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黒い塊
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『悠……悠こっち見て……』
『朔良くん……エロい目ぇしてる……』
カラダを揺らしながら見つめ合い微笑むふたり。
『あー……イキそう……』
『イクとこ見して……』
『悠、そんなこと言うんだ……』
『ふふ……』
向かい合って抱きしめあって、頬を赤く染めた朔良は、自らのモノをしごき、そして果てた。その姿を愛おしそうに見つめ、ビクビクと痙攣する朔良のカラダを悠は、包み込むように抱きしめた。
『俺もイキたい……』
『うん……いいよ』
見つめ合いながら悠がグラインドを始める。刺激に朔良のカラダが揺れ、髪が乱れる。僅かに開いた唇からハクハクと息が吐き出され、支えきれない朔良の身体はそのままベッドに投げ出された。その腕を掴み更なる刺激を与え続ける悠の姿が、画面いっぱいに映る。
その時、プツッという音と共に、画面が暗転した。
「くっそ……」
櫂は小さく吐き捨て、プレーヤーからDVDを取り出しガシャンと引き出しに放り投げた。
先日偶然、事務所の近くでスタッフとバッタリ会った。「ちょうど仕上がってきたんだよ久々にどう?」と手渡されたのが新作のDVDだった。引退してから、一切見なかった。情報を入れないようにしていた。
持ち帰ってしまえばやはり少しは気になるもので。先ほどそっと、プレーヤーに滑り込ませた。
そこにいたのは、あの頃と変わらない、朔良の妖艶な姿。
いや、違った。
あの頃より、さらに妖艶になった朔良。
あの頃より、余裕がある朔良。
自分の知らない期間を経た朔良がそこにはいて、櫂の腹の中には何か黒い塊のようなものが渦巻いた。
自分なら、痙攣する朔良にもう少し言葉をかけて、そして優しく再開するのに。
自分なら、あの乱れた髪を優しく撫でてやるのに。
そんな感情にあるのは、ただの嫉妬。
再会して、最初に話したのは、仕事のこと。
すぐに凌空のラストイベントがあって、朔良はまだもう少し続けたいと、言った。
モノワカリ良い方じゃない。
なのに、「わかった」と、そう返事をした。
自分もかつて行っていた仕事。
自分が去ってから朔良がキャリアを積み、ファンから求められてきたことを櫂は知っている。再会後の、凌空や弦、SUUやKANの話から、それは明らかだった。
櫂はベッドにパタンと突っ伏した。
今の仕事を始めて、引っ越した家。
広くはないが綺麗なマンションへと越した。
見渡してそこにある雑誌を手に取った。
美容雑誌に載る、自らがスタイリングした髪型。小さく載るその名前は、「YUKI」。
朔良といると、「YUKI」なんだか「KAI」なんだか、自分がわからなくなる瞬間がある。
初めて載ったその名前がすごく嬉しかったはずなのに、今、モヤモヤする気持ちを抑えられずまた、大きく息を吐いた。
再会してから何度も、朔良と外に出かけた。
買い物をしたり、食事をしたり、でもそれは、友だちの域を出たかと言われると、それ以上はなかった。
一歩踏み出せないのは、いつものこと。
きっとお互いに、お互いの心を考えすぎて、踏み出すことに、臆病になっている。
あの頃、誰より近かった距離が、時を経て今、ものすごく遠くに感じる。
ピロンとスマホが鳴る。
『櫂、今度の休み時間とれる?』
朔良からの、連絡。
初めて、同じ思いを共有できた人。
それが馴れ合いではなく、作品づくりという共通の、前を向いた目標であって嬉しかった。
今から自分たちは、なにに向かっていくのだろう。
思えば全てセッティングされて、コトが運んできたふたり。会うのも、肌を重ねるのも、全てスタッフがセッティングした上にあったもの。
