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濫觴の四月[April of Beginning]
Mission27 八つの刃
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同時刻──
商店街にある広場で戦いは繰り広げられていた。
「…………」
少女、太刀花優希が掌を向けると青白い光の糸が現れ、その光に当たったものはどういうわけか持ち上げられる。
それを利用して近くにある椅子を投げつける。
しかし──
「はあっ!」
レイは自分たちに向けて投げつけられたそれを刀で真っ二つに斬る。
斬られた椅子はそのまま地面へと落ちる。
〈どうやらあの少女──太刀花優希は“トラクタービーム”を武器として使っているな〉
「トラクター……ビーム?」
〈ああ。照射された対象を引き寄せるものだ。判りやすく言うと……UFOが地上の人間を吸い上げる際の光……あれの様な技術だ。まさかそれを武器として使うとは……〉
私もまさかそんな技術が武器として利用されているとは思わなかった。
引き寄せるというよりも物をあのビームで掴んで投げつけたり、それで殴ったりしているだけではあるけれど。
しかもそれをまだ13、14の少女が使っているだなんて。
「でも、近くにあるものを引き寄せて武器にするくらいしかできないんでしょ?楽勝!」
「ええそうね。投げつけてくるものの軌道は読めるし……まだ続けるつもり?」
「……それもそうですね」
彼女たちに対して椅子やテーブル、車輌を投げつけても一切意味がないと判り、優希はそう言った。
そして背中に手をやった。
「なら、これは?」
「……刀?」
彼女が背中から取り出したのは刀だ。それも2本。
──いや、それだけではない。
彼女は6本、鞘に収まった状態で背中に背負っている。
つまり手元にある2本も含めると8本も刀を持っていることになる。
「ええ。これを……」
彼女はその刀を宙に放るとそれに右手を向ける。
すると刀が少女の掌から出ているトラクタービームによって宙に浮揚する。
「8本使います」
「これは……」
優希は残りの刀も抜いて宙に放った。
8本の刀が彼女を守護する様に周りに浮かんでいる。
「……思ったよりも厄介な相手になりそうね……」
「八刀流、ってとこですかね」
「八刀流って……そんなのアリっ!?」
「アリなんですよ」
優希が右手を2人に向けると刃が2人に向かって襲いかかる。
8本の刀……4本ずつに分かれて2人を襲う。
「くっ……!」
レイは自身の愛刀でそれを一つひとつ弾いていく。
けれど4本の刀は彼女が攻撃を弾いても間髪を入れずに切りかかった。
「……キツいわね」
西郷さんはレイの様に刀を弾ける様な武器を持っていないので器用にそれを避けている。
彼女は腰に取り付けてある拳銃の様なものを取り出すと広場の中央にある木へと向けて引き金を引く。
すると拳銃からワイヤーが放たれる。
〈ワイヤーショットか……〉
ワイヤーの先端についている銛が木に突き刺さると拳銃によって巻き取られると彼女は木へと高速移動していた。
そして樹上に移動すると自身を追いかけていた刀を誘導して木に突き刺させた。
「……これならどう?もう使えないわね」
突き刺さっている刀は左右にその刃が折れそうなくらいにしなって木から抜けようとしている。
「流石ナギサっ!」
「……無駄ですよ」
優希がそう言うのと同時に刃の左右にしなる動きが大きくなる。
そして木から抜けてしまった。
「!」
西郷さんは抜けた刃から逃れる様に離れる。
そして優希へと向けて狙撃銃を構え、銃弾を放つ。
しかしレイを襲っていた4本の刀が優希へと飛んでいき、彼女の目の前で壁を作った。
「なっ……!?」
その壁によって銃弾は彼女の身体を撃ち抜くことを遮られた。
刀で壁を作るなんて……そんな戦い方、アリなのだろうか。
いや、戦いにルールなんてない。
どんな方法を使ってでも勝った方が正義なのだ。
「はああああっ!」
レイはそれを見て刀を手に彼女へと距離を詰める。
しかし優希は自身へと迫る彼女をつい先ほど盾にした8本の刀を飛ばしてそれを妨害する。
「っ……!」
切っ先を自身に向けたまま飛んでくるそれを自身の刀で弾きながら距離を詰めようとするが8本の刃はそれをさせてくれない。
そんなレイの後ろで西郷さんは狙撃銃を構え、少女へと放つ。
「無駄です」
レイを襲っている8本の刃のうち、2本の刃が西郷さんの放った銃弾を弾いた。
「銃弾を……!」
「……焦りの色が見えますね」
「……色?」
少女が口に出した言葉に西郷さんはぴくりと眉を動かす。
色……一体なにを言っているのだろう?
