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魔剣争奪戦編
第43話 もう一つの戦い
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タローとアキラの戦いが始まる少し前、タマコは一人中回復薬の原料の一つである"ナニカシラキキ草"を探していた。
何かしらに効きそうな名前だが、本当にこれが中回復薬の原料なのか心配になる。
ちなみに回復薬には
小回復薬
中回復薬
大回復薬
完全回復薬
この4種類が存在する。
小は軽傷に、大が重症に、中は小と大の間の傷に、完全回復薬は死にかけに使うというようなイメージで大丈夫だ。
基本的にケガをしないタマコたちには無縁ともいえるが、他の冒険者には必要不可欠だ。
必要ないのはタローくらいである。
で、その回復薬の材料はというと……
「――あー……しっかし見つからないのぉ……枯れたのか?」
草をかき分け探しているが、一向にお目当ての物は見つからなかった。
別段珍しくもない"ナニカシラキキ草"ではあるが、今日に限って何故かその姿は見られない。
この場所では毎年大量に生えているというのに、なにがあったのだろうか。
タマコが懸命に探す中、突然大きな音が森に響いた。
「……タロー?」
耳のいいタマコはすぐに音の出所を特定する。
先ほどの爆音は岩を砕いたような音。そして、この場所に岩のある場所は川辺くらい。
タローはむやみやたらに物を破壊することは無い。
つまり、誰かが攻撃をしたことになる。
「平和じゃないのぉ……」
嘆息するタマコだったが、特に心配はしていなかった。
タローのことである。何とかするだろう。
そう思い、捜索を再開する。
だが、そうは問屋が卸さない。
タマコに話しかける者が現れた。
「ヒッヒッヒ……久しぶりだなマリア……」
振り返る前に正体を察する。
魔王になって数年たった時に出会った、もう一人の魔王の声。
気色悪い笑い声。
そして、嫌な思い出が掘り起こされる。
「……魔王クロスか?」
恐る恐る振り返る。
できれば人違いであってほしい。
「ヒッヒッヒ……吾輩だ」
吾輩だった。
とても嫌な気持ちになる。
「ヒッヒッヒ……いい加減に吾輩を見ると嫌な顔するのやめろ。吾輩の心がガラスだったらとっくに砕けとるぞ?」
(砕けりゃいいのに……)
「ヒッヒッヒ……本当に思うんじゃない」
クロスは少し残念そうな顔をしながらタマコを睨む。
「で、何の用じゃ?」
「ヒッヒッヒ……もうわかっているだろう?」
その一言に、タマコは押し黙る。
確かに一つだけ思い当たる節はある。
だからこそ、タマコはそれに触れたくなかった。
「……何度も言ったじゃろう。私はお前に付き合う気はない!」
語気を強くして拒否の意思を示すが、全く意に介さずクロスはただ不気味に笑った。
「ヒッヒッヒ……ならば仕方ない――」
クロスは魔方陣から一振りの剣を取り出した。
タマコはそれを見て目を細めた。
かつて自分が持っていたソレにそっくりの威圧感。
「……強欲の魔剣、か」
魔王だけが持つことを許された"魔王の証"。
世界に7振り存在する魔剣の一本。
【強欲の魔剣】
サーベル型の魔剣で、所有者の"強欲"の感情を喰らう。
「マリア、力尽くで貰っていくぞ!」
クロスはタマコに切りかかる。
タマコも魔方陣から刀を取り出す。
サーベルと刀が激しい鍔迫り合いを繰り広げるが、分が悪いのはタマコであった。
「ヒッヒッヒ……聞いたぞマリア。怠惰の魔剣を人間に渡したらしいな?」
クロスは余裕の態度で口を開くが、マリアには答える余裕はなかった。
タマコが使っているのは黒弦刀と言うれっきとした名刀である。
