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別れ、そして帰還

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 朝になって、目が覚めたとき、全身が痛かった。

 たくさん声をあげたからか喉も痛いし、とっても気だるい。

「起きたか?」

 耳元でサーシャロッドの声がして顔をあげると、申し訳なさそうな顔をしていた。どうしてそんな顔をするのだろう――、とぼんやり考えて、ふと自分が裸なのに気がつく。

 よく見ればサーシャロッドも裸で、彼の腕の中にしっかりと抱きしめられていた。

 エレノアは昨夜のことを思い出して真っ赤になった。

 サーシャロッドがエレノアの頭を撫でて、ちゅっと額にキスを落とす。

「悪いな、ちょっとやりすぎた」

 サーシャロッドは「ちょっと」と言うが、エレノアにとっては「かなり」だ。途中から何度も記憶が飛んだし、わけがわからなくなった。

 恥ずかしくなってサーシャロッドの胸元に顔をうずめると、少し強めに抱きしめてくれる。

「今日は一日ゆっくりしていていい。つらいだろうからな」

 腰のあたりを撫でられて、ぴくんと肩を揺らすと笑われた。

「そんなに不安そうな顔をしなくても、今は何もしない」

 そう言って、腰から移動した手が背中をあやすように撫でる。

「もう少し寝ていていいぞ。寝不足だろう?」

 寝不足なのは、サーシャロッドのせいだ。もう無理って言ったのに、結局明け方まで寝かせてもらえなかった。それはエレノアが無自覚にサーシャロッドを煽ったせいでもあるのだが、もちろんそんなことはわからない彼女は、拗ねたように頬を膨らませる。

「い、いっぱいは、だめです。体、溶けちゃう……」

 羞恥で涙目になって、そのままサーシャロッドを見上げれば、さらに腕の力が強くなってエレノアは慌てた。

「サーシャ様、くるし……」

「エレノア、襲われたくなかったらあまり煽るな」

 耳元でささやかれてビクリとすると、そのまま深く口づけられた。

「んー! んぅ――!」

 ベッドに押さえつけられて、さんざん口内を貪られ、エレノアは身の危険を感じて体をよじるが、昨夜抱きつぶされた体にはほとんど力が入らない。

 そのあと、最後まで抱かれなかったけれども、息も絶え絶えになったエレノアは、ほとんど意識を手放すようにもう一度眠りについて、彼女が次に目が覚めたときは昼過ぎだった。





「エレノアちゃーん、大丈夫ー?」

 立ち上がろうとしてうまく立てないことに気がついたエレノアが、ベッドの上でのんびりと本を読んでいると、ひょっこりとリリアローズが顔を出した。

 相変わらず艶めかしい体のラインに沿ったドレスを着ていて、首には首輪をつけている。首輪からぶら下がっている短めの鎖を、まるでアクセサリーのようにしゃらしゃらと揺らしながら近づいてきたリリアローズは、ベッドの淵に腰かけてエレノアの顔を覗き込んだ。

 服を着ようとして、全身いたるところにキスの痕がついていると気がついたエレノアは、それを隠すために襟詰めのロングワンピースを身に着けた。これで首元の痕も隠せたはずだが、リリアローズにじろじろ見られると、服の下の痕に気がつかれているようでいたたまれなくて、視線を泳がせてしまう。

「んもう、はじめてなんだから、サーシャ様も手加減してあげればいいのに」

 昨夜のことを言われて、エレノアは赤くなってうつむいた。

 リリアローズはよしよしとエレノアの頭を撫でて、喉が痛いときに舐めるといいわよ、と飴の入った手のひらサイズのガラスの入れ物をくれた。

 リリアローズは、明日にでもフレイディーベルグとともに太陽の宮に帰るそうだ。

 サランシェス国の王家の離宮でも、たくさん話し相手になってくれたリリアローズが帰ってしまうのは少し淋しくてしょんぼりしていると、彼女はいいことを思いついたとばかりに手を叩いた。

「エレノアちゃん、太陽の宮に遊びにいらっしゃいよ」

「太陽の宮に、ですか……?」

「そう! せっかくだから、新婚旅行もいいじゃない?」

「新婚旅行……」

 それは、ちょっと行ってみたい。だが、サーシャロッドを困らせないだろうか。

「サーシャ様に訊いてみま――」

 エレノアの一存では決められないから、サーシャロッドに相談する言いかけたエレノアだったが。

「そうと決まればフレイ様に相談してみるわ―――!」

 その前にリリアローズが猛然と部屋を出て行ってしまい、さっさと約束を取り付けてきたリリアローズによって、太陽の宮行きが決定してしまったのだった。
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