「……いいえ、なんでもいいです。あなたたちは死ぬんですから」
(……確かに彼女が8本の刀を使い始めてからこちらが不利になっているわ。このままじゃ……)
西郷さんは自分たちの負けというビジョンを脳内に描いていた。
それは少女の強さに自分たちは敵わないという諦めから来た考えだった。
「いや、死なない!負けもしない!」
「…………!」
けれどその考えは自身の前に立つ1人の少女を見て虚空に消えていった。
彼女の勇壮な背中を見て、西郷さんも狙撃銃を構え直す。
「……ええ。そうね」
──ワタシも諦めるわけにはいかないわ。
西郷さんが優希へと狙撃銃を1発放つがそれは空中で弾かれる。
それを見てレイは駆け出す。
「はあっ!」
自身へと飛来する刀を避ける。
彼女が避けていく度に広場のひび割れたタイルの地面に刀が突き刺さっていく。
そして刀が少女を捉える──
ガキンッ
「ッ……!」
「さっきから言ってますよね?無駄だって」
彼女は溜め息混じりにそう言った。
彼女の目の前には刀4本で構成された盾がレイによる一撃を防いだのだ。
レイは一旦後ろに下がって再び刀を構え、攻めるタイミングを見計らう。
「……そう簡単に攻撃させてくれるほど甘くはないか」
「──レイラ、あなたは敵しか見えてないわね」
刀を手に、その瞳は敵のみを捉えているレイに西郷さんはそう言った。
その言葉にレイは「えっ?」と視線を西郷さんに向けた。
「敵のみに愚直に向かっていっても勝ち目はないわ。フィールド全体を見ないと」
「フィールド全体を……」
その言葉にレイは握っている刀の柄を握り直す。
「判った!」
そう言ってレイは再び刀を手に少女へと駆けていく。
それを見て少女は溜め息を吐いた。
「……何回言えば判るんです。無駄だって」
優希は刀で盾を作り、彼女の攻撃に備える。
しかし彼女は腰に取り付けてある黒い重厚感のある箱からワイヤーを放った。
西郷さんの使っていたものと形は違うが同じ装備だ。
──イージス内では“ワイヤーショット”と呼ばれ、戦闘員の動きや移動範囲を大きく拡げるという目的で作られたものだ。
西郷さんの使っていた銃型のものもあれば、レイの様に腰に取り付けるタイプのものもある。
(……ワイヤーショット?)
ワイマーを放った先は広場に存在する8つの柱の1つだ。
先端の銛を柱に突き刺すとそのまま巻き取られてその場へと高速で飛んで移動する。
そして柱まで着くと巻き取られた銛を回収し、柱に足をつけた状態で少女へとワイヤーを放った。
──否、ワイヤーを放った先は少女ではない。
少女の後ろにある広場のシンボルツリーだ。
レイはシンボルツリーまで迫ると刀を一度鞘に収める。
「はああっ!」
白刃一閃、シンボルツリーであるエゴノキが倒れる。
「しまった……!」
優希は咄嗟に自身を守る刀を操り、倒れてくる木から自身を守る。
まさかシンボルツリーを狙っているだなんて思っていなかったので判断が遅れた。
けれど自身を守る刀たちは倒れてきたそれを切り刻む。
(あ、危なかった……!)
