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魔剣争奪戦編
第60話 タローvsジード(2)
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魔剣争奪戦が始まる前日、ジードとランは修行を終えて拠点としている宿のベッドで二人、身を休めていた。
お互いに衣服は着用せず、上から布団をかけて身を寄せ合っている状態だ。
窓から見える月を眺めながら、ジードはランに語った。
『もしかしたら青龍変化を使ってしまうかもしれない』
それはジードが一度だけ使ったと聞いていた嫉妬の魔剣の能力の一つだ。
自身を青い龍の姿に変え、素の状態より高い威力の技を放てる。
だが、ジードはそれを一度しか使用していなかった。
『ボクはその力を……制御できない。もしかしたら、キミを傷つけてしまうかもしれないんだ……』
ジードが青龍変化を一度しか使わなかった理由は、あまりの強大さ故に力を抑えられないこと。
簡単に言うと"暴走"してしまうのだ。
ジードは横で聞いているランの頭を撫でると、寂しそうな、そしてどこか覚悟を決めたような顔をしていた。
『この戦いは、ボクにとっては遊びではない。
……いや、それはたぶん皆もそうだ。各々がそれぞれ違う理由をもってこの戦いに挑んでくる。
死にもの狂いで向かってくるだろう』
『ジー君……』
『ラン。もしボクが暴走してしまったら、そのときは――』
『ボクを、殺してくれ』
『――え?』
ジードはランを手に掛けることだけはしたくなかった。
だからこそ、そうなるくらいであるならば自分が死んだほうがマシだと考えた。
意を決して頼まれた愛する者の頼み。
それに対して彼女の答えは――
『――いやッス』
もちろん、NOだ。
『ジー君が死んじゃったら自分……生きてる意味、、無くなっちゃうッス、よ……』
ランは涙を流して、ジードの願いを拒否する。
『ラン……』
『もしもジー君が暴走したら、自分が是が非でも止めるッス!
そんでそんで、また次の日から一緒に修行するッスよ!』
涙を拭いて笑顔を見せるラン。
それを見てジードは一瞬ポカンとするも、すぐに笑みをこぼした。
『……ありがとう、ラン』
自分は死ぬ覚悟をしていたのに、愛する彼女は一緒にこの未来も生きていくことを考えていた。
その事実に、ジードは自分が惨めに思えてしまった。
(やっぱり敵わないな……ランには……)
ジードはランを抱き寄せ、口づけをした。
『絶対に勝とう!』
『もちろんッスよ!』
ジードとランは再びキスをすると、明日の戦いに備えて眠りについた。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
空でとぐろを巻きながらタローを睨みつける青い龍。
眼光は赤く輝き、尻尾の先には巨大化した嫉妬の魔剣が一体と化している。
「ウォォォオオオオオ゛オ゛!!!!」
ジードの嫉妬に反応し、嫉妬の魔剣はたらふくその感情を喰った。
それにより魔力が急激に膨れ上がり、能力の強制解放という形で暴走したのだ。
――青龍変化――
青き龍へと姿を変えたジードの意識は、今や奥深くへと沈み、残ったのは狂いきった嫉妬。
体長100mにもなる巨体から出る殺気は一部の木々を枯らすほどだ。
「コロシテヤル……コロシテヤルゾォオ゛オ゛!!!」
体表に蒼い電撃を迸らせると、口から大出力の雷撃を放つ。
だが暴走状態で放たれた雷撃の大きさは周りの被害を考えていなかった。
攻撃範囲に入っているのはタローと、そしてタマコとランだ。
「何やってんだ馬鹿野郎ッッ!!」
タローは怠惰の魔剣を巨大な傘に変化。
タマコとランの位置にできるだけ近づくと、上空へと傘を展開させる。
そして端には放電用にいくつもの避雷針を魔力で疑似再現した。
「ヴオオオオオオ゛オ゛ッッ!!!!」
怠惰の魔剣と雷撃がぶつかり合い激しい突風が吹き荒れる。
蒼い雷撃が衝撃で広範囲に飛び散り、一部の木は引火。
瞬く間に燃え広がると、その炎はタローとジードを囲むようにドーム状に形成されていった。
「これは……」
「オマエヲコロス……バショ、ダァ……」
青龍之雷で燃えた炎は操ることができる。
その能力を使いジードはタローを殺すための闘技場を作ったのだ。
「殺すのはルール違反……って聞こえてないっぽいな」
タローは対話で宥めるのをやめた。
ジードの言葉が本人のものではないと気づいたからである。
(暴走……してんのか?)
