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幸も不幸も折半で
親衛隊
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鐘が鳴り終わり、休憩時間になって直ぐ教室に入ると視線が集まった。
「「!」」
「桜井様?!」
「ふわぁ…癒される……」
「今日は来てくださったんだね!」
「昨日お仕事忙しかったのかな?」
「桜井様って書記だもんなぁ、この間会議あったし」
「疲れてないかな?」
「サクラさま!お疲れ様です!」
噛み殺したような悲鳴があちこちで聞こえ、挨拶をしてくれる親衛隊の子達。労いの言葉に「ありがとう」と返すと少し遠くから見知った声が耳に届く。
「桜様ッ」
「ッ桜さん?」
遠くに居た我が親衛隊の隊長、副隊長の2人が足早にこちらへ近寄ってきた。1日会えなかっただけで心配いっぱいなヘーゼルの瞳でこちらを見上げるのは悠里だ。
「桜様、執務お疲れ様ですっ」
「ありがと、悠里くん」
「いいえっ今日は顔が見られて嬉しいです」
俺と同じ1年でありながら3学年ごちゃ混ぜの親衛隊を見事に纏め、親衛棟にある書記専用のお茶会室の管理をしてくれている彼は俺の親衛隊隊長、宮野 悠里。悠里と数言話終えると、心配そうな落ち着いた声が聞こえてくる。
「お身体問題ありませんか」
「大丈夫だよ、昨日は来られなくてごめんね」
「謝らないでください…役員になっても授業に顔を出そうとして下さるのは桜さんだけなんですから」
彼は隊長である悠里の補助として副隊長の役目を担っている高城 志摩。紺色の髪と瞳をした長身の美人。顔立ちに反して体つきは良く、悠里曰く親衛隊内で体が大きなタチの生徒らの手網を握っているんだとか。
「ありがとう、志摩くん。悠里くんも心配かけてごめんね?」
「桜さん……」
「執務が忙しい中ほぼ毎日教室に来て下さって……申し訳ないですけど、嬉しいですっ」
「ふふっ、俺が好きで来てるんだよ。気にしないで」
背丈が凸凹な2人に抱き着くと驚いた声があがった。 でも、直ぐに背中と頭にそれぞれ2人の腕が回され温かさに包まれた。背中は悠里、頭は志摩。全身包まれてるみたいで、こんな時は一時だけ渇きが吹き飛ぶ。暫く堪能してから腕を離して一応確認をしておく。
「悠里くん、志摩くん。お茶会って明日だよね?」
「はいっ親衛棟3階、いつもの部屋ですよ!」
「午前10時からです」
親衛棟とは“親衛隊管理棟”の略。対象と隊員がお茶会をする専用の部屋とその準備室が続き部屋でセットになっており、それらが3階建ての棟内に何組も造られている。
1、2階は一般生徒の親衛隊がお茶会をする時に借りられる部屋になっている。その時々でランダムに選べて、部屋の中の雰囲気もバラバラ。気分転換に場所を変えて楽しんでいる和気あいあいとした所もあるんだとか。
生徒会役員は毎年役職毎に部屋が固定されており前役員が役職を降りると1度部屋が初期の状態に戻される仕組みになっている。3階は完全に生徒会の親衛隊専用フロアになっており、他の階と同じ広さなのに5部屋(準備室も入れれば10部屋だが)しか無く、その分1部屋1部屋が馬鹿みたいに広い。
生徒会ともなると必然的に親衛隊の数が異常になる為、それらを率いる親衛隊長らが集団を管理する為に使えるよう準備室(実際は執務室とか会議室の方がしっくりくる)も広く設計されているのだとか。
なんと言えばいいのか。俺みたいな親衛“対象”よりも親衛隊達が中心となって使用する為、雰囲気的には親衛隊達の……所謂クラブ棟のようなものというのが近いだろうか。俺が「楽しみだね」と笑えば、悠里と志摩はもちろんクラス内の親衛隊の子達が嬉しそうにはにかんだ。