どう時を重ねて、どう関係を築いていくのか。
見えない未来になぜか、不安が募った。
『朔良くん……エロい目ぇしてる……』
カラダを揺らしながら見つめ合い微笑むふたり。
『あー……イキそう……』
『イクとこ見して……』
『悠、そんなこと言うんだ……』
『ふふ……』
向かい合って抱きしめあって、頬を赤く染めた朔良は、自らのモノをしごき、そして果てた。その姿を愛おしそうに見つめ、ビクビクと痙攣する朔良のカラダを悠は、包み込むように抱きしめた。
『俺もイキたい……』
『うん……いいよ』
見つめ合いながら悠がグラインドを始める。刺激に朔良のカラダが揺れ、髪が乱れる。僅かに開いた唇からハクハクと息が吐き出され、支えきれない朔良の身体はそのままベッドに投げ出された。その腕を掴み更なる刺激を与え続ける悠の姿が、画面いっぱいに映る。
その時、プツッという音と共に、画面が暗転した。
「くっそ……」
櫂は小さく吐き捨て、プレーヤーからDVDを取り出しガシャンと引き出しに放り投げた。
先日偶然、事務所の近くでスタッフとバッタリ会った。「ちょうど仕上がってきたんだよ久々にどう?」と手渡されたのが新作のDVDだった。引退してから、一切見なかった。情報を入れないようにしていた。
持ち帰ってしまえばやはり少しは気になるもので。先ほどそっと、プレーヤーに滑り込ませた。
そこにいたのは、あの頃と変わらない、朔良の妖艶な姿。
いや、違った。
あの頃より、さらに妖艶になった朔良。
あの頃より、余裕がある朔良。
自分の知らない期間を経た朔良がそこにはいて、櫂の腹の中には何か黒い塊のようなものが渦巻いた。
自分なら、痙攣する朔良にもう少し言葉をかけて、そして優しく再開するのに。
自分なら、あの乱れた髪を優しく撫でてやるのに。
そんな感情にあるのは、ただの嫉妬。
再会して、最初に話したのは、仕事のこと。
すぐに凌空のラストイベントがあって、朔良はまだもう少し続けたいと、言った。
モノワカリ良い方じゃない。
なのに、「わかった」と、そう返事をした。
自分もかつて行っていた仕事。
自分が去ってから朔良がキャリアを積み、ファンから求められてきたことを櫂は知っている。再会後の、凌空や弦、SUUやKANの話から、それは明らかだった。
櫂はベッドにパタンと突っ伏した。
今の仕事を始めて、引っ越した家。
広くはないが綺麗なマンションへと越した。
見渡してそこにある雑誌を手に取った。
美容雑誌に載る、自らがスタイリングした髪型。小さく載るその名前は、「YUKI」。
朔良といると、「YUKI」なんだか「KAI」なんだか、自分がわからなくなる瞬間がある。
初めて載ったその名前がすごく嬉しかったはずなのに、今、モヤモヤする気持ちを抑えられずまた、大きく息を吐いた。
再会してから何度も、朔良と外に出かけた。
買い物をしたり、食事をしたり、でもそれは、友だちの域を出たかと言われると、それ以上はなかった。
一歩踏み出せないのは、いつものこと。
きっとお互いに、お互いの心を考えすぎて、踏み出すことに、臆病になっている。
あの頃、誰より近かった距離が、時を経て今、ものすごく遠くに感じる。
ピロンとスマホが鳴る。
『櫂、今度の休み時間とれる?』
朔良からの、連絡。
初めて、同じ思いを共有できた人。
それが馴れ合いではなく、作品づくりという共通の、前を向いた目標であって嬉しかった。
今から自分たちは、なにに向かっていくのだろう。
思えば全てセッティングされて、コトが運んできたふたり。会うのも、肌を重ねるのも、全てスタッフがセッティングした上にあったもの。
どう時を重ねて、どう関係を築いていくのか。
見えない未来になぜか、不安が募った。
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