夢の中でも愛してる

狭山ひびき

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嫉妬

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 リリー――遥香は、図書館で本を開いていた。

 グロディール国から帰国してしばらく経つ。左手の薬指には、クロードにもらったピンクダイヤの指輪が輝いている。婚約式にもらっていた指輪は右の薬指に移していた。

 夢の中の世界について書かれたお気に入りの本を読み進めながら、遥香はちらちらと左手の薬指を見つめる。

 見るたびに頬が緩んでしまうのは、この指輪を贈られた時のことを思い出してしまうからだ。

 グロディール国からセザーヌ国へ帰国する前日、部屋を訪れたクロードが、自ら遥香の薬指にはめて、指輪の上にキスを落としてくれた。

 ――お前がこの国に嫁ぐ日を心待ちにしている。それまでつつがなくすごせ。

 指輪を見るたびに、クロードの顔を思い出す。

 気づいたらクロードのことを考え、早く会いたいと思ってしまう。

 クロードのことを好きになりかけていると感じていたが、どうやらなりかけているのではなく、もう充分好きになってしまっているようだった。

「リリー、ここにいたの?」

 リリックの声がして、遥香はハッと顔をあげる。

「ヴァージニア様が、結婚式に着るドレスの仮縫いが仕上がってきたからって君を探していたよ」

 リリックが窓際に座っている遥香のそばに歩み寄りながら告げた。

「お母様が? 大変! そう言えば朝、そんなことを聞いたような気がするわ」

 本を読んでいて時間を忘れていたらしい。

 遥香が慌てて本を閉ざし、席から立ち上がると、リリックが淋しそうな顔をした。

「……本当に、グロディール国に嫁ぐことにしたんだね」

「リリック兄様?」

「なんでもないよ。ほら、ヴァージニア様が待ってるから」

「ええ……」

 遥香は、リリックが見せた淋しそうな顔が気になりながらも、急いで図書室から出て行く。

「君は、ずっと僕のそばにいてくれるのだと思ってたよ……」

 その背中を見つめながら、リリックがポツンとつぶやいたことには気づかなかった。
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