──俺のところのお茶会は特殊。
基本的に親衛対象とその親衛隊で行われるお茶会は1ヶ月に1度、平日か休日に1、2時間程度。メンバーも古参や先輩が優先される為限られるのが普通だ。対して、俺のところは1ヶ月に2度土曜の昼前から夕方までたっぷりと時間をとって行う。希望する隊員は古参新参関係無く自由に来て自由に帰れる様になっている。もし、希望人数が多くても朝から夕方までやってるし、悠里や志摩が時間でローテーションさせたりして回るように調整してくれる。お茶会とは言っても、長時間だし俺にとっても癒しだから基本まったりしている。
変なものが入っていないかの検査を通過した、みんなの手作りや良いところのお菓子を食べ、紅茶を飲んでお喋りをする。眠くなったら昼寝して、起きて、また喋って、戯れて。もちろんお昼になったらみんなで昼食を食べるし、帰りに夕食を食べて解散することもある。
これが俺のところの普通。
たまに会う隣のAクラスにいる親衛隊持ちの知人には『よくやるよな』なんて言われるけど……俺からしたら1ヶ月に2回“しか”出来ないって感覚。ほんとはもっと増やしたいけど、役員の仕事もそれなりに忙しいから無理そう。生徒会役員のお茶会参加への頻度は基本的に毎年低いらしく、一応役員は最低1ヶ月に1度、親衛隊とお茶会をするルールがあるのだが、役員に選ばれる生徒らは毎度毎度、親衛隊嫌いだった結果──振りだけとか、2ヶ月に1度とか、そもそも行かないなんて言う事も普通にある。親衛隊の子達も役員を慕ってるわけだから態々風紀に告げ口したりもしないし、そもそも風紀からも疎まれている為話を聞いてもらえるか分からないとかの不安で結局黙認されてるんだとか。
現に、咲夜や鷹取は義務が発生していてもお茶会に1度も参加していないし、南条や谷枝の双子達も2ヶ月に1度の頻度で1時間だけ参加している状況らしい。こんなに可愛くて健気なのに……何が嫌なんだろう?
要らないならみんな俺が貰ってしまいたいくらいだ。
「「!」」
「桜井様?!」
「ふわぁ…癒される……」
「今日は来てくださったんだね!」
「昨日お仕事忙しかったのかな?」
「桜井様って書記だもんなぁ、この間会議あったし」
「疲れてないかな?」
「サクラさま!お疲れ様です!」
噛み殺したような悲鳴があちこちで聞こえ、挨拶をしてくれる親衛隊の子達。労いの言葉に「ありがとう」と返すと少し遠くから見知った声が耳に届く。
「桜様ッ」
「ッ桜さん?」
遠くに居た我が親衛隊の隊長、副隊長の2人が足早にこちらへ近寄ってきた。1日会えなかっただけで心配いっぱいなヘーゼルの瞳でこちらを見上げるのは悠里だ。
「桜様、執務お疲れ様ですっ」
「ありがと、悠里くん」
「いいえっ今日は顔が見られて嬉しいです」
俺と同じ1年でありながら3学年ごちゃ混ぜの親衛隊を見事に纏め、親衛棟にある書記専用のお茶会室の管理をしてくれている彼は俺の親衛隊隊長、宮野 悠里。悠里と数言話終えると、心配そうな落ち着いた声が聞こえてくる。
「お身体問題ありませんか」
「大丈夫だよ、昨日は来られなくてごめんね」
「謝らないでください…役員になっても授業に顔を出そうとして下さるのは桜さんだけなんですから」
彼は隊長である悠里の補助として副隊長の役目を担っている高城 志摩。紺色の髪と瞳をした長身の美人。顔立ちに反して体つきは良く、悠里曰く親衛隊内で体が大きなタチの生徒らの手網を握っているんだとか。
「ありがとう、志摩くん。悠里くんも心配かけてごめんね?」
「桜さん……」
「執務が忙しい中ほぼ毎日教室に来て下さって……申し訳ないですけど、嬉しいですっ」
「ふふっ、俺が好きで来てるんだよ。気にしないで」
