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始まりの章
心拍数
しおりを挟むもしも自分が死ぬまでのタイムリミットがわかるなら。
俺たちヒト及びその他生命体には、寿命が存在する。科学の進化で寿命に関しては色々と分かってきているものもある。しかしどんなに進化したといっても、産まれたての赤ちゃんの寿命が何年あるかなんて分からない。
だが、おれはその「寿命」に近いものはわかる。いや、「見える」。
とはいっても常日頃ずっと見えてる訳では無い。幸にも不幸にも近くに「死」が近いヒトがいた時にしか見えない能力なんだ。
この世界には特別な力をもって産まれてくる能力者と、なんの力ももたずに産まれてくる一般市民がいる。
俺はずっと一般市民だと思って生きてきた。 自分が能力者だと気づいたのは、姉の最期に遭遇した時。その時に初めて「見えた」。姉が血を流して倒れた瞬間、姉やその周りのヒトの左胸の辺に一定のリズムで減っていく数字が。
初めはなんの数字なのか、何故姉が目の前に倒れているのか、何故周りのヒトは助けてくれないのか…。何も分からなかった。
姉の死の一件以来、交通事故の現場に居合わせた時、大災害のとき、火災の時など色々な現場でその数字に出会っていくうちに、これが能力なんだと気づいた。
普通能力者の場合、常日頃いつでも自分の好きな時に能力を使うことができるものなんだが…。先生に聞いてみたところ
「んー、まぁ神奈の場合は能力者と一般市民のハーフな訳だし。そもそもそこがイレギュラーだから、有り得なくはない結果なんじゃないかな。」
と大あくびをしながら言っていた。
「そういうもんなんかな…。確かにハーフならば有り得なくはないか。」
そんな自問自答を繰り返しているときだった。
俺、神奈優志の運転する原付の前に突如女の子が現れた。
「おい!ちょ、どけぇぇえええ!!」
ドスッと鈍い音が聞こえた。
やべー…人引いちまったよ…。うわー俺明日からどうなるんだろ…。母ちゃん…俺掴まっちまうよごめん。今日の夕飯ハンバーグって言ってたな…。
とここまで考えている間に何故か俺は原付ごと宙に浮いていた。そしてなぜ宙に浮いているのかという答えが出る前には、地面に無様にも顔面から着地していた。
「っ…いって…。」
「大丈夫?!」
あー意識が朦朧としてきた。当たり前だよな。顔面から着地したんだもん。脳震盪かなんかおこしてんだろーな。うわー血もいっぱい出てるし。俺このまま死んじゃうのかな…。そういえば、さっきの女の子大丈夫だったのかな…。あれ?っていうかなんで俺が重傷者みたいな事になってんの?俺女の子引いちゃって…。
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