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兵革の五月[May of Struggle]
Mission33 断罪の刃
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──それから数分が経過した。
これまでに何十、何百もの刀と斧による金属音が響く。
けれどそれは両者のどちらにも掠りすらしていなかった。
「くっ……はぁ……はぁ……っ」
「……密入国者の割にはやるじゃないか……」
二人は疲弊し、乱れた呼吸を整えようと肩で息をする。
それと同時に次の一撃こそは相手に叩き込もうと互いに得物を握りしめる。
「あなたも随分とやるみたいじゃないですの……」
「当然だ。ワタシはテロリストを許さない。そんな奴らを全て断罪するという強い信念がワタシに力をくれる……」
そう言って彼女は胸に手を置き、一度目を閉じる。
次に瞼を開けると同時に紅宮さんは地面を蹴り、烈火の如くベアへと向かっていった。
「くっ……」
(速い……さっき以上に……!)
ベアは自身を襲った刃を受け止め、そう感じていた。
先刻よりも紅宮さんの剣には鋭さと殺気が込められている。
ベアを睥睨するその紅の瞳はどこか虚空を捉えている様だった。
「テロリストは……皆断罪する……」
紅宮さんは譫言の様にそう呟くとベアへと刃を立て続けに振るった。
ベアは彼女のそれを避けたり、斧で受け止めるものの体力的な限界が来てしまった。
「っ……!」
回避し切れずに紅宮さんの刀が彼女の腹に掠った。
それに両者の動きは止まった。勝負が決した。
「ここまで、ですわね……」
ベアは斧を下げると悔しそうな表情を浮かべつつ、紅宮さんへと手を差し出す。
「……いい勝負でしたわ。約束通り、あなたの言うことに従いますわ──」
悔しさを殺しつつ微笑を浮かべ、彼女へと近付く。
けれど、
「悪は、断罪する……!」
彼女は刃を振り上げるとベアへと振るった。
ベアは咄嗟に飛び退いて回避する。
それと同時に会場全体がなんだなんだと騒々しくなる。
「なんだ……?様子がおかしい……?」
〈紅宮さん、勝負はもう終わったわ。武器を──〉
実況席にいる流城先生がそう言うが紅宮さんの耳には届いていない様だった。
彼女はまるで操り人形の如くベアへと刀を手にふらふらと襲いかかる。
「どうしたのかしら……?なにか変ね……」
「うん、なにかに操られてるみたい……」
森さんの言葉に皆頷く。俺だけでなく全員が異常だと感じている様だ。
紅宮さんは先ほどまでベアを捕らえるためならば手段を問わないといった感じだったがいくらなんでも負けを認め、抵抗を止めた人間に切りかかるだろうか。
それに先ほどから『断罪』という言葉を繰り返して言っている様な気がする。
「ちょ、ちょっと……ッ!?もう勝負は終わったんですのよ!?」
「関係ない……全てを、裁く……」
ふらふらとしているが鋭い太刀筋でベアへと襲いかかる。
ベアは慌てて彼女から距離を取る。
「……なんだかよく判らないけど止めに入った方がよさそうだ」
もうこれは勝負でもなんでもない。
無抵抗の人間を襲いかかっているだけだ。
止めるために脇差を握り、観客席からグラウンドへと飛び降りようとするが、
「いえ、大丈夫ですわッ!」
とベアが叫んで制止した。
それに俺たち思わず数秒ほどぽかんとしてしまった。
「本気なの?」
「ええ。操られているかなんだか知りませんけど、もしそうならぶん殴って目を覚まさせてみせますわ」
「……判った。なら、俺たちは見るだけだ」
彼女がそれを望むならば俺たちは手出しをしない。
けれど本当に危なくなったならば加勢するつもりだ。
「ありがとう。さぁ、行きますわよっ!」
斧を構え直すと彼女は傀儡と化した紅宮さんへとその視線を向けた。
そして彼女の目を覚まさせるために駆け出した──
これまでに何十、何百もの刀と斧による金属音が響く。
けれどそれは両者のどちらにも掠りすらしていなかった。
「くっ……はぁ……はぁ……っ」
「……密入国者の割にはやるじゃないか……」
二人は疲弊し、乱れた呼吸を整えようと肩で息をする。
それと同時に次の一撃こそは相手に叩き込もうと互いに得物を握りしめる。
「あなたも随分とやるみたいじゃないですの……」
「当然だ。ワタシはテロリストを許さない。そんな奴らを全て断罪するという強い信念がワタシに力をくれる……」
そう言って彼女は胸に手を置き、一度目を閉じる。
次に瞼を開けると同時に紅宮さんは地面を蹴り、烈火の如くベアへと向かっていった。
「くっ……」
(速い……さっき以上に……!)