しかし、名刀程度では魔剣の強さには遠く及ばない。
魔剣の放つ強力な威圧感は並みの名刀を凌ぐ。
「人間に魔剣はもったいない……吾輩がもらってくれよう!」
魔剣の魔力を高めるクロス。
押し切られかけるタマコだったが、刀の弦を指ではじいた。
「振音!」
音の振動で刃の切れ味を上げる。
だがこれだけではない。
「斬音!」
刃から音の斬撃が飛ぶ。
クロスはそれを察知して後ろに後退した。
二柱の魔王に距離が生まれる。
後退したクロスは大した傷も負ってはいない。
しかし、タマコは少し息を乱した。
(さすがは魔剣、か……出力が違いすぎるのぉ……)
正直言って魔王としての実力はタマコが勝っている。
素の実力なら押し切れる自信がタマコにはあった。
ただ一つ。魔剣という一つの要因がそれを覆していた。
そして強欲の魔剣は、自分の音魔法と相性が良くない。
(一気に魔法で攻めるか……いや、ここは一旦――)
「一旦退く、か?」
「――ッ!」
タマコは自分の考えが読まれていることに不快感を覚える。
だがそんなことを気にしている場合ではない。
自身の音魔法の最大の利点は、攻撃が見えないということだ。
見えない音の攻撃を防ぐのは不可能に近い。
タローですら音魔法を躱すことはできなかった。
しかし、それを可能にするのがクロスの魔剣である。
「わかる。わかるぞ……お前の考えがわかるぞぉぉ……」
魔剣を手元で回しながらタマコに視線を送る。
タマコはまた、それを不愉快に感じる。
強欲の魔剣
その能力の名は"真相心理"
相手の思考を読むことができる能力である。
(ここは音撃で――)
「ヒッヒッヒ……音撃でも撃つか?」
「……ッ!」
厄介な相手に当たったと、タマコは眉間にしわを寄せた。
魔王:ハンター=クロス=トパーズ
武器:強欲の魔剣
魔法:???
ステータス
攻撃力:6479
防御力:5001
速度 :3082
魔力 :5182
知力 :1903
何かしらに効きそうな名前だが、本当にこれが中回復薬の原料なのか心配になる。
ちなみに回復薬には
小回復薬
中回復薬
大回復薬
完全回復薬
この4種類が存在する。
小は軽傷に、大が重症に、中は小と大の間の傷に、完全回復薬は死にかけに使うというようなイメージで大丈夫だ。
基本的にケガをしないタマコたちには無縁ともいえるが、他の冒険者には必要不可欠だ。
必要ないのはタローくらいである。
で、その回復薬の材料はというと……
「――あー……しっかし見つからないのぉ……枯れたのか?」
草をかき分け探しているが、一向にお目当ての物は見つからなかった。
別段珍しくもない"ナニカシラキキ草"ではあるが、今日に限って何故かその姿は見られない。
この場所では毎年大量に生えているというのに、なにがあったのだろうか。
タマコが懸命に探す中、突然大きな音が森に響いた。
「……タロー?」
耳のいいタマコはすぐに音の出所を特定する。
先ほどの爆音は岩を砕いたような音。そして、この場所に岩のある場所は川辺くらい。
タローはむやみやたらに物を破壊することは無い。
つまり、誰かが攻撃をしたことになる。
「平和じゃないのぉ……」
嘆息するタマコだったが、特に心配はしていなかった。
タローのことである。何とかするだろう。
そう思い、捜索を再開する。
だが、そうは問屋が卸さない。
タマコに話しかける者が現れた。
「ヒッヒッヒ……久しぶりだなマリア……」
振り返る前に正体を察する。
魔王になって数年たった時に出会った、もう一人の魔王の声。
気色悪い笑い声。
そして、嫌な思い出が掘り起こされる。
「……魔王クロスか?」
恐る恐る振り返る。
できれば人違いであってほしい。
