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幕間(2)
第126話 釣り
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とある海岸で釣りをしている二人がいた。
一人はダルンダルンの服でおなじみのタロー。釣り竿に変形させた怠惰の魔剣でただひたすらターゲットを狙っている。
そしてもう一人は、和柄の羽織がトレードマークのムサシだ。腰に憤怒の魔剣を帯刀しているが、彼は釣り竿も持っておらず、どうやらタローが釣るのを待っているようだ。
「釣れないな」ボヤくタロー。
「気長に待つしかないね」ムサシも退屈そうだが、どこか楽しそうな雰囲気もあった。
つい先日まで争っていた者同士ではあるが、ムサシはタローと剣を交えてから色々と考えを変えた。
かつて大事な姉を守れなかった無力感に囚われ、自分を憎むことしかできなかったムサシ。
己の無力が許せず剣を振るい続けたが、タローと戦ってからは自分の弱さを受け入れることで前へ進むことができると認識した。
全ての憎しみが消えたわけではない。けれどムサシは確実に未来へと歩みだしたのである。
さて、そんな二人がなぜ海岸で釣りをしているかということだが。
実はここいらの海にアイランドシャークという巨大なサメのモンスターが出没しているらしいのだ。
すでに数隻の漁船が襲われており早急に討伐をしなければならないという。
それを引き受けたムサシだったが、偶然洞窟から帰ってきた途中のタローに出くわしたので誘ってみたら二つ返事でタローが了承し、二人で討伐に来たというわけである。
が、アイランドシャークも高難度のモンスター。そう簡単に捕まるような雑魚ではない。
「ホントに釣れるのか怪しくなってきたな」
「警戒心が強いみたいだし、ちょこちょこ竿を動かして誘おう」
「釣ったあとは頼むぞ?」
「そこは任せてよ。きっちり3枚におろすから」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
ピクッ
「お?」
「あ」
ピクッ ピクッ
「来てる来てる」
「まだ引っ張らないでね。もう少し待ってからだよ……」
ピクッ ピクッ
「よしよし、そのままそのまま」
「もう少し、もう少し」
ピクッ
ピクッ
ピクッ
ピクッ!
「よっしゃいまだぁああッッ!!」
ターゲットがエサに食いついた瞬間、タローは力の限り竿を引いた。
ちなみにタローの使用しているのはリール付きの釣り竿ではない。なので力のみで引っ張り上げなければならない。
が、腐ってもタローは攻撃力『測定不能』を叩き出している男である。
たとえ相手が全長60メートルを超えるモンスターでも、相手にならなかった。
「ブオォォオオオオオオオ!!!!」
アイランドシャークは咆哮しながら空中へと勢いよく投げ出される。
空中では身動きがとれていない様子のアイランドシャーク。
そして一瞬でも隙を見せた相手を切り刻むことは、ムサシにとっては造作もないことであった。
「コイツなら技もいらないな」
そう口にすると、居合いの構えのまま空中へと跳ぶ。
サメに近づいた瞬間、打刀の魔剣を抜刀する。目にも止まらぬ速さの剣が一閃すると、アイランドシャークは宣言通り3枚におろされたのであった。
「ナイスぅ~」
「そっちもね」
二人の最強がハイタッチすると同時に、さばかれたアイランドシャークは地上へと落下するのだった。
***
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
倒したアイランドシャークを依頼人に届けるとそれはそれは喜んでくれた。
報酬ももらったので帰りにご飯を食べに店に寄ろうかと話ていたとき、依頼人が気になったことを言う。
「いや~ついこの間"勇者"様に倒してもらったのに、今年はついてないな~」
「え、勇者?」
反応したのはムサシだ。
詳しく教えてくれと頼むと、依頼人は気前よく話す。
「一か月前かな。もっとデカいアイランドシャークが出たんだが、たまたま勇者様が通りかかってくれてな? 一撃で倒してくれたんだよ」
物語の英雄を思い出すように目をキラキラさせながら話していた。
それをムサシは無言で見つめていた。
***
「勇者って、なんなの?」
帰り際にタローが訊いた。
「一言で表すなら……"ハイブリッド"、かな」
ムサシは頭を掻きながらそう答えた。
聞きなじみのない言葉にタローは余計わからなくなった。
「詳しいことはわからなくていいよ。
あ、でも勇者を一発で見分ける方法があるんだよ?」
「そうなん?」
「うん。なんたって勇者は――」
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
一人、夜道を歩くタロー。
ムサシと別れ帰路を進みながら考えていた。
(勇者、か……)
まだ会ったことのない勇者。
まだ会うかもわからない勇者。
けれどタローは確信しているのだ。
「どーせ、また面倒事に巻き込まれるんだろーな」
嫌な予感をしつつ、そうならないこと願う。
が、残念ながら彼の予感通り巻き込まれるのだ。
なぜならタローは、主人公だから。
