夢の中でも愛してる

花言葉と緊張の夜

5

　温室を出ると、雨が降っていた。

　曇ってはいたが、雨が降る気配は感じられなかったのにと驚きながら、弘貴と売店や展示物のある建物の中へと非難することにする。

　雨が小雨になるまで少し待っていようと、缶コーヒーを飲みながら休憩室に座っていたのだが、時間がたつにつれて次々と人がなだれ込んできた。

　窓の外を見ていた弘貴がスマートフォンで何やら調べ出したかと思えば、少しここにいてと立ち上がって休憩室から出て行った。

（局地的に豪雨って天気予報が言ってたけど、本当だったのね）

　窓や屋根を叩く雨の音が次第に大きくなっている。窓外は昼だと言うのに真っ暗で、やむどころかひどくなる一方の雨に遥香は心配になった。

（早く帰った方がいいんじゃ……）

　そう思っていると、弘貴が戻ってきた。

「ちょっとまずそうだ」

　弘貴が肩を落として遥香の耳元にささやく。

「電車が止まって、駅がすごいことになっているらしい。ここももうじき閉館するっていうから外に出よう」

「え？　待ってください。じゃあ、どこに行くんですか？」

　弘貴は困った顔をしたまま、不安そうな表情を浮かべる遥香の頭を撫でた。

「今日中に電車が動くかどうかわからないから、泊れるところを取った。そこで様子を見ようか。電車が再開するようなら帰ればいいし。もっとも、警報が出ているようだし、ニュースでは今晩まで再開の見通しは立っていないみたいだけどね」

　遥香は弘貴の困った顔を見上げたまま、硬直した。