タローは棍棒の形状に戻した怠惰の魔剣を右手で持ち、視線をジードから離さなかった。
今まで紙一重で躱したり防御したりしていたが、明らかに先ほどよりも雷撃の威力と速度は上がっている。
タローは超人ではあるが、完璧超人ではない。
パワーは強くても、速さでは勝っていないのだ。
鬼のような反射神経で何とかしてきたが、油断は大敵である。
「……イクゾ」
ジードは攻撃態勢に入った。
身を縦に回転させながら尻尾の嫉妬の魔剣で斬りかかる。
もちろん全身に蒼雷を纏ったおまけ付きである。
「青龍輪尾!」
高速で回転する蒼雷を纏う刃。
目では追えぬほどの速さ――しかし!
「――ここか!」
タイミングを合わせて横薙ぎに振るわれた怠惰の魔剣が見事に嫉妬の魔剣を捉えた。
だが、回転のスピードと雷撃、青龍状態パワーが組み合わさり、その威力は先ほどのジードとは比べ物にならないほど上がっていた。
「っん!」
もう何度目かの鍔迫り合いだが、初めてタローが力でおされてしまった。
地面を抉りながら後退するタローの隙をジードは逃がさない。
大口を開け、身体を渦巻いてとぐろ状にすると、そのままドリルのように回転しながらタローへと突進する。
「青龍迴胴!」
ジードの牙が、回転しながらタローへと迫ってくる。
「うおゎ!」
牙が体に触れる前に、足に渾身の力を込めて駆け出す。
それにより何とか躱すが、ジードはそのまま地面を掘って姿を消してしまった。
「……? どこだ……」
警戒して気を張り巡らせる。
集中して地面を観察すると、タローの足元ピンポイントで地が割れた。
「――マジかよ!?」
タローの足元を地面ごと噛み砕いて現れた青龍。
咄嗟のことで躱すのも間に合わず、タローは青龍の口の中へと落下する。
「オワリダァアアア゛ア゛ッッ!!」
ジードは噛み砕くため口を閉じようとした。
だがしかし――
「……食われるわけにゃいかねーんだわ」
タローは怠惰の魔剣を長い一本の棒状に変化させ、ジードが口を閉じるのを邪魔した。
「コザカシイマネヲォッッ!」
ジードはタローを吐き出し空中に放り出す。
すると、ジードは最初に撃った雷撃を準備した。
「クラエッ――青龍雷声!」
特大の雷撃がタローに向かって放たれる。
タローは空中で態勢を整えると、怠惰の魔剣に魔力を大量に纏わせた。
「ったく……いいかげん目ぇ覚ませ!」
タローは雷撃に向かって力いっぱい魔剣を振るった。
その技は、過去に蘇生する腐敗竜を葬った技。
蒼い雷撃と高出力魔力。
互いに地形を変えるほどの威力を持った、最大の攻撃が激突した。
お互いに衣服は着用せず、上から布団をかけて身を寄せ合っている状態だ。
窓から見える月を眺めながら、ジードはランに語った。
『もしかしたら青龍変化を使ってしまうかもしれない』
それはジードが一度だけ使ったと聞いていた嫉妬の魔剣の能力の一つだ。
自身を青い龍の姿に変え、素の状態より高い威力の技を放てる。
だが、ジードはそれを一度しか使用していなかった。
『ボクはその力を……制御できない。もしかしたら、キミを傷つけてしまうかもしれないんだ……』
ジードが青龍変化を一度しか使わなかった理由は、あまりの強大さ故に力を抑えられないこと。
簡単に言うと"暴走"してしまうのだ。
ジードは横で聞いているランの頭を撫でると、寂しそうな、そしてどこか覚悟を決めたような顔をしていた。
『この戦いは、ボクにとっては遊びではない。
……いや、それはたぶん皆もそうだ。各々がそれぞれ違う理由をもってこの戦いに挑んでくる。
死にもの狂いで向かってくるだろう』
『ジー君……』
『ラン。もしボクが暴走してしまったら、そのときは――』
『ボクを、殺してくれ』
『――え?』
ジードはランを手に掛けることだけはしたくなかった。
だからこそ、そうなるくらいであるならば自分が死んだほうがマシだと考えた。
意を決して頼まれた愛する者の頼み。
それに対して彼女の答えは――
『――いやッス』
もちろん、NOだ。
『ジー君が死んじゃったら自分……生きてる意味、、無くなっちゃうッス、よ……』
ランは涙を流して、ジードの願いを拒否する。
『ラン……』
『もしもジー君が暴走したら、自分が是が非でも止めるッス!
