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暗闇の抱擁

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 どのくらい膝を抱えてうずくまっていたのだろうか。

 パラパラと雨粒が屋根を叩く音で遥香はるかは顔をあげた。アンヌが言った通り、雨が降り出したようだ。

 遥香はのろのろと立ち上がると、もう一度木戸を引いてみる。しかし相変わらずピクリとも動かず、遥香は椅子に腰を下ろすと、お菓子が並べてあるテーブルの上に突っ伏した。

 おっとりしている遥香でもわかる。閉じ込められたのだ。どうして閉じ込められたかはわからないが、いつまでたっても迎えに来ないアリスのことを考えれば間違いはない。おそらくアリスの機嫌きげんを損ねてしまったのだろう。

 次第に雨の音が激しくなるのを聞きながら、心細さを覚えた遥香は泣きそうになる。

 雨が降りはじめて気温も下がりはじめたのか肌寒くなってきた。

 遥香がいないことに気がついた誰かが、きっと探しに来てくれると思う。それがいつになるのかわからないが、長くとも明日の昼までには誰かが探しに来てくれるだろう。今夜は――暗い中の捜索は危険なので、このままかもしれないが。

 せめて火を起こすものがあればいいのにと思いながら、遥香は目を閉じる。

 はじめは、クロードと一緒に別荘に来ることは不安だった。クロードはいつも意地悪で、遥香にひどいことを言うから。でも、実際に別荘に来てからのクロードから意地悪な言葉は出てこなくて、たまにびっくりするくらい優しい。

「クロード、王子……」

 クロードが苦手だった。それでも、婚約者なのだから、逃げてばかりいないで歩み寄らなければいけない。

 別荘にいるときのクロードならば、歩み寄る努力もできるかもしれない――、そう遥香が思ったとき。

 ドオォォォン

 雷の大きな音がして、遥香は悲鳴を上げた。
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