白狼 白起伝

松井暁彦

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王の誕生

 十五

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 他の九名にも同様に自身で馬を選ばせた。まずは馬に慣れることを優先させた。馬は戦場では翕然きゅうぜんとなる存在。一心同体といっても過言ではない。

  一か月の間、食事と睡眠を厩で共にさせる。馬と真の意味で一心同体となる上で、必要不可欠な過程である。不平不満を漏らす者はいなかった。九名は牧の一件以降、白に強い忠誠を誓うようになった。
 
 義渠のように軽量な皮甲よろいを纏い、まずは地上で剣術と弓術を叩き込んだ。その過程を経て、騎乗状態での訓練に移る。
 
 電光石火の成長を見せたのは胡傷であった。剣術、弓術もたったの半月で白が求める技量まで達した。彼には天稟があった。摎と王騎も申し分ない才を秘めていた。摎などは身軽な躰を生かし、馬上で曲芸めいたものを披露して見せたりする。それほどに馬との絆が太いということである。懸念は王齕であった。
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