背丈が凸凹な2人に抱き着くと驚いた声があがった。 でも、直ぐに背中と頭にそれぞれ2人の腕が回され温かさに包まれた。背中は悠里、頭は志摩。全身包まれてるみたいで、こんな時は一時だけ渇きが吹き飛ぶ。暫く堪能してから腕を離して一応確認をしておく。
「悠里くん、志摩くん。お茶会って明日だよね?」
「はいっ親衛棟3階、いつもの部屋ですよ!」
「午前10時からです」
親衛棟とは“親衛隊管理棟”の略。対象と隊員がお茶会をする専用の部屋とその準備室が続き部屋でセットになっており、それらが3階建ての棟内に何組も造られている。
1、2階は一般生徒の親衛隊がお茶会をする時に借りられる部屋になっている。その時々でランダムに選べて、部屋の中の雰囲気もバラバラ。気分転換に場所を変えて楽しんでいる和気あいあいとした所もあるんだとか。
生徒会役員は毎年役職毎に部屋が固定されており前役員が役職を降りると1度部屋が初期の状態に戻される仕組みになっている。3階は完全に生徒会の親衛隊専用フロアになっており、他の階と同じ広さなのに5部屋(準備室も入れれば10部屋だが)しか無く、その分1部屋1部屋が馬鹿みたいに広い。
生徒会ともなると必然的に親衛隊の数が異常になる為、それらを率いる親衛隊長らが集団を管理する為に使えるよう準備室(実際は執務室とか会議室の方がしっくりくる)も広く設計されているのだとか。
なんと言えばいいのか。俺みたいな親衛“対象”よりも親衛隊達が中心となって使用する為、雰囲気的には親衛隊達の……所謂クラブ棟のようなものというのが近いだろうか。俺が「楽しみだね」と笑えば、悠里と志摩はもちろんクラス内の親衛隊の子達が嬉しそうにはにかんだ。
──俺のところのお茶会は特殊。
基本的に親衛対象とその親衛隊で行われるお茶会は1ヶ月に1度、平日か休日に1、2時間程度。メンバーも古参や先輩が優先される為限られるのが普通だ。対して、俺のところは1ヶ月に2度土曜の昼前から夕方までたっぷりと時間をとって行う。希望する隊員は古参新参関係無く自由に来て自由に帰れる様になっている。もし、希望人数が多くても朝から夕方までやってるし、悠里や志摩が時間でローテーションさせたりして回るように調整してくれる。お茶会とは言っても、長時間だし俺にとっても癒しだから基本まったりしている。
変なものが入っていないかの検査を通過した、みんなの手作りや良いところのお菓子を食べ、紅茶を飲んでお喋りをする。眠くなったら昼寝して、起きて、また喋って、戯れて。もちろんお昼になったらみんなで昼食を食べるし、帰りに夕食を食べて解散することもある。
これが俺のところの普通。
たまに会う隣のAクラスにいる親衛隊持ちの知人には『よくやるよな』なんて言われるけど……俺からしたら1ヶ月に2回“しか”出来ないって感覚。ほんとはもっと増やしたいけど、役員の仕事もそれなりに忙しいから無理そう。生徒会役員のお茶会参加への頻度は基本的に毎年低いらしく、一応役員は最低1ヶ月に1度、親衛隊とお茶会をするルールがあるのだが、役員に選ばれる生徒らは毎度毎度、親衛隊嫌いだった結果──振りだけとか、2ヶ月に1度とか、そもそも行かないなんて言う事も普通にある。親衛隊の子達も役員を慕ってるわけだから態々風紀に告げ口したりもしないし、そもそも風紀からも疎まれている為話を聞いてもらえるか分からないとかの不安で結局黙認されてるんだとか。
現に、咲夜や鷹取は義務が発生していてもお茶会に1度も参加していないし、南条や谷枝の双子達も2ヶ月に1度の頻度で1時間だけ参加している状況らしい。こんなに可愛くて健気なのに……何が嫌なんだろう?
要らないならみんな俺が貰ってしまいたいくらいだ。
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