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血意
九
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「武安君」
呂不韋は真っ直ぐに白起を見つめた。
「この御方は、趙に人質として出された東宮の御子異人(後に子楚と名乗る)様で御座います」
「なっ」
言葉に窮した。世俗離れした気配を放っていると思っていたが、まさか秦王の孫であったとは。
「私は趙へ商いをしていた折、偶然にも異人様と巡り合い、趙の人質の身であった、異人様を内密に連れ出したのです」
「わ、私はもう趙に戻りとうない。あそこでの暮らしは、ひもじく辛かった」
異人は吃音の人のように告げると、さめざめと泣き始める。
「公子ともあろう御方が、おいたわしや」
呂不韋は憐憫の眼を向け、しくしくと泣く異人の肩を抱いた。
「で、お前はそいつをどうするつもりだ?」
公子と知っても尚、不遜な態度を取る白起に、異人は驚愕している。
「私は公子であるぞ。な、何なのだ!?その無礼な態度は」
真っ赤な眼のまま、白起に指を突き立て弱弱しく喚く。凄味を含んだ眼で睨み付ける。
「ひぃいい」
小さな悲鳴を上げ、呂不韋の広い胸に顔を埋める。
「お前は生来からの商人だ。見返りも無く、使い道の無さそうな餓鬼を、危険を冒してまで咸陽に連れて帰ろうとするはずもない」
呂不韋は胸に顔を埋める、異人の頭を優しく撫ぜながら、不敵に笑った。
(やはり。何か企んでいるな)
呂不韋は真っ直ぐに白起を見つめた。
「この御方は、趙に人質として出された東宮の御子異人(後に子楚と名乗る)様で御座います」
「なっ」
言葉に窮した。世俗離れした気配を放っていると思っていたが、まさか秦王の孫であったとは。
「私は趙へ商いをしていた折、偶然にも異人様と巡り合い、趙の人質の身であった、異人様を内密に連れ出したのです」
「わ、私はもう趙に戻りとうない。あそこでの暮らしは、ひもじく辛かった」
異人は吃音の人のように告げると、さめざめと泣き始める。
「公子ともあろう御方が、おいたわしや」
呂不韋は憐憫の眼を向け、しくしくと泣く異人の肩を抱いた。
「で、お前はそいつをどうするつもりだ?」
公子と知っても尚、不遜な態度を取る白起に、異人は驚愕している。
「私は公子であるぞ。な、何なのだ!?その無礼な態度は」
真っ赤な眼のまま、白起に指を突き立て弱弱しく喚く。凄味を含んだ眼で睨み付ける。
「ひぃいい」
小さな悲鳴を上げ、呂不韋の広い胸に顔を埋める。
「お前は生来からの商人だ。見返りも無く、使い道の無さそうな餓鬼を、危険を冒してまで咸陽に連れて帰ろうとするはずもない」
呂不韋は胸に顔を埋める、異人の頭を優しく撫ぜながら、不敵に笑った。
(やはり。何か企んでいるな)
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