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タイタン編

第1話 冒険者の街に

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 タローが家を出発してから1週間ほど経ったころ。
 タローの目の前には大きく立派な門がある。
 ここは、世界の中心国と呼ばれるほど栄えた場所。

 その名を――《タイタン》――

 門には門番がいるが、特に入国審査のようなものはなく自由に出入りできたため、タローはすんなりと入れたのである。

「たしか《タイタン》は "冒険者の街" とも言われてるんだっけ…」

 静かにタローは呟いた。
 タローが言うように、この世界では冒険者という仕事がある。
 この世界には、いわゆるモンスターが生息しており、毎年のように被害が出ていた。
 だが、そのモンスターから採取できる角や皮などの身体の一部ドロップアイテムは強力な回復薬や解毒剤などの薬の原料にも重宝され、モンスターはこの世界ではなくてはならない存在となっている。
 ちなみにタローの住んでいた田舎町はちょうどモンスターの生息地域から外れており、被害などもなく、平和な町だった。

 それ故に――

「冒険者って……なにやる仕事なんだ?」

 タローは冒険者が何なのかを理解していなかった。



 ***



 《タイタン》に着いてから1時間ほど経過したころ。
 タローは現在、街の待ち合わせ場所としてよく使われている大きな噴水のある場所。その近くに備え付けられているベンチに腰かけていた。

 近くにあった屋台で昼食を済ませると、タローはぼんやり空を眺めだした。

「あー、働きたくねぇ……」

 最初は(就活頑張るぞ!)と思っていたが、いざやろうとすると、もう一人の自分(自堕落な自分)が邪魔をして一向にやる気が出ない。
 1番厄介なのは、このもう一人の自分が強過ぎて言いなりになるしかないことだ。
 別の街へ行こうかと思ったが、もう歩きたくないし、何より面倒くさいし、更には両親が持たせてくれた最低限のお金も底をつきかけている。

(どっちみちお金は稼がないとなぁ……)

 そう思い、重い腰(ガチで重い重い腰)を上げたとき、ある掲示板が目にまった。
 近づいて見てみると、そこには『冒険者募集中!』と書かれていた。

「冒険者って確か仕事だったよな……」

 タローは冒険者についてそれほど理解はしていないが、とりあえず仕事だと言うことは知っている。
 だが、読者のみんなは分かっているだろうが、冒険者というのは命がけの仕事である。
 気軽に手を出して死んでいった人たちが何人もいるのだ。

 そう気軽に手を出してはいけないのだ――








「なんか冒険って楽しそうだし、やってみっか!」


 まぁ、そもそも冒険者を理解していないタローバカには通じないんだけどね!





 ***



 ――タイタン・ギルド本部――





 俺の名前はドラムス。ここタイタンのギルドマスターをしている。
 歳は48。ちなみに独身だぜ、俺ぁよ!
 あん?
 そんな歳で結婚できないなんて恥ずかしくないのかって?



 がっはっはっ! はっ倒してやろうかコノヤロー。



 まぁいい。

 そろそろナレーションに集中しねぇとなぁ。



 ここには毎日ガラの悪そうな連中が集まる。

 まぁ毎回命がけで仕事してたら、日常でもその雰囲気が出ちまうのはしょうがないことだ。

 だが、俺から言わせれば、仕事とプライベートで肩の力をきちんと抜ける奴がプロフェッショナルってやつだと思うぜ?

 そんなことどうでもいいんだがな。慣れてくればできることだしな。
 そう、大事なのは慣れるまで頑張ることだ。
 頑張っても頑張っても自分で慣れてないと思ったら、その仕事は向いてないってことさ。

 と、仕事中にこんなこと言ってる暇があるのか気になるか?

 がっはっは!
 大丈夫だ。
 なにせ……

「今日は暇だからな……」

 そう、今日は珍しく暇なんだ。
 いや冒険者はいるぜ?
 けど、依頼がちょっとな。

 俺は冒険者の依頼が張り出される掲示板をちらりと見る。
 そこには、難度Aや難度B+と書かれた紙がちらほら。
 んで、ここにいる冒険者はDクラスからCクラスまでの冒険者のみで、ランクにあった依頼は無い。
 今日はめずらしく難度CやDが少なくて、朝に全部売れちまった。
 ここにいる連中は、また新しく依頼が来ないか待っているのだ。
 依頼は基本午前からだが、緊急の依頼に時間は関係ないからな。

「はぁ……」俺は一つデカいため息をつく。

(もうちょい生きのいい冒険者はいねぇのか)

 そう俺が心の中でぼやいていると。

 コツコツと足音が聞こえてきた。

 ちなみにこの建物ギルド本部には大きな武器を持った冒険者が入りやすいように入口のドアは開けたままになっている。

 そしてソイツは受付にいた俺に話しかけた。

「冒険者ってのやってみたいんだけど」

 ソイツは、黒いズボンにサンダル。袖がだるんだるんに伸びたシャツを着ていた。
 ちなみに目はぼんやりしている。所謂 "死んだ魚の目" をしていた。

(大丈夫かコイツ……)

 少し心配になったが、冒険者になりたいって言ってるんだったら断ることはできないからな。
 俺は引き出しに入っている冒険者登録用紙を取り出した。

「これに記入したら俺に渡せ。そしたら完了だ」

 そう言って渡すと、ソイツは「りょ」と言って紙に記入し始めた。

(こいつは敬語使えねぇのか……)

 まったく、近頃の若い奴と来たらだらしない。
 お客様は神様だが、店員はその神様の崇拝者じゃねぇんだ。
 お互いに敬意をもって接したら、お互いが気持ちよく働けてwinwinになるんだから、そこら辺を勘違いしちゃいけねぇんだっつぅの!



 ……いや、俺店員じゃねぇんだけどよ。



 そんなことを考えている間に、ソイツは俺に紙を渡した。
 記入し終えたようだ。
 登録用紙の内容は主に、

 1.名前
 2.年齢
 3.種族
 4.出身地
 5.希望職業

 この5つだ。
 種族っていうのはこの世界にはたくさんの亜人がいて、猫人族や小人族、巨人族、妖精族エルフなどがいる。
 5の希望職業だが、剣士や僧侶、盗賊や魔法使いなどがある。
 それに合わせてギルドでは武器を支給する。
 初めての時はだいたいその武器を使い、金を稼いだら自分の武器を買うってゆう流れだ。

(さて、コイツの希望職業はっと……)


 1.名前:タロー
 2.年齢:18
 3.種族:人間
 4.出身地:田舎
 5.希望職業:バイト





(……バイトって何?)

 俺は、そこで思考を停止した
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