職業、死神〜今夜、終わるいのち〜

会いたい人

【side アオ】

今日も、サツキさんに呼ばれた。
今日も、サツキさんに抱かれる。

痛みを受け止めて。
孤独を癒して。

息が、苦しい。
大きな窓に手をついて。
首に当てられた手が、ぎりっと食い込む。
その間も容赦なく後ろから攻め立てられる。

サツキさんの手をぎゅっと強く握って、その手に救いを求めて。

「くはッーーはぁっ……」

やっと解放されて取り込まれた空気と、一気に流れ始める血液。

崩れ落ちそうになるもグッと押さえ込まれて許されず、膝が、ガクガクと震える。


空に浮かぶ月が見える。
少し雲がかかって、ぼんやりとした月。

サツキさんの刺激を受けながら、痛みと苦しみに耐えながら、その月の向こうに浮かぶのは、蓮の顔だった。

血走った目。
血管を浮き上がらせるほどに大きな声で叫んで。
蓮が、助けたかった命。

それを、俺は終わらせた。

蓮は、大丈夫だろうか。
俺が心配することじゃない。

矛盾する気持ちが、心の中に渦巻く。

「アオ……？……何考えとるん？」
「……今日、死んだ奴のこと……」
「アオ……俺のことだけ、考えとってよ」

サツキさんの手が、俺の髪を掴んで、ガンッと窓に、打ち付けられる。

痛い。
いたい。

打ち付けられた額。
引っ張られる髪。
叩かれ続ける尻に、激しい刺激を受け続ける、俺のナカ。

全部、痛い。
痛みを癒す方法を、俺は、知らない。

恐らく蓮が感じている痛みも。
俺には、癒す術がない。


救急車に乗り込んだ蓮の顔。
あの後なにをしても、あの青年の命が戻ることはない。

蓮は、あの後、どんな顔をしていた？
蓮は、あの後、どんな痛みを感じた？

こんな感情、自分勝手だけど。
なんでこんなこと思っているのか、わからないけれど。


蓮に、会いたい。