「ヒッヒッヒ……吾輩だ」
吾輩だった。
とても嫌な気持ちになる。
「ヒッヒッヒ……いい加減に吾輩を見ると嫌な顔するのやめろ。吾輩の心がガラスだったらとっくに砕けとるぞ?」
(砕けりゃいいのに……)
「ヒッヒッヒ……本当に思うんじゃない」
クロスは少し残念そうな顔をしながらタマコを睨む。
「で、何の用じゃ?」
「ヒッヒッヒ……もうわかっているだろう?」
その一言に、タマコは押し黙る。
確かに一つだけ思い当たる節はある。
だからこそ、タマコはそれに触れたくなかった。
「……何度も言ったじゃろう。私はお前に付き合う気はない!」
語気を強くして拒否の意思を示すが、全く意に介さずクロスはただ不気味に笑った。
「ヒッヒッヒ……ならば仕方ない――」
クロスは魔方陣から一振りの剣を取り出した。
タマコはそれを見て目を細めた。
かつて自分が持っていたソレにそっくりの威圧感。
「……強欲の魔剣、か」
魔王だけが持つことを許された"魔王の証"。
世界に7振り存在する魔剣の一本。
【強欲の魔剣】
サーベル型の魔剣で、所有者の"強欲"の感情を喰らう。
「マリア、力尽くで貰っていくぞ!」
クロスはタマコに切りかかる。
タマコも魔方陣から刀を取り出す。
サーベルと刀が激しい鍔迫り合いを繰り広げるが、分が悪いのはタマコであった。
「ヒッヒッヒ……聞いたぞマリア。怠惰の魔剣を人間に渡したらしいな?」
クロスは余裕の態度で口を開くが、マリアには答える余裕はなかった。
タマコが使っているのは黒弦刀と言うれっきとした名刀である。
しかし、名刀程度では魔剣の強さには遠く及ばない。
魔剣の放つ強力な威圧感は並みの名刀を凌ぐ。
「人間に魔剣はもったいない……吾輩がもらってくれよう!」
魔剣の魔力を高めるクロス。
押し切られかけるタマコだったが、刀の弦を指ではじいた。
「振音!」
音の振動で刃の切れ味を上げる。
だがこれだけではない。
「斬音!」
刃から音の斬撃が飛ぶ。
クロスはそれを察知して後ろに後退した。
二柱の魔王に距離が生まれる。
後退したクロスは大した傷も負ってはいない。
しかし、タマコは少し息を乱した。
(さすがは魔剣、か……出力が違いすぎるのぉ……)
正直言って魔王としての実力はタマコが勝っている。
素の実力なら押し切れる自信がタマコにはあった。
ただ一つ。魔剣という一つの要因がそれを覆していた。
そして強欲の魔剣は、自分の音魔法と相性が良くない。
(一気に魔法で攻めるか……いや、ここは一旦――)
「一旦退く、か?」
「――ッ!」
タマコは自分の考えが読まれていることに不快感を覚える。
だがそんなことを気にしている場合ではない。
自身の音魔法の最大の利点は、攻撃が見えないということだ。
見えない音の攻撃を防ぐのは不可能に近い。
タローですら音魔法を躱すことはできなかった。
しかし、それを可能にするのがクロスの魔剣である。
「わかる。わかるぞ……お前の考えがわかるぞぉぉ……」
魔剣を手元で回しながらタマコに視線を送る。
タマコはまた、それを不愉快に感じる。
強欲の魔剣
その能力の名は"真相心理"
相手の思考を読むことができる能力である。
(ここは音撃で――)
「ヒッヒッヒ……音撃でも撃つか?」
「……ッ!」
厄介な相手に当たったと、タマコは眉間にしわを寄せた。
魔王:ハンター=クロス=トパーズ
武器:強欲の魔剣
魔法:???
ステータス
攻撃力:6479
防御力:5001
速度 :3082
魔力 :5182
知力 :1903
応援ありがとうございます!
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