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雄飛
一
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同年。周は秦の破竹の勢いに怯えていた。秦に怯懦を抱くというより、二十万の敵兵を平然と斬首した、白起一人を恐れているといっても過言ではなかった。周は和議の使者を秦に、幾度も寄越し和平を請うた。天子を戴く、周宗室がいよいよ強秦に追従の構えを見せ始めたのだ。
白起は伊闕の戦いの功績により、国尉の官職を与えられた。国尉とは軍の司令官であり、遷任によって白起は、実質の軍事最高責任者となった。秦は尚武の国である。故に生まれが卑賤であろうと、白起を白眼視する者はいない。
むしろ、廷臣達は伊闕での凶行により、白起の存在そのものに戦々兢々としている節があった。秦王嬴稷ですら、以前は白起に対して傲岸不遜に構えていたが、今は小心翼々と白起の顔色を窺うように過ごしている。
白起は大いなる権力を手にして、子飼いの兵達を次々に将軍へと仕立てた。これにより、軍政は完全に白起が掌握した。最早、秦王の意を窺う必要もなくなった白起は、独自に軍令を発動し伊闕の戦いに敗れ、大いに弱体化した魏を間断なく攻め続けた。
二十万の大軍を引き連れて黄河を渡河し、魏の領土である安邑。更に東の乾河に至る地まで奪った。だが、白起の猛進はこれだけに留まらない。年の暮れに凱旋した白起は、大良造の爵位を下賜された。
大良造といえば、税邑六百家を優に超える。白起は軍人の顕栄の象徴ともいえる存在となったのだ。本人は立身栄達に、何ら関心も見せず、春になるのを待つと再び魏へと侵攻した。白起は魏を滅ぼすつもりでいる。魏冄に出来ることと言えば、余計な横槍が入らないように諸国に使者を送り、偽りの親交を深めることくらいだった。
白起は伊闕の戦いの功績により、国尉の官職を与えられた。国尉とは軍の司令官であり、遷任によって白起は、実質の軍事最高責任者となった。秦は尚武の国である。故に生まれが卑賤であろうと、白起を白眼視する者はいない。
むしろ、廷臣達は伊闕での凶行により、白起の存在そのものに戦々兢々としている節があった。秦王嬴稷ですら、以前は白起に対して傲岸不遜に構えていたが、今は小心翼々と白起の顔色を窺うように過ごしている。
白起は大いなる権力を手にして、子飼いの兵達を次々に将軍へと仕立てた。これにより、軍政は完全に白起が掌握した。最早、秦王の意を窺う必要もなくなった白起は、独自に軍令を発動し伊闕の戦いに敗れ、大いに弱体化した魏を間断なく攻め続けた。
二十万の大軍を引き連れて黄河を渡河し、魏の領土である安邑。更に東の乾河に至る地まで奪った。だが、白起の猛進はこれだけに留まらない。年の暮れに凱旋した白起は、大良造の爵位を下賜された。
大良造といえば、税邑六百家を優に超える。白起は軍人の顕栄の象徴ともいえる存在となったのだ。本人は立身栄達に、何ら関心も見せず、春になるのを待つと再び魏へと侵攻した。白起は魏を滅ぼすつもりでいる。魏冄に出来ることと言えば、余計な横槍が入らないように諸国に使者を送り、偽りの親交を深めることくらいだった。
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