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最終章・転生勇者編

第134話 戦闘は突然に……第二弾

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 そこは静かな渓谷。
 誰も立ち入らないような場所には、一人の男が座禅を組んでいた。
 耳と鼻にピアス、ネックレスに指輪と大量のアクセサリー。上半身は裸であるが、その鍛えられた肉体が美しい、赤みのある髪色の男。

 Sランク冒険者、アキラ・アマミヤだ。

 タローに敗北し、続けざまにムサシに敗北。
 僅差での敗北ならまだしも、アキラはこの二人にキズ一つ付けられないという大敗を喫していた。
 いや、この二人だけではない。
 レオン・フェルマーの戦略、アリス・ワンダーランドの防御力。
 戦闘タイプではないシャルルを除けば、アキラの実力はラン・イーシンの少し上。
 だが、ランは魔王ジードと融合することで、タローに傷をつけられるほどのパワーを手に入れた。

(Sランクの中で、オレは一番弱ェ……)

 自分が最強だと思ってきたアキラにとって、これほどの屈辱は無い。
 だが、アキラは決して心が折れることはなかった。

(最弱上等じゃねぇか……ッ!)

 超える壁が高いほど、やる気に満ちる。
 アキラはそんな男であった。

(レオンを超える。ムサシを超える。そして、タローも秒で超えてやらぁッ!)

 いつもの精神統一を終えると、アキラはシャドーボクシングを始めた。
 これはタローやムサシを倒すために行っている、アキラのである。
 まだ実践に使えるレベルには達していないが、1か月以内には完成するだろうと見込んでいた。
 そうして順調に力をつけ、リベンジに燃えるアキラだった。

 と、そこへ近づく者が五人。その中の一人が話しかけた。

「――Sランク、アキラ・アマミヤだな?」
「あん?」

 アキラが後ろを振り向くと、そこにいたのは男一人に女四人のパーティだった。
 その一団を目にしたとき、アキラはすぐに正体を見抜いた。

「お前……転生者か?」

 一瞬で見破ったことを訝しげに思い、思わず眉間にしわが寄った。

「よくわかったな」
「まぁお前からは強ェヤツ特有の雰囲気が出てるしな。それに――」
「?」
「いや、いい。それよか、転生者様がオレなんぞに何の用だ?」

 アキラが何かを言いかけたが、それは口にしなかった。
 少し気になるユウシだったが、今は目的を果たすのが先なので用件を伝えることにした。

「単刀直入に言う。……おれと戦え!」

 唐突な申し出であった。が、その瞬間にアキラは走り出していた。

「よしわかった、試合開始だッ!」

 アキラは一気に詰め寄りユウシに拳を繰り出した。
 ユウシの後ろにいた4人は不意を突かれ反応できていない。
 だが、勇者はそう簡単に行く相手ではない。
 ユウシは左手の指輪を展開すると、黄金の盾が出現し、アキラのパンチを防いだのだった。

「……いきなり攻撃とは無粋だな」
「喧嘩に合図は無ぇんだよ、バカがッ!」

 アキラは拳を引くと、即座に強烈な後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

「ッぐ――」

 ユウシは楯で防いでいたが、その強烈な衝撃により後方へと吹き飛んでいった。
 盾を持っていた手が痺れるのを確認し舌打ちするユウシ。
「チッ」
 すぐに4人の仲間が駆け付け安否を確認するが、目線はアキラを捉えていた。
 キララが回復を施していると、アキラはゆっくりと歩き近づいてくる。

「そういやぁ、お前の名前聞いてなかったなぁ……」

 拳を鳴らしながらギロリと睨むその目からは、セイバーたちも息を呑むほどの殺気が感じられた。
 その瞬間に理解する。

 Sランクと自分たちの、圧倒的なまでの差を。――

「――みんな、下がっていてくれ」

 回復が終わると同時に立ち上がったユウシが命令を下す。
 セイバーたちは悔しがりつつ、その場から離れた。
 それを確認すると、ユウシは右手の指輪も展開させ、剣を手に持った。

「おれはユウシ。転生者であり、勇者だ」
「アキラ・アマミヤ。いずれ最強の座に君臨する男だッ」

 転生者と転移者。
 両雄の戦いの幕は切って落とされた。
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