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最終章・転生勇者編

第153話 終之晩餐

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 スキル:階位昇格レベルアップはユウシの力を上昇させる最強の強化能力である。
 ステータスは一気に上昇し、喰われた分の数値も回復。
 進化が終わるころには、ユウシは完全回復していた。

 スキル:階位昇格レベルアップ
 魔法:全属性魔法
 ステータス:
 LEVEL:79
 攻撃力:29000
 防御力:27000
 速度:28400
 魔力:35004
 知力:1800

 以前のステータスから知力以外の全項目が7000ずつアップしていた。
 アリスに正確な数値はわからないが、喰った分のステータスが回復したことと、強くなったことは本能的に理解できた。

「……ふえたなら、また食べるだけ!」

 身を低くすると、暴食の魔剣ベルゼブブの魔力を身体に纏わせる。
 脱力からの超高速移動を発動。柔軟性の強い体から放たれる、異常な方向からの攻撃をもう一度仕掛けた。
 レベルアップ前ならついていくので精一杯だった。
 けれど今のユウシは。――

「無駄だ。もう見切っている!」

 上がったのはステータスだけではない。上昇した力に対応できるように身体もそれに合わせて進化する。その結果、身体能力と同時に、動体視力も強化されているのだ。

(後方4時からの方向、来る!)

 身をよじった瞬間、そこを暴食の魔剣ベルゼブブの刃が通過した。

「……!」

 鋸歯は空を切る。
 が、回避されたのを認識した直後、アリスは肩の関節を外し、ユウシへと手を伸ばした。

「……食欲旺盛イーター!」

 魔剣で触れれずとも、直接手で触れればステータスを奪える。
 肩を外したことにより可動域も拡大した。
 回避し油断したところを狙った完璧な不意打ちだ。
 しかし。――

「言っただろう。見切っているとな!」

 ユウシはその行動も見えていた。
 魔法で足裏に風を発動させると、圧縮させた空気を蹴り、第二の魔の手をも回避する。

「……ッ」

 完璧に回避されたことに驚く。が、ユウシはそれだけでは終わらない。
 今度は炎を剣に纏わせると、刃が赤く変色。
 その剣で、先ほどと同じ刺突を放った。

「――聖火の剣ウェスタ!」

 その刺突は、凄まじい速さでアリスへと迫った。
 今度は足場にされた盾も、足場とならぬよう構えていない。
 避けようにもできない状況にアリスは。

「……まだ、おわらない!」

 暴食の魔剣ベルゼブブを横薙ぎに振るい、刺突の軌道をずらした。
 赤い剣と暴食の刃がぶつかり合う。
 アリスの方が攻撃力は下だ。力負けしてしまうが、直撃は避けられた。
 しかし、全くの無傷とはいかない。

「………………」

 アリスの頬から、紅が滴る。
 刃は一瞬だけ頬を掠めていたのだ。

(いける! 倒せるぞ!)

 やっと見えた勝機に、ユウシは少しばかり安心した。
 Sランク冒険者No3の実力者、アリス・ワンダーランドの攻略も近い。
 着実に上がっていく実力を実感していると、アリスは血を手の甲で拭った。

「……そう。もうあなたはべつじんなのね」

 それは負けを認めた言葉ではなく、素直な賞賛だった。
 初めは恐怖に怯えていた青年が、今や立派な勇者として自分の前に立ち、尚且つ自分を上回ろうとしているのだ。 
 タローの時とはまた違った、面白さを感じると、アリスは笑い始めた。

 うふふ。
 うふふふふ。
 うふふふふふふふふふふ……――

 あの不気味な笑い声だ。
 そしてそれを止めたときだ。少女は静かに口を開いた。

「……いくよ、ほんきで」

 アリスの雰囲気が変わった。
 全身から湧きたつ殺気と食欲。そして、赤黒いオーラ。
 ユウシと同じく、オーラに包まれると、徐々にその身体に変化が起こる。
 掌、手の甲、二の腕、脹脛、頬、うなじと、いたるとこに口が発生したのである。

「それが、君の本気……なのか」

 オーラが収まると、そこに可愛らしい少女はいなかった。

 モンスター? 
 怪物?
 いや怨霊? 
 それとも妖怪だろうか?
 どれをとっても、そのおぞましさを説明できる言葉が見つからない。

 それほどまでの、異形の姿だった

「……こ」「れ」「があ」「リスノ、」「さい大」「解ホウだ」「ヨ」

 全身にある口が、それぞれ喋りだす。
 不気味、おぞまし、恐ろしい、気持ち悪い。
 不快な気持ちが一気にこみ上げるのを感じた。

 これがアリスのスキル:食欲旺盛イーターの最大解放。
 名を。――

「……終之晩餐クイノコスコトナカレ
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