バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

魔剣争奪戦編

第74話 (^・ω・^)

　取っ組み合いの真っ最中。
　突然聞き覚えのある声が耳に届き、タローとタマコはそちらに顔を向けた。
　そこに居たのは巨乳のシスター。もといシャルル・フローラル。
　そしてその使い魔のエロ吸血鬼。もといリアム＝エリス＝アメジストである。

「え、エリス！？ どうしてここにおるんじゃ！？」

　二人の姿を確認し、最初に声を上げたのはタマコだ。
　その声は驚きが感じられ、おおよそ旧友との再会とは思えない一声であった。
　だが、それなのにエリスは何故かニヤニヤしてタマコらを見る。

「ウフフ。マリア～、こんな場所ところで男の子襲うなんて……やるわね～♡」

　今のタローとタマコの姿勢は、タローが下になり、タマコが上からタローの肩を抑えて覆いかぶさっている状態である。
　エリスとシャルル、というか第三者からすると、どう見てもタマコがタローを無理やり襲って、情事をしようとしているようにしか思えなかった。
　タマコは初めは何を言っているのかわからなかったが、改めて自分とタローの姿を確認すると一瞬でその頬が染まった。

「な、ななななな！！！ 違う！ 襲ってなどおらん！」

　すぐさま起き上がりタローから離れる。
　必死に両手を前に突き出し否定するが、どうやら手遅れのようであった。

「マリア様！ 愛しあうことは素敵でございますが……こ、こんなところではダメですぅ！
　せめて清潔な寝具の上で行うべきです！ //」

　タマコの言葉を遮るように口を開くシャルル。
　だが悲しいかな。
　その助言はどこかズレていた。
　彼女はムッツリなところがあるから、どうやらそれも相まって……まぁこの話はいずれするとして。
　とにかく彼女はバチクソ勘違いをしてしまっていたのだ。

「だーかーら！ 愛し合ってねーから！」

　煽るエリスと天然シャルルの怒涛の攻撃は凄まじい。
　しかし、タマコは諦めず説得を試みる。

「まぁ落ち着けよタマコ」

　すると、ここでようやくもう一人の当事者が参戦した。
　タローはポケットに手を入れて、なんか無駄にカッコよく登場する。

　そしてこういうとき、大体タローはふざけるのであった。

「……俺たちは、もっと深い関係だろ//」

　タマコの頭をそっと優しく抱きしめた。
　一瞬だけドキッとするタマコであったが、微妙に口元が震えているのを見て気づいた。

「最悪のタイミングでボケなくてよいわ！」

　タローがほぼ笑っているのを見て、その顔面に拳を叩きこむ。
　しかし、さすがはタロー。意にも介さずただただ笑い転げた。

「キャー！ やっぱり彼氏なんじゃない！」

　タローのボケだと気付いていたが、エリスもふざけてタマコを茶化す。

「エリス！ お前は一旦黙れ！」

「あ、愛し合う以上の関係// ……はわわわわ～//」

　が、ド天然シャルルは普通に信じてしまい無駄に生々しい妄想が脳内で再生された。

「おいドスケベシスター！ なんかとんでもねぇ想像したじゃろ！？」

　タマコの何度目かのツッコミが轟いた。

　爆笑するタロー。
　茶化すエリス。
　自分の妄想でパンクして気絶するシャルル。

「(^・ω・^)」
（訳：………………）

　とりあえず見守るプー。

　その場は混沌カオスが渦巻くとんでも空気となった。

　これは、タマコがキレて魔法を放つまで続いたという。