歩く。
 大好きな女性と共に――。
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