そんでそんで、また次の日から一緒に修行するッスよ!』
涙を拭いて笑顔を見せるラン。
それを見てジードは一瞬ポカンとするも、すぐに笑みをこぼした。
『……ありがとう、ラン』
自分は死ぬ覚悟をしていたのに、愛する彼女は一緒にこの未来も生きていくことを考えていた。
その事実に、ジードは自分が惨めに思えてしまった。
(やっぱり敵わないな……ランには……)
ジードはランを抱き寄せ、口づけをした。
『絶対に勝とう!』
『もちろんッスよ!』
ジードとランは再びキスをすると、明日の戦いに備えて眠りについた。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
空でとぐろを巻きながらタローを睨みつける青い龍。
眼光は赤く輝き、尻尾の先には巨大化した嫉妬の魔剣が一体と化している。
「ウォォォオオオオオ゛オ゛!!!!」
ジードの嫉妬に反応し、嫉妬の魔剣はたらふくその感情を喰った。
それにより魔力が急激に膨れ上がり、能力の強制解放という形で暴走したのだ。
――青龍変化――
青き龍へと姿を変えたジードの意識は、今や奥深くへと沈み、残ったのは狂いきった嫉妬。
体長100mにもなる巨体から出る殺気は一部の木々を枯らすほどだ。
「コロシテヤル……コロシテヤルゾォオ゛オ゛!!!」
体表に蒼い電撃を迸らせると、口から大出力の雷撃を放つ。
だが暴走状態で放たれた雷撃の大きさは周りの被害を考えていなかった。
攻撃範囲に入っているのはタローと、そしてタマコとランだ。
「何やってんだ馬鹿野郎ッッ!!」
タローは怠惰の魔剣を巨大な傘に変化。
タマコとランの位置にできるだけ近づくと、上空へと傘を展開させる。
そして端には放電用にいくつもの避雷針を魔力で疑似再現した。
「ヴオオオオオオ゛オ゛ッッ!!!!」
怠惰の魔剣と雷撃がぶつかり合い激しい突風が吹き荒れる。
蒼い雷撃が衝撃で広範囲に飛び散り、一部の木は引火。
瞬く間に燃え広がると、その炎はタローとジードを囲むようにドーム状に形成されていった。
「これは……」
「オマエヲコロス……バショ、ダァ……」
青龍之雷で燃えた炎は操ることができる。
その能力を使いジードはタローを殺すための闘技場を作ったのだ。
「殺すのはルール違反……って聞こえてないっぽいな」
タローは対話で宥めるのをやめた。
ジードの言葉が本人のものではないと気づいたからである。
(暴走……してんのか?)
タローは棍棒の形状に戻した怠惰の魔剣を右手で持ち、視線をジードから離さなかった。
今まで紙一重で躱したり防御したりしていたが、明らかに先ほどよりも雷撃の威力と速度は上がっている。
タローは超人ではあるが、完璧超人ではない。
パワーは強くても、速さでは勝っていないのだ。
鬼のような反射神経で何とかしてきたが、油断は大敵である。
「……イクゾ」
ジードは攻撃態勢に入った。
身を縦に回転させながら尻尾の嫉妬の魔剣で斬りかかる。
もちろん全身に蒼雷を纏ったおまけ付きである。
「青龍輪尾!」
高速で回転する蒼雷を纏う刃。
目では追えぬほどの速さ――しかし!
「――ここか!」
タイミングを合わせて横薙ぎに振るわれた怠惰の魔剣が見事に嫉妬の魔剣を捉えた。
だが、回転のスピードと雷撃、青龍状態パワーが組み合わさり、その威力は先ほどのジードとは比べ物にならないほど上がっていた。
「っん!」
もう何度目かの鍔迫り合いだが、初めてタローが力でおされてしまった。
地面を抉りながら後退するタローの隙をジードは逃がさない。
大口を開け、身体を渦巻いてとぐろ状にすると、そのままドリルのように回転しながらタローへと突進する。
「青龍迴胴!」
ジードの牙が、回転しながらタローへと迫ってくる。
「うおゎ!」
牙が体に触れる前に、足に渾身の力を込めて駆け出す。
それにより何とか躱すが、ジードはそのまま地面を掘って姿を消してしまった。
「……? どこだ……」
警戒して気を張り巡らせる。
集中して地面を観察すると、タローの足元ピンポイントで地が割れた。
「――マジかよ!?」
タローの足元を地面ごと噛み砕いて現れた青龍。
咄嗟のことで躱すのも間に合わず、タローは青龍の口の中へと落下する。
「オワリダァアアア゛ア゛ッッ!!」
ジードは噛み砕くため口を閉じようとした。
だがしかし――
「……食われるわけにゃいかねーんだわ」
タローは怠惰の魔剣を長い一本の棒状に変化させ、ジードが口を閉じるのを邪魔した。
「コザカシイマネヲォッッ!」
ジードはタローを吐き出し空中に放り出す。
すると、ジードは最初に撃った雷撃を準備した。
「クラエッ――青龍雷声!」
特大の雷撃がタローに向かって放たれる。
タローは空中で態勢を整えると、怠惰の魔剣に魔力を大量に纏わせた。
「ったく……いいかげん目ぇ覚ませ!」
タローは雷撃に向かって力いっぱい魔剣を振るった。
その技は、過去に蘇生する腐敗竜を葬った技。
蒼い雷撃と高出力魔力。
互いに地形を変えるほどの威力を持った、最大の攻撃が激突した。
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