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終 白の章
十七
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双方の旌旗が揺れる。范雎軍からは、以前のような逸る気配を感じない。
(覚悟を決めたか)
総大将は范雎が務めているが、奴の本分は権謀術数にある。
前の戦では感情に逸った戦だった。だが、今は己の本分を理解し、副将である猛鷔に指揮を託していると見える。
猛鷔は卓越した技量はないが、堅実な戦をする男というのが、白起の見立てであった。事実、猛鷔は奇策を得意としない。一見、愚直とも見える、兵の進め方を好む。
故に驕りや油断による隙が陣形に生じにくい。数の差がもろに、戦況に影響を与える戦では、猛鷔はかなりの強敵といえよう。
だが、白起に生きて帰るつもりなど微塵もない。今や国に牙を剥けた、謀反人の汚名を着せられている。幾ら戦巧者の白起とて、自国に弓を引いた以上、逃げ場などないのだ。
(此方とて、当に覚悟は出来ている)
両軍の狭間で、竜巻が起こり、砂塵を舞い上げる。剣を抜き放ち、柄頭を合わせる。
「決戦だ」
白髪が煌めき、風に触れられたかのように立ち上がる。
闘志が頂点に達する。総身に漲るのは神気。白起の神気にあてられて、麾下一万が得物を抜き放つ。
伝播する気魄。砂塵が霧散した刹那―。両軍が同時に吶喊した。
闘気が中空で爆散。
「出るぞ」
愛馬の肚を腿で締め上げる。
一万が白き勇者が駆けた軌跡を辿る。
(覚悟を決めたか)
総大将は范雎が務めているが、奴の本分は権謀術数にある。
前の戦では感情に逸った戦だった。だが、今は己の本分を理解し、副将である猛鷔に指揮を託していると見える。
猛鷔は卓越した技量はないが、堅実な戦をする男というのが、白起の見立てであった。事実、猛鷔は奇策を得意としない。一見、愚直とも見える、兵の進め方を好む。
故に驕りや油断による隙が陣形に生じにくい。数の差がもろに、戦況に影響を与える戦では、猛鷔はかなりの強敵といえよう。
だが、白起に生きて帰るつもりなど微塵もない。今や国に牙を剥けた、謀反人の汚名を着せられている。幾ら戦巧者の白起とて、自国に弓を引いた以上、逃げ場などないのだ。
(此方とて、当に覚悟は出来ている)
両軍の狭間で、竜巻が起こり、砂塵を舞い上げる。剣を抜き放ち、柄頭を合わせる。
「決戦だ」
白髪が煌めき、風に触れられたかのように立ち上がる。
闘志が頂点に達する。総身に漲るのは神気。白起の神気にあてられて、麾下一万が得物を抜き放つ。
伝播する気魄。砂塵が霧散した刹那―。両軍が同時に吶喊した。
闘気が中空で爆散。
「出るぞ」
愛馬の肚を腿で締め上げる。
一万が白き勇者が駆けた軌跡を辿る。
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