「で、ですが……残念でしたね。外れれば意味なんて──」
言い切る前に少女は倒れる。
少女の背後に回っていた西郷さんがその首を狙撃銃の銃床で殴ったからだ。
意識を手放した少女の身体が倒れ、彼女はそれを受け止め、そのまま慎重に地に下ろす。
「……っと。ふぅ、なんとか勝てたわね」
〈隊長クラスの戦闘員を倒すとは……よくやった〉
私はそう称賛した。
交戦したら逃げる様に言ったが逃げられず、そのままやられてしまうかもしれないと思っていた。
けれど彼女たちはそんな隊長の1人を倒してしまった。
「……ありがとう」
西郷さんはそう聞こえぬ様に小声で言った。
「へ?」
「……いや、なんでもないわ」
(勝てないって諦めかけたけれど……その姿のお陰で屈さずに戦えた……)
これまで独りで暗殺をこなしてきた彼女だが仲間から学べることもあるのだと心の奥で感じた。
「さて、これで無力化完了ね」
彼女は地に背をつけて気絶する少女の手首に手錠を嵌める。
「あら、あなたたちは……」
「あっ、ルーチェさん!」
広場へと新たに入ってくる影がいくつかあった。
その影たちの先頭をセイクリッドワルツ隊長──ルーチェ・カリオストロは彼女は銀色の長い髪を揺らしながら走っていた。
先刻までGR戦闘員たちと戦っていたはずだが彼女を含め、部隊の隊員たちは特に怪我をしている様子はなかった。
「無事だったのね……って」
彼女は2人の足元で眠っている少女を見て、次に紡ぐ言葉を忘れる。
「この子は?」
「第3部隊の隊長です」
「見た感じ手錠をかけられているけれど……まさか2人で倒したの?」
はい、と2人が頷いたのを見てルーチェさんは驚きを隠せずにいた。
(見た感じ若い隊長だけど……実力はそれなりにあるはず。そんな隊長を倒すなんて……この子たち……)
──強い。
「凄いわ。よくやったわね。とりあえずこの子は……うちの部隊が学園に運ぶわ」
「運んだ後は?」
「テロリストの1人だからね。100パーセント牢屋行きね」
まだ中学生ら辺の私たちよりも幼い少女だ。
そんな歳でテロリストだというのも驚くが隊長だというのには更に驚いた。
「ワタシたちはこの子を学園に運ぶ。あなたたちは先に行って」
「判りました」
この場に来た先輩たちに倒した少女の身柄を任せて、2人は先へと進む。
西郷さんの中にはほんの微かではあるものの友情が生まれ始めていた。
商店街にある広場で戦いは繰り広げられていた。
「…………」
少女、太刀花優希が掌を向けると青白い光の糸が現れ、その光に当たったものはどういうわけか持ち上げられる。
それを利用して近くにある椅子を投げつける。
しかし──
「はあっ!」
レイは自分たちに向けて投げつけられたそれを刀で真っ二つに斬る。
斬られた椅子はそのまま地面へと落ちる。
〈どうやらあの少女──太刀花優希は“トラクタービーム”を武器として使っているな〉
「トラクター……ビーム?」
〈ああ。照射された対象を引き寄せるものだ。判りやすく言うと……UFOが地上の人間を吸い上げる際の光……あれの様な技術だ。まさかそれを武器として使うとは……〉
私もまさかそんな技術が武器として利用されているとは思わなかった。
引き寄せるというよりも物をあのビームで掴んで投げつけたり、それで殴ったりしているだけではあるけれど。
しかもそれをまだ13、14の少女が使っているだなんて。
「でも、近くにあるものを引き寄せて武器にするくらいしかできないんでしょ?楽勝!」
「ええそうね。投げつけてくるものの軌道は読めるし……まだ続けるつもり?」
「……それもそうですね」
彼女たちに対して椅子やテーブル、車輌を投げつけても一切意味がないと判り、優希はそう言った。
そして背中に手をやった。
「なら、これは?」
「……刀?」
彼女が背中から取り出したのは刀だ。それも2本。
──いや、それだけではない。
彼女は6本、鞘に収まった状態で背中に背負っている。
つまり手元にある2本も含めると8本も刀を持っていることになる。
「ええ。これを……」
彼女はその刀を宙に放るとそれに右手を向ける。
すると刀が少女の掌から出ているトラクタービームによって宙に浮揚する。
「8本使います」
「これは……」
優希は残りの刀も抜いて宙に放った。
8本の刀が彼女を守護する様に周りに浮かんでいる。
「……思ったよりも厄介な相手になりそうね……」
「八刀流、ってとこですかね」
「八刀流って……そんなのアリっ!?」
「アリなんですよ」
