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終 白の章
九
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白起達は雍を迂回し、咸陽の北東に布陣した。南には渭水の支流が拡がり、咸陽から北進してくる軍勢が居たならば、支流を渡河しなければならない。
「狙い通り范雎が軍を率いて、咸陽を出たようです」
「だろうな」
白起は馬に跨り、傍らに馬を並べる摎に答える。両足は動かない。それでも腿から上へ動かすことができるので、馬への指示は、腿の締め上げで行う。
之は並大抵の技ではない。義渠の奴隷として、幼い頃から裸馬を乗りこなしてきた、白起だからこそ可能な絶技である。
「数は?」
「現在は三万。ですが、虎符を用いて、道中、兵力を搔き集めているようです」
「せいぜい五万というところか」
「恐らくは」
「麾下の将校は?」
「名前に覚えのある者は殆どおりません。大分は范雎が駒として新たに取り立てた者かと」
「ふむ。では邂逅は二日後だな」
眼前に拡がる渭水の支流からは、視界を埋め尽くすほどの濃い霧が立ち昇っている。
季節は初冬。
白起は静かに瞼を閉じて、近い未来に、霧を払って、眼前に現れる大軍勢を思い浮かべた。
「狙い通り范雎が軍を率いて、咸陽を出たようです」
「だろうな」
白起は馬に跨り、傍らに馬を並べる摎に答える。両足は動かない。それでも腿から上へ動かすことができるので、馬への指示は、腿の締め上げで行う。
之は並大抵の技ではない。義渠の奴隷として、幼い頃から裸馬を乗りこなしてきた、白起だからこそ可能な絶技である。
「数は?」
「現在は三万。ですが、虎符を用いて、道中、兵力を搔き集めているようです」
「せいぜい五万というところか」
「恐らくは」
「麾下の将校は?」
「名前に覚えのある者は殆どおりません。大分は范雎が駒として新たに取り立てた者かと」
「ふむ。では邂逅は二日後だな」
眼前に拡がる渭水の支流からは、視界を埋め尽くすほどの濃い霧が立ち昇っている。
季節は初冬。
白起は静かに瞼を閉じて、近い未来に、霧を払って、眼前に現れる大軍勢を思い浮かべた。
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