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消えた二人目の遺体

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 翌朝目を覚ますと、なぜかレオナードの腕の中に抱き込まれていた。

 エリザベスは硬直して、昨夜、ちゃんと人一人分の隙間は開けて眠ったはずだと思い返す。ということは、眠っている間にこの体勢になったということだ。

 幸いなことに、レオナードはまだ目を覚ましていないが、このまま目を覚ませば、彼のことだ、エリザベスをさんざん揶揄からかうのは目に見えていた。

 エリザベスは、彼が起きる前にこの腕から抜け出すべきだと考えた。

 そして、しっかりと巻きついている彼の腕を引きはがそうと躍起になった。

 レオナードの腕は見た目よりもがっしりしていて、なかなか重たい。最初こそエリザベスは彼を起こすまいと、そーっと腕を持ち上げようとしていたが、しまいにはそんなことも頭から抜け落ちて、レオナードの腕の中から抜け出そうと暴れた。

 結果、レオナードはばっちりと目を覚ましてしまい、あきれたような声で言った。

「リジー、何をしているのかな?」

 エリザベスがびくっとして顔をあげると、レオナードはせっかくエリザベスが腕を引きはがそうと格闘していたのに、なおのこと彼女を引き寄せた。

「おはよう、リジー。朝起きて君が腕の中にいるのを見るのは、とてもいい気分だ」

「わたしは全然いい気分じゃないわ! いいから離して!」

「まだ早い。もう少し眠っていてもいいだろう?」

「よくない! 眠るなら一人で眠ってちょうだい! わたしは起きたいのよ!」

「うーん。そんな可愛くないことを言われると、余計に離したくなくなるな」

 そう言ってぎゅうっと抱きしめられるから、エリザベスは真っ赤になった。

 いったいレオナードは昨夜からどうしたと言うのだろう。いくら何でも強引すぎる。

 エリザベスは彼の腕の中でバタバタと暴れながら訊ねた。

「どうして、昨日からべたべたするのよ! いままでこんなにべたべた触ってこなかったじゃないの!」

 近すぎる距離に、エリザベスの心臓は壊れそうだ。

 しかしレオナードは平然と答えた。

「今回のキャリーのことで、俺はつくづく実感したんだよ」

 エリザベスは暴れるのをやめると、怪訝そうにレオナードを見つめた。

「何がよ」

 レオナードは至近距離でにっこりと微笑んだ。

「俺の婚約者が君でよかったってこと。どうやっても逃がす気はないから、覚悟して」

 エリザベルはあんぐりと口をあけて、それから言った。

「だから、わたしはあんたの婚約者じゃないの!」
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