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魔剣争奪戦編

第70話 レオン&アルバートvsクロス(2)

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 レオンが指を刺した方向に歩き始めてから5分ほど経った時であった。

「……主殿、ちょっといいか?」

 タマコが前を歩くタローへと話しかける。

「どーした?」

「スマンが、急用が出来たので少しこの場を離れたいのじゃが……」

「少しってどのくらい?」

「……5分くらい」

 タローは時間を聞くと、その程度なら問題ないと判断。

「じゃあ俺らここで待ってるわ」

「(^・ω・^)ノシ」
(訳:いってらっしゃい~)

 タマコは後ろ姿のまま手を振ると、そのまま草葉の陰へと消えていった。


 ・・・・・・・
 ・・・・・
 ・・・


 クロスは魔法で水を強欲の魔剣マモンへと付与すると、水面ギリギリに剣を振るった。

「水斬り!」

 刃から水の斬撃が飛んでいく。
 斬撃は水面を跳ね、その大きさと鋭さを増していった。

「ヒッヒッヒ……<水斬り>は水面を跳ねた分だけ威力を増すぞ!」

 斬撃は10回跳ねたところでレオンに迫る。

「確かに威力は凄いですが――やはり芸がありませんね!」

 レオンは斬撃が当たる寸前に跳躍。
 近くにあった別の岩を使いながらクロスに近付いた。
 あっという間に距離は短くなり、レオンが傲慢の魔剣ルシファーを届かせようとする。

「――ヒッヒッヒ……いいのかそんなに近付いて?」

「ッ!」

 レオンが足場の岩に着地した瞬間、足元の水源から水の棘が出現する。

「――っと!」

 足を狙った奇襲だったが、レオンはなんとか反応。
 着地と同時に後ろへ切り返して回避する。
 しかし、それはクロスの狙い通りだった。

水弾スプラッシュ!」

 クロスは二個目の魔法を使用。
 レオンが着地しようとしていた岩を先に破壊してしまった。

「くっ!」眉間に皺を寄せるレオン。

「ヒッヒッヒ……落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ!」

 川に落ちればクロスの独壇場だ。
 どうしようもできない水の牢獄によりレオンは殺されるだろう。

「――落ちろと言われて落ちる人はいませんよ!」

 絶体絶命のピンチ。
 けれどSランク冒険者は伊達ではない。
 レオンは躊躇なく破壊された足場へと着地――だが、水の中へ入ることはなかった。

「何だと?」

 怪訝に思うクロスの目線の先には、いつの間にか仕掛けられていたワイヤーを足場にして空中へ大きく跳び上がったレオンの姿があった。
 レオンはそのまま岸へと戻り、無事に帰還してみせる。

(……なんだあれは?)

 レオンから目を離したつもりはない。
 動きを読み誘導したが、罠を仕掛けた素振りも仕掛けた瞬間すら見受けられなかった。
 だとすれば何かの魔法か、転移者ならばスキルの可能性もある。
 そして、それはクロスにとって考える必要はない。
 なぜなら、からだ。

強欲の魔剣マモン――真相心理ザ・リアル!」

 強欲の魔剣マモンの能力は相手の心理を見抜く力。
 トリックが不明でも、頭の中を覗けば口に出したのと一緒だ。

「ヒッヒッヒ……さぁどんな技を使ったのだーー」

 真相心理ザ・リアルにより、クロスの頭にレオンの思考が流れ込む。


(3.14159265358979323846264338327950288419716939937510582097494459230781640628620899862803482534211706798214808651328230664709384460955058223172535940812848111745028410270193852110555964462294895493038196442881097566593344612847564823378678316527120190914564856692346034861045432664821339360726024914127372458700660631558817488152092096282925409171536436789259036001133053054882046652138414695194151160943305727036575959195309218611738……――)


「――ブヌォ!?」

 頭に流れたのは、大量の円周率の羅列であった。
 しかも桁数が尋常じゃない。
 ほぼ全桁網羅しているレオンの記憶力。
 のべ31兆桁以上の数字を一瞬で頭に詰め込まれたクロスの頭はもちろんパンクを起こした。

「な、な、なななななナンダ!?」

 軽くパニックを起こすクロスに対し、レオンは飄々と語った

「情報収集は怠っていませんのでね……強欲の魔剣マモン対策はしていますよ」

 レオンは事前に強欲の魔剣マモンを調べ、能力が『思考読解』ということは既知のことであった。
 魔剣の能力は防ぐのが困難で、対処方法は限られている。
 一番簡単なのは、同じく魔剣を使って能力を防ぐことだ。
 傲慢の魔剣ルシファーのみならず、他の魔剣でも魔力を解放することによって能力を防ぐことはできる。
 最初、アルバートもそれを進言したのだが――

『いえ、不用意に魔剣を使うのは避けたいです。それでは後半に体力が保たない可能性がある』

 との理由により、魔剣の力を使う案は却下となった。
 そこでレオンが出した代替案が、『常に別の思考を浮かべる』であった。
 最初は心配していたアルバートであったが、クロスの様子を見て成功を確かめると、ホッと胸を撫で下ろした。

「くぅおんぬぉ……荒技を使いよってからに!」

 頭を押さえるクロスの目が眩む。
 何とか立ち上がろうとするも、フラフラして上手くバランスが取れない。

(チッ……荒療治だが仕方ない)

 するとクロスは足場にしていた岩から降り、水の中へ飛び込む。
 頭を冷やし、一度冷静になろうと――

「おっと、危ないですよ」

 飛び込んですぐにレオンが忠告した。
 すでに川へと飛び込んだクロスであったが、忠告の意味はすぐに理解した。

(――む?)

 クロスは足元に違和感を感じた。
 よく見ればそれは、円盤状のナニかだ。

(!? ま、マズイ――)

 クロスが慌てて地上に出ようとしたところで、
 ドカァァーーンッッ! 
 そのナニかは大爆発を起こし、大きな水柱を上げた。
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