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最終章・転生勇者編

第137話 強欲に勝利を

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 自分が強いヤツかどうか知る方法を教えてやる。

 まず、自信のあることはあるか?
 オレの場合は腕っぷしの強さ。喧嘩の強さだ。
 誰にも負けねぇと思っていたよ。

 で、そんなときに、自分よりスゲェ人間が唐突に現れるとする。

 そのときお前はどうする?
 自分より遥かに才能のあるソイツを見たとき、お前はどんな行動をとる?

 才能の違いに絶望して、全てを諦めるか?
 それとも。
 強敵だろうと笑って、果敢に挑戦するか?

 強いヤツは後者だ。

 そしてこの理論で行くならば、オレは間違いなく――

 弱い人間だ。

 そりゃあ、そんな奴に出会っちまったら絶望もすんだろ。
 積み重ねたものが崩れ落ちて、オレでは敵わないと思っちまうだろ。
 けれど、それを認めるのが嫌で、復讐しようとやけになり、ムサシにあっけなく負けた。

 結局オレは、ムサシというもう一人のバケモンに触れ、もう一度絶望した。
 そして無敵のバケモンを真っ向から倒したアイツに、オレはようやく理解したんだ。

 オレには才能が無い、と。――

 どんなに努力しても、どんなに足掻こうと、手を伸ばしても、アイツには届かない。
 それだけの差を、ただただ身に染みて感じた。
 そのとき、オレは自分が弱いことを認めた。

 もうやめようかとも思った。

 自慢の拳で砕けない防御力。自慢の拳より強い攻撃力。アイツは全てにおいてオレの上を行ってるんだから。

 けど、そんなオレがもう一度リベンジしようと思ったのは、相棒のおかげだった。


『おいクロス。何やってんだよお前?』
『ヒッヒッヒ……マリアに送る手紙を考えていたのだ』

 それはいつものストーカー行為。もちろん成功したことはない。
 当たって砕け、当たって砕けの繰り返しだ。

『懲りねぇなお前も。何で諦めないんだよ?』

 それは、自然とこぼれた疑問の声だった。

『……吾輩が、"欲しい"と思ったからだ』

 クロスは珍しくオレを真っすぐ見て口を開いていた。
 それはまるで友達のように。兄弟のように。親のように。優しく感じた。

『欲しいのになぜ諦めなければならないのだ?
 一度失敗したから、百回失敗したから、千回失敗したからか?

 わからんだろ。1001回目で成功するかもしれないだろ?

 どんな一手が成功するのか失敗するのかなんて、誰にもわからんだろ?』

 それはクロスなりの激励だったのかもしれない。
 きっとこいつは気付いていたんだ。オレの心が折れていることに。

『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、だ。

 何度でも挑め。何度でも負けろ。

 欲しろ。ただ、"強欲"の赴くままに。――』

 それはクロスらしい、強欲の魔剣マモンの所有者らしい、何とも強欲な激励だった。
 呆れてしまうほうが正しかったのかもしれない。

 だが、生憎オレもバカな男だ。
 口角をいっぱいに上げ、目をギラつかせた。

『諦めねぇよ。
 オレは最強になる男だからなッ!』

 そのとき、オレの心火は再び灯った。


 オレは何度でも挑戦する。

 人はこれを、無謀と言うだろう。
 無理だと嗤うだろう。

 あぁ、いくらでも嗤え、馬鹿にしろ。

 オレは必ず勝利を掴み取る。

 そして最高のリベンジと共に――

 オレを嗤ったヤツを、大口開けて嗤ってやるからよ。
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