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帰還
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夜――
弘貴はリビングのローテーブルの上にノートパソコンを広げていた。
壁の時計が示す時間は十二時を五分ほど回ったところだ。
リリーは三十分ほど前に部屋に下がり、おそらく今は夢の世界だろう。
日がたつにつれて元気のなくなるリリーは、クロードに会いたくて仕方がないようだった。
(しかし、わかってはいたが、検索件数が多すぎるな……)
マウスを動かしながら、弘貴は小さく息を吐いた。
検索エンジンのフリーワードに「夢の世界」と入れて検索してみたが、夢占いだのなんだのといろいろヒットして、うんざりしてくる。
夢の世界と入れ替わるなんて、常識的に見てあり得ない情報を探しているのだから、そう簡単に見つかるはずもないのはわかっているが、もう一月以上も探し続けて何もヒットしないとは――、さすがに心が折れそうだ。
(でも実際に起こったんだ、何か似たような情報があってもおかしくないだろう?)
あちらの世界のホフマンの日記を見る限り、ほかの人間も遥香とリリーと同じ体験をしている。少なくとも、こちらの世界に、ホフマンと入れ替わった人間は存在していたはずだ。
「遥香……」
リリーや遥香ほどではないが、弘貴もあちらの夢を見るようになった。たまに見る夢で、リリーの姿をした遥香は、無理をして笑っているようで苦しくなる。
手を伸ばせば触れられそうなのに触れられないもどかしさと、目を覚まして隣に遥香がいない現実に、何度絶望したことか。
「絶対に取り戻してみせる」
弘貴は自分を奮い立たせるように声に出すと、カチッと次のページをクリックした。
そして、目を見開く。
「――あった……」
弘貴は半分放心したような声で、そうつぶやいた。
弘貴はリビングのローテーブルの上にノートパソコンを広げていた。
壁の時計が示す時間は十二時を五分ほど回ったところだ。
リリーは三十分ほど前に部屋に下がり、おそらく今は夢の世界だろう。
日がたつにつれて元気のなくなるリリーは、クロードに会いたくて仕方がないようだった。
(しかし、わかってはいたが、検索件数が多すぎるな……)
マウスを動かしながら、弘貴は小さく息を吐いた。
検索エンジンのフリーワードに「夢の世界」と入れて検索してみたが、夢占いだのなんだのといろいろヒットして、うんざりしてくる。
夢の世界と入れ替わるなんて、常識的に見てあり得ない情報を探しているのだから、そう簡単に見つかるはずもないのはわかっているが、もう一月以上も探し続けて何もヒットしないとは――、さすがに心が折れそうだ。
(でも実際に起こったんだ、何か似たような情報があってもおかしくないだろう?)
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手を伸ばせば触れられそうなのに触れられないもどかしさと、目を覚まして隣に遥香がいない現実に、何度絶望したことか。
「絶対に取り戻してみせる」
弘貴は自分を奮い立たせるように声に出すと、カチッと次のページをクリックした。
そして、目を見開く。
「――あった……」
弘貴は半分放心したような声で、そうつぶやいた。
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