一人はダルンダルンの服でおなじみのタロー。釣り竿に変形させた怠惰の魔剣でただひたすらターゲットを狙っている。
そしてもう一人は、和柄の羽織がトレードマークのムサシだ。腰に憤怒の魔剣を帯刀しているが、彼は釣り竿も持っておらず、どうやらタローが釣るのを待っているようだ。
「釣れないな」ボヤくタロー。
「気長に待つしかないね」ムサシも退屈そうだが、どこか楽しそうな雰囲気もあった。
つい先日まで争っていた者同士ではあるが、ムサシはタローと剣を交えてから色々と考えを変えた。
かつて大事な姉を守れなかった無力感に囚われ、自分を憎むことしかできなかったムサシ。
己の無力が許せず剣を振るい続けたが、タローと戦ってからは自分の弱さを受け入れることで前へ進むことができると認識した。
全ての憎しみが消えたわけではない。けれどムサシは確実に未来へと歩みだしたのである。
さて、そんな二人がなぜ海岸で釣りをしているかということだが。
実はここいらの海にアイランドシャークという巨大なサメのモンスターが出没しているらしいのだ。
すでに数隻の漁船が襲われており早急に討伐をしなければならないという。
それを引き受けたムサシだったが、偶然洞窟から帰ってきた途中のタローに出くわしたので誘ってみたら二つ返事でタローが了承し、二人で討伐に来たというわけである。
が、アイランドシャークも高難度のモンスター。そう簡単に捕まるような雑魚ではない。
「ホントに釣れるのか怪しくなってきたな」
「警戒心が強いみたいだし、ちょこちょこ竿を動かして誘おう」
「釣ったあとは頼むぞ?」
「そこは任せてよ。きっちり3枚におろすから」
「……………………」
「……………………」
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「……………………」
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ピクッ
「お?」
「あ」
ピクッ ピクッ
「来てる来てる」
「まだ引っ張らないでね。もう少し待ってからだよ……」
ピクッ ピクッ
「よしよし、そのままそのまま」
「もう少し、もう少し」
ピクッ
ピクッ
ピクッ
ピクッ!
「よっしゃいまだぁああッッ!!」
ターゲットがエサに食いついた瞬間、タローは力の限り竿を引いた。
ちなみにタローの使用しているのはリール付きの釣り竿ではない。なので力のみで引っ張り上げなければならない。
が、腐ってもタローは攻撃力『測定不能』を叩き出している男である。
たとえ相手が全長60メートルを超えるモンスターでも、相手にならなかった。
「ブオォォオオオオオオオ!!!!」
アイランドシャークは咆哮しながら空中へと勢いよく投げ出される。
空中では身動きがとれていない様子のアイランドシャーク。
そして一瞬でも隙を見せた相手を切り刻むことは、ムサシにとっては造作もないことであった。
「コイツなら技もいらないな」
そう口にすると、居合いの構えのまま空中へと跳ぶ。
サメに近づいた瞬間、打刀の魔剣を抜刀する。目にも止まらぬ速さの剣が一閃すると、アイランドシャークは宣言通り3枚におろされたのであった。
「ナイスぅ~」
「そっちもね」
二人の最強がハイタッチすると同時に、さばかれたアイランドシャークは地上へと落下するのだった。
***
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
倒したアイランドシャークを依頼人に届けるとそれはそれは喜んでくれた。
報酬ももらったので帰りにご飯を食べに店に寄ろうかと話ていたとき、依頼人が気になったことを言う。
「いや~ついこの間"勇者"様に倒してもらったのに、今年はついてないな~」
「え、勇者?」
反応したのはムサシだ。
詳しく教えてくれと頼むと、依頼人は気前よく話す。
「一か月前かな。もっとデカいアイランドシャークが出たんだが、たまたま勇者様が通りかかってくれてな? 一撃で倒してくれたんだよ」
物語の英雄を思い出すように目をキラキラさせながら話していた。
それをムサシは無言で見つめていた。
***
「勇者って、なんなの?」
帰り際にタローが訊いた。
「一言で表すなら……"ハイブリッド"、かな」
ムサシは頭を掻きながらそう答えた。
聞きなじみのない言葉にタローは余計わからなくなった。
「詳しいことはわからなくていいよ。
あ、でも勇者を一発で見分ける方法があるんだよ?」
「そうなん?」
「うん。なんたって勇者は――」
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
一人、夜道を歩くタロー。
ムサシと別れ帰路を進みながら考えていた。
(勇者、か……)
まだ会ったことのない勇者。
まだ会うかもわからない勇者。
けれどタローは確信しているのだ。
「どーせ、また面倒事に巻き込まれるんだろーな」
嫌な予感をしつつ、そうならないこと願う。
が、残念ながら彼の予感通り巻き込まれるのだ。
なぜならタローは、主人公だから。
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