ヴァイオレント・ノクターン

乃寅

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六月

Mission14 血塗られた過去

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──俺は自分自身の過去を語った。
その間に口を開いた者は誰一人としていなかった。

「……これで昔話は終わり」
「…………」

鉛の様な重い沈黙が俺たちを包み込む様にして流れていた。
それもそうだ。聞かされてあまりいい話ではないのだから。

「俺はその時の出来事を経て、気付いた」

気付きたくはなかった。

「……俺は人を傷付けて喜ぶ様な人間なんだって」

きっとそれが自分の中に眠る本当の自分なんだと知った。
速水沙々が戦いに喜びを見出している様に俺は人を傷付けることに喜びを見出しているのだろう。

「俺が紙越に帰った理由は二つある」

二つ指を立てる。

「一つは進学できなくなった以上東京にいても仕方がなかったから」
「……でも、東条くんって成績トップじゃなかったっけ?それくらいの学力があるなら別の高校を探すことも……」

森さんはそう言った。
確かに都内で他の高校を探すこともできた。
しかしそうしなかったのには理由がある。

「ああ、でも探さなかった。それが二つ目の理由だよ」
「二つ目の……?」
「……東京は居心地が悪くてね。みんなピリピリしてるし……」

街を行き交う人々の間を流れる空気は冷たく、重い。

〈ああ確かに都会の人って余計なモンは遠慮なく削ぎ落として、無駄を極端に嫌うってイメージがあるよな……なんつーか、冷たい?〉
「……互いに関心がない、手を差し伸べる時間も惜しい……まあ、あなたたちのイメージは合ってるわね」

都会にいた経験があるらしい渚はそう言った。

「今後の身の振り方を考えるために紙越に帰ってきた……ってわけさ」
「…………」

再びの沈黙。皆発するべき言葉が思いつかないのだろう。
けれどそれで正解だ。

〈……大和クン〉

そんな静まった空気を切り裂く様に無線機から声が聞こえてくる。
しかもその声は本来ならば聴こえてくるはずのないものだ。

「鶫……!?」
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