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再会②
しおりを挟む【side 蓮】
「あっ……」
思わず声に出して、マズイと思った。
振り返ったのは金髪の男。
目つきが悪くて、眉間に皺を寄せて、思いっきりガンつけられた。でも申し訳ないが俺の視線は金髪で目つき悪い男の方ではなくて、美人で頑固な男の方に吸い寄せられる。
肝心の美人で頑固な男は、突如立ち止まった隣の金髪目つき悪い男に何があったかわからない様子で、その男を見上げている。
その横顔がまた綺麗で、思わず見惚れそうな自分に喝入れて、頭をブンブン振った。と、同時に湧き上がるのは、苛立ち。
ズンズン突進していって。
金髪目つき悪い男がグイッと一歩踏み出しているが、俺が話したいのはお前じゃない。
美人で頑固な男の腕を、ガシッと掴んだ。
思わぬ動きに、2人して俺をガン見している。
「ちょっとあなた何やってんですか!!」
思ったより大きな声が出て、俺自身ビビったけどそんなことより言いたいことがある。
「お前誰やねん?」と隣で金髪目つき悪い男が舌巻いてどついてくる。「ちょっと黙っといてください! この人に用があるんです!」と俺はその美人で頑固な男から目を離さない。肝心の美人で頑固な男は驚いた顔をして俺をぽかんと見つめている。
「なんで来んかったんですか! どうなりました?テープもうとっくに剥がれたでしょう? 傷開いてませんか?」
「……」
「感染起こしたらどうするつもりですか! ちゃんと処置すればなんてことない傷も、悪化すると大変なんですよわかってますか!!」
そう言って俺は、男の黒いシャツの袖をガシッと捲った。思った通り。
「これ……痛いやろ……」
「別に……」
「熱、出てませんか?」
「平気……多分」
「ちょっと来てください」
腕の裂傷周囲が、かなり腫脹している。
中に膿が溜まっているだろうか。
抗生剤出した方が良さそうだし、もしかしたら切開して排膿した方が早いかもしれない。
怒りより処置のことが浮かんで、腕をグイッと引っ張った。
「おいちょっと待てや」
隣の男が、俺の肩を掴んで睨みつけてくる。
「なんですか? 処置だけさしてください」
「なんでお前がそんなことするん」
「最初の処置をしたからです」
「あぁ……お前があの日の奴か……」
あの日、というのが出会った日のことを言っているかは知らないが、ピクリと目元が小さく動いたのが、わかった。
「おい、アオ。お前行くんか?」
「……んや……」
「ダメです!」
「なんでお前が決めんねや!」
「死にますよ!?」
被せ気味に、俺は怒鳴った。
突然の怒鳴り合いに、道行く人は、俺たちを避けて歩く。このままだと、警察が来るかもしれない。そんなことが、頭を過ぎる。
「死なへんよ」
「何言っとるんですか、感染症侮ったらあかんっすよ」
「でも死なへんから」
「もう……アホちゃいますか」
実際、死ぬほどのものではないけれど。
でも、放っておけるレベルのものでもない。
この人はきっと悪化しても受診しなさそうだし。
「俺やってこの人に言いたいことあるんです。とりあえず来てください」
頑固で美人の人をジッと見つめた。
いや、多分睨みつけていた。
伝われ。
この金髪には伝わらない。
処置をさせてくれ。
こんな中途半端な処置で、これ以上悪化させたら俺は、後悔する。
なにに?
なにに後悔するんだ?
この人がどうなろうと知ったこっちゃない。
でも。
「アホなこと言わんとってくださいよ!!」
「は?」
「受診はしないし悪化してもいいとか俺は死なないとか。アホやないですか!? 自分のカラダどうなってもいいんですか!!」
返事を待たず俺は、グイッと強く腕を引っ張った。
「あ、おい! アオ!」
「いって……」
金髪野郎が思わず掴んだ腕は、アオと呼ばれた美人頑固野郎の負傷した腕で。おそらく反射的に、アオという男はその腕を、振り払った。多分、痛かったんだと思う。でもその金髪野郎は、振り払われた手を見つめ、動かなくなった。
なんかやばいかも。
ちょっと思ったが、俺としてはそれどころではない。
「処置だけしたら返しますから!すんません!」
一応謝って、というか別に一緒に来ても良かったんだけどなと思いつつ、それはそれで面倒になりそうだし。
俺は美人で頑固なアオという男の腕を引いて、ひとまず勤め先の病院へ、向かった。
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