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嫉妬
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弘貴と旅行から帰ってきて、ひと月ほどたったお盆明けの八月。
営業二課の安藤係長のグループに新しい派遣社員が入ることになった。安藤係長グループの内勤の女性社員である内山さんが十一月から産休に入ることになっていて、その期間の穴埋めとして派遣社員を雇うことにしたそうだ。
遥香が出社すると、すでに新しい派遣社員の女性は来ていて、内山さんにフロア内の説明をされていた。
(うわ……、かわいい)
遥香は、コピー機の前で説明を受けている彼女の横顔を見て、思わず息を呑んだ。
新しい派遣社員の女性は、モデルのようにスラリと背の高い人で、年齢は遥香より少し下に見える。ぱっちりとした二重のアーモンド形の双眸に、高すぎず、でも低すぎないきれいな鼻、ぷくっとした唇は桜色でツヤツヤしている。
とにかく、可愛いのだ。
「昔、読者モデルもしたことがあるらしいわよぉ」
遥香が驚いて立ち尽くしているのに気づいた坂上が、すすっと近寄ってきて耳打ちした。
「え? モデル?」
「そ。といっても、学生時代に一年間だけらしいけど。はあ……、若いっていいわ。わたしもあと四歳若ければ、ぜったい張り合えたと思うのよ」
張り合ってどうするのかはわからないが、坂上もかなりの美人である。四歳という具体的な数字が出るあたり、どうやら彼女は坂上や遥香から四歳年下のようだ。
「朝から男どもが浮き足立っちゃって、見ていてムカつくったら。うちの係長なんてデレデレよ。グループ違うくせに、『困ったことはない?』ってにこにこ笑いながら話しかけてるのを見たときは、コーヒーに塩いれて差し入れてやろうと思ったわ。やーねぇ、独身っつったって、彼女と一回り以上も違うじゃないの。何を期待してるのかしらねぇ」
言われて社内を見渡せば、確かにちらちらと新しい派遣社員の女性に視線を注いでいる男性社員が何人もいる。
朝から相当鬱憤がたまっていたらしい坂上は、遥香に愚痴を言ってすっきりしたのか、「じゃ、もし困ったことがあったら言って」と言って席に戻っていった。
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