優希が右手を2人に向けると刃が2人に向かって襲いかかる。
8本の刀……4本ずつに分かれて2人を襲う。
「くっ……!」
レイは自身の愛刀でそれを一つひとつ弾いていく。
けれど4本の刀は彼女が攻撃を弾いても間髪を入れずに切りかかった。
「……キツいわね」
西郷さんはレイの様に刀を弾ける様な武器を持っていないので器用にそれを避けている。
彼女は腰に取り付けてある拳銃の様なものを取り出すと広場の中央にある木へと向けて引き金を引く。
すると拳銃からワイヤーが放たれる。
〈ワイヤーショットか……〉
ワイヤーの先端についている銛が木に突き刺さると拳銃によって巻き取られると彼女は木へと高速移動していた。
そして樹上に移動すると自身を追いかけていた刀を誘導して木に突き刺させた。
「……これならどう?もう使えないわね」
突き刺さっている刀は左右にその刃が折れそうなくらいにしなって木から抜けようとしている。
「流石ナギサっ!」
「……無駄ですよ」
優希がそう言うのと同時に刃の左右にしなる動きが大きくなる。
そして木から抜けてしまった。
「!」
西郷さんは抜けた刃から逃れる様に離れる。
そして優希へと向けて狙撃銃を構え、銃弾を放つ。
しかしレイを襲っていた4本の刀が優希へと飛んでいき、彼女の目の前で壁を作った。
「なっ……!?」
その壁によって銃弾は彼女の身体を撃ち抜くことを遮られた。
刀で壁を作るなんて……そんな戦い方、アリなのだろうか。
いや、戦いにルールなんてない。
どんな方法を使ってでも勝った方が正義なのだ。
「はああああっ!」
レイはそれを見て刀を手に彼女へと距離を詰める。
しかし優希は自身へと迫る彼女をつい先ほど盾にした8本の刀を飛ばしてそれを妨害する。
「っ……!」
切っ先を自身に向けたまま飛んでくるそれを自身の刀で弾きながら距離を詰めようとするが8本の刃はそれをさせてくれない。
そんなレイの後ろで西郷さんは狙撃銃を構え、少女へと放つ。
「無駄です」
レイを襲っている8本の刃のうち、2本の刃が西郷さんの放った銃弾を弾いた。
「銃弾を……!」
「……焦りの色が見えますね」
「……色?」
少女が口に出した言葉に西郷さんはぴくりと眉を動かす。
色……一体なにを言っているのだろう?
「……いいえ、なんでもいいです。あなたたちは死ぬんですから」
(……確かに彼女が8本の刀を使い始めてからこちらが不利になっているわ。このままじゃ……)
西郷さんは自分たちの負けというビジョンを脳内に描いていた。
それは少女の強さに自分たちは敵わないという諦めから来た考えだった。
「いや、死なない!負けもしない!」
「…………!」
けれどその考えは自身の前に立つ1人の少女を見て虚空に消えていった。
彼女の勇壮な背中を見て、西郷さんも狙撃銃を構え直す。
「……ええ。そうね」
──ワタシも諦めるわけにはいかないわ。
西郷さんが優希へと狙撃銃を1発放つがそれは空中で弾かれる。
それを見てレイは駆け出す。
「はあっ!」
自身へと飛来する刀を避ける。
彼女が避けていく度に広場のひび割れたタイルの地面に刀が突き刺さっていく。
そして刀が少女を捉える──
ガキンッ
「ッ……!」
「さっきから言ってますよね?無駄だって」
彼女は溜め息混じりにそう言った。
彼女の目の前には刀4本で構成された盾がレイによる一撃を防いだのだ。
レイは一旦後ろに下がって再び刀を構え、攻めるタイミングを見計らう。
「……そう簡単に攻撃させてくれるほど甘くはないか」
「──レイラ、あなたは敵しか見えてないわね」
刀を手に、その瞳は敵のみを捉えているレイに西郷さんはそう言った。
その言葉にレイは「えっ?」と視線を西郷さんに向けた。
「敵のみに愚直に向かっていっても勝ち目はないわ。フィールド全体を見ないと」
「フィールド全体を……」
その言葉にレイは握っている刀の柄を握り直す。
「判った!」
そう言ってレイは再び刀を手に少女へと駆けていく。
それを見て少女は溜め息を吐いた。
「……何回言えば判るんです。無駄だって」
優希は刀で盾を作り、彼女の攻撃に備える。
しかし彼女は腰に取り付けてある黒い重厚感のある箱からワイヤーを放った。
西郷さんの使っていたものと形は違うが同じ装備だ。
──イージス内では“ワイヤーショット”と呼ばれ、戦闘員の動きや移動範囲を大きく拡げるという目的で作られたものだ。
西郷さんの使っていた銃型のものもあれば、レイの様に腰に取り付けるタイプのものもある。
(……ワイヤーショット?)
