ヴァイオレント・ノクターン

乃寅

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兵革の五月[May of Struggle]

Mission22 食後、腹ごなしの戦い

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──食後、俺たちは湖城家の廊下を歩いていた。

「ふぅ~……食べた食べた……」

俺の隣でレイは自身のお腹をさすりながらそう言った。

「……ほとんどレイが食べてたね」
「遅めとはいえ朝食だとやっぱり中々入らないよね」
「いやいやいや……出された料理の四割くらい食べて『中々入らない』って……」

あれだけ料理があって、その四割を胃に収めてしまったというのにあれが朝食じゃなければ更に入っていたというレイに恐怖さえ感じる。
一体彼女は普段どれだけ食べているのだろうか。彼女の真の満腹とはどれくらいなのだろうか。

「でも、美味しかったね。色々あったけどどれも」
「うん。そういや森さんはなにを頼んだの?」
「わたしは抹茶餅を頼んだ。高級な抹茶を使っている美味しいものだったよ」

そう言う森さんの表情はご満悦の一言に尽きる。

「あれってミナミが頼んだの?気になったから少し食べてみたら苦かったけど……」
「あれ、レイちゃんはあまり好きじゃなかった?」
「いや、あれはあれで好きだよ。甘ったる過ぎないし、上品な甘さだった」

レイがそう答えると森さんはうんうんと満足そうに頷く。

「ならよかった。今度とっておきの抹茶専門店に案内するよ」
(森さんがまさかここまで抹茶好きだとは……)

意外な一面だ。
確かに彼女は洋菓子よりも和菓子などを好んで食べそうなイメージがあった。
和菓子は文学を好む清楚な少女のイメージにぴったりだ。

「……さて、抹茶の話もいいけど着いたよ」

俺たちを先導する様に廊下を歩いていた七菜さんが振り返り、そう言った。
彼女は俺たちの方を向いたかと思うと視線を廊下の外へとやった。

「ここは……?」
「二人とも、戦うんだったら趣向を凝らした方がいいと思ってね」

湖城家の建築様式は寝殿造だ。
彼女に連れてこられたのはこの屋敷に囲まれる様にして存在する庭だ。
手前には白砂が敷かれていて、その奥には小さな島が存在している。

「……へぇ、時代劇っぽい場所でいいね」
「大丈夫なんですか?七菜さん。二人の戦いで庭がメチャクチャになっても……」
「流石にそこまで派手な戦いはしないよ、人様の家の庭で。ねえ?」

凛華は「はい」と頷き、持っていた靴を地面に下ろすと履いた。
藍川先輩も彼女同様に靴を履くと白砂の敷かれた地面の真ん中へと歩いていく。
そして一対の刃を構える。凛華もそれに合わせて自身の得物を構える。

「……さぁ、戦おうか」
「はい、お願いします」
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