ベアは自身を襲った刃を受け止め、そう感じていた。
先刻よりも紅宮さんの剣には鋭さと殺気が込められている。
ベアを睥睨するその紅の瞳はどこか虚空を捉えている様だった。
「テロリストは……皆断罪する……」
紅宮さんは譫言の様にそう呟くとベアへと刃を立て続けに振るった。
ベアは彼女のそれを避けたり、斧で受け止めるものの体力的な限界が来てしまった。
「っ……!」
回避し切れずに紅宮さんの刀が彼女の腹に掠った。
それに両者の動きは止まった。勝負が決した。
「ここまで、ですわね……」
ベアは斧を下げると悔しそうな表情を浮かべつつ、紅宮さんへと手を差し出す。
「……いい勝負でしたわ。約束通り、あなたの言うことに従いますわ──」
悔しさを殺しつつ微笑を浮かべ、彼女へと近付く。
けれど、
「悪は、断罪する……!」
彼女は刃を振り上げるとベアへと振るった。
ベアは咄嗟に飛び退いて回避する。
それと同時に会場全体がなんだなんだと騒々しくなる。
「なんだ……?様子がおかしい……?」
〈紅宮さん、勝負はもう終わったわ。武器を──〉
実況席にいる流城先生がそう言うが紅宮さんの耳には届いていない様だった。
彼女はまるで操り人形の如くベアへと刀を手にふらふらと襲いかかる。
「どうしたのかしら……?なにか変ね……」
「うん、なにかに操られてるみたい……」
森さんの言葉に皆頷く。俺だけでなく全員が異常だと感じている様だ。
紅宮さんは先ほどまでベアを捕らえるためならば手段を問わないといった感じだったがいくらなんでも負けを認め、抵抗を止めた人間に切りかかるだろうか。
それに先ほどから『断罪』という言葉を繰り返して言っている様な気がする。
「ちょ、ちょっと……ッ!?もう勝負は終わったんですのよ!?」
「関係ない……全てを、裁く……」
ふらふらとしているが鋭い太刀筋でベアへと襲いかかる。
ベアは慌てて彼女から距離を取る。
「……なんだかよく判らないけど止めに入った方がよさそうだ」
もうこれは勝負でもなんでもない。
無抵抗の人間を襲いかかっているだけだ。
止めるために脇差を握り、観客席からグラウンドへと飛び降りようとするが、
「いえ、大丈夫ですわッ!」
とベアが叫んで制止した。
それに俺たち思わず数秒ほどぽかんとしてしまった。
「本気なの?」
「ええ。操られているかなんだか知りませんけど、もしそうならぶん殴って目を覚まさせてみせますわ」
「……判った。なら、俺たちは見るだけだ」
彼女がそれを望むならば俺たちは手出しをしない。
けれど本当に危なくなったならば加勢するつもりだ。
「ありがとう。さぁ、行きますわよっ!」
斧を構え直すと彼女は傀儡と化した紅宮さんへとその視線を向けた。
そして彼女の目を覚まさせるために駆け出した──
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