ワイマーを放った先は広場に存在する8つの柱の1つだ。
先端の銛を柱に突き刺すとそのまま巻き取られてその場へと高速で飛んで移動する。
そして柱まで着くと巻き取られた銛を回収し、柱に足をつけた状態で少女へとワイヤーを放った。
──否、ワイヤーを放った先は少女ではない。
少女の後ろにある広場のシンボルツリーだ。
レイはシンボルツリーまで迫ると刀を一度鞘に収める。
「はああっ!」
白刃一閃、シンボルツリーであるエゴノキが倒れる。
「しまった……!」
優希は咄嗟に自身を守る刀を操り、倒れてくる木から自身を守る。
まさかシンボルツリーを狙っているだなんて思っていなかったので判断が遅れた。
けれど自身を守る刀たちは倒れてきたそれを切り刻む。
(あ、危なかった……!)
「で、ですが……残念でしたね。外れれば意味なんて──」
言い切る前に少女は倒れる。
少女の背後に回っていた西郷さんがその首を狙撃銃の銃床で殴ったからだ。
意識を手放した少女の身体が倒れ、彼女はそれを受け止め、そのまま慎重に地に下ろす。
「……っと。ふぅ、なんとか勝てたわね」
〈隊長クラスの戦闘員を倒すとは……よくやった〉
私はそう称賛した。
交戦したら逃げる様に言ったが逃げられず、そのままやられてしまうかもしれないと思っていた。
けれど彼女たちはそんな隊長の1人を倒してしまった。
「……ありがとう」
西郷さんはそう聞こえぬ様に小声で言った。
「へ?」
「……いや、なんでもないわ」
(勝てないって諦めかけたけれど……その姿のお陰で屈さずに戦えた……)
これまで独りで暗殺をこなしてきた彼女だが仲間から学べることもあるのだと心の奥で感じた。
「さて、これで無力化完了ね」
彼女は地に背をつけて気絶する少女の手首に手錠を嵌める。
「あら、あなたたちは……」
「あっ、ルーチェさん!」
広場へと新たに入ってくる影がいくつかあった。
その影たちの先頭をセイクリッドワルツ隊長──ルーチェ・カリオストロは彼女は銀色の長い髪を揺らしながら走っていた。
先刻までGR戦闘員たちと戦っていたはずだが彼女を含め、部隊の隊員たちは特に怪我をしている様子はなかった。
「無事だったのね……って」
彼女は2人の足元で眠っている少女を見て、次に紡ぐ言葉を忘れる。
「この子は?」
「第3部隊の隊長です」
「見た感じ手錠をかけられているけれど……まさか2人で倒したの?」
はい、と2人が頷いたのを見てルーチェさんは驚きを隠せずにいた。
(見た感じ若い隊長だけど……実力はそれなりにあるはず。そんな隊長を倒すなんて……この子たち……)
──強い。
「凄いわ。よくやったわね。とりあえずこの子は……うちの部隊が学園に運ぶわ」
「運んだ後は?」
「テロリストの1人だからね。100パーセント牢屋行きね」
まだ中学生ら辺の私たちよりも幼い少女だ。
そんな歳でテロリストだというのも驚くが隊長だというのには更に驚いた。
「ワタシたちはこの子を学園に運ぶ。あなたたちは先に行って」
「判りました」
この場に来た先輩たちに倒した少女の身柄を任せて、2人は先へと進む。
西郷さんの中にはほんの微かではあるものの友情が